
飲食店における定期的な新メニューの開発は、さまざまなメリットがあります。しかし、新メニューの開発は、営業の合間を縫って試行錯誤しなければならないため、なかなか大変な作業のひとつです。
ここでは、新メニュー開発によって生まれるメリットや新メニュー開発の流れ、ポイントについて解説します。
新メニュー開発の役割とは?
飲食店でのメニューは、大きく分けてグランドメニューと呼ばれる「定番メニュー」と、季節やイベントなどの期間限定で提供する「限定メニュー」の2種類があります。
安定した売上げが見込める定番メニューに加えて、新メニューを開発することは、お客様に新しさや限定感を提供できます。これ以外にも、以下に挙げる2つのメリットがあるといえるでしょう。
新規のお客様を獲得できる
新しいメニューを開発することによって、目新しいメニューに興味をもった層が来店してくれるきっかけになります。また、お店は知っているけれど、これまで定番メニューに魅力を感じなかったという人にも訴求できます。
1度来店してくれたことをきっかけにリピーターになるケースも多く、新規顧客の獲得につながるかもしれません。
リピーター(常連のお客様)を飽きさせない
新メニューの開発を定期的に行うことで、季節感や限定感のあるメニューで、既存のお客様にも楽しんでもらえます。
また、新しいメニューが評判になれば、それが定番メニューになることも考えられます。お店のコンセプトはもちろん、お客様のニーズや好みを取り入れた新メニューの展開は、既存のお客様がお店のファンになってくれる効果もあるでしょう。
基本的な新メニュー開発の流れ
飲食店における新メニューは、以下の4つのステップで開発するのが一般的です。お店の売上げに直結する部分でもあるので、ステップ1からしっかりと順を追って着手していきましょう。
ステップ1.リサーチとコンセプトを考える
まずは、飲食市場や競合を徹底的にリサーチし、顧客のニーズや飲食業界のトレンドを知る必要があります。できれば、リサーチした情報から、今後のブームも予測してみましょう。
リサーチした結果をしっかりと分析すれば、ターゲットにする顧客層や提供の時期、飲食のシチュエーションが見えてきます。それらをふまえ、新メニューのコンセプトを考えていきましょう。コンセプトの具体的な決め方については後ほど説明します。
ステップ2.試作・試食・改良を繰り返す
新メニューのコンセプトが決まったら、次は試作を作りましょう。試作段階では、味や盛り付けの美しさはもちろんですが、材料費の調整や仕込みに掛かる時間、調理してお客様に提供するまでの時間など、細かなところまでしっかり計算しておくことが大切です。
新メニューは実際に店舗で提供することになるため、お店でのオペレーションも意識しながら、試作→試食→改良を繰り返して、提供できるレベルまで進めていきましょう。
ステップ3.完成後、仕入れ先の選定をする
試作を繰り返し納得できる料理が完成したら、次は食材の仕入先を選定する作業です。新メニューを提供する価格を軸に、仕入れ値や品質、供給量をチェックしながら選ぶようにしましょう。
最近では食材の提案をする仕入れ業者もあり、それを受けてメニューを考えることもあります。また、少ない量でも卸してもらえる場合があるので、業者ごとの対応を確認しておくと良いでしょう。
しかし、供給量の問題で複数から仕入れを行わなければならない場合は、品質に極端なバラつきが出ないように管理することが大切です。
ステップ4.広告・販売促進の企画と商品化
最後は商品化の作業です。お店で提供する価格を決定し、広告や販売促進の企画を行います。
まずはオフラインでの告知を始めます。具体的には、店頭パネル看板や店内ポスター、簡易チラシ、既存のお客様に手渡しするサービス券などがあります。
近年ではこれらに加えて、SNSなどのツールを活用した告知や集客が一般的になってきています。お店のSNS運用を通じて、効果的な宣伝方法を探っていきましょう。
また、販売促進の手段は、目的やターゲット層に沿う方法を選び活用することが大切です。例えば、若い女性がターゲットの場合、SNS映えする写真を添えて告知をする方法などが考えられます。
差別化できる新メニュー開発の5つのポイント
新メニューの開発とはいえ、他店との差別化も考慮しておくようにしましょう。他店との違いをアピールすることで、既存のお客様をキープできたり、新規のお客様を獲得したりすることにもつながるでしょう。
ここからは、差別化できる新メニューを作るためのポイントを5つ紹介します。
ポイント1.新メニューのコンセプトを明確化する
先ほども紹介したように、新メニューのコンセプトはしっかりと決めておく必要があります。
例えば、新メニューを開発する前に、「どのような人に」「どのような食材を使った料理を」「どのようなシーンで食べてもらいたいか」を明確にしておくことが大切です。
コンセプトがブレていると、どんなに美味しい新メニューを開発したとしても、お客様の目に入らないかもしれません。しっかりとしたコンセプトを持っておくことは、メニューの訴求ポイントにつながるのです。
ポイント2.お客様のニーズを把握する
新メニューを開発する上で、お客様のニーズを盛り込むことは大切です。ターゲットのニーズを把握していないと、的外れなメニューが生まれてしまうことがあります。
お客様のニーズを知るためには、他店の人気メニューを分析する方法がおすすめです。メディアやSNSで話題となっているメニューや食材なら、多くの人が望んでいるメニューとも捉えられるので、メニューや食材を調査してみると良いでしょう。
また、既存のリピーター客から情報を収集し、新メニューを開発するのもおすすめです。
ポイント3.親しみやすく、コンセプトを伝えやすいネーミング
新メニューの名前も、とても重要なポイントです。例えば、クリームパスタを販売したいのであれば、「クリームソースがかかった麺」とするよりも「ベーコンとほうれん草がたっぷり入ったクリームパスタ」という名前のほうが魅力的に感じます。
メニューは、キャッチーで商品の特徴がわかりやすい名前を付けることを意識しましょう。
オリジナリティーがあって興味が湧き、お客様に食べてみたいと思わせる名前を付けることが大切です。従業員の意見も参考にしながら、親しみやすい名前を考えましょう。
ポイント4.料理の見た目にこだわる
近年はSNSの普及によって、写真映えする見た目でお店が話題になるケースもあります。料理の味も重要ですが、それに加えて斬新な色使いや、目新しい形、おしゃれな食器など、料理の見た目にもとことんこだわってみましょう。
お店が運営しているSNSに写真を掲載するときは、料理の角度や光の当たり方なども工夫して、より良く見えるように写真を撮るのがおすすめです。
ポイント5.非日常感やレジャー性を意識した演出・体験を提供する
外食しているからこそ体験できる「非日常感」のサービスを意識しましょう。斬新な調理方法ができるならば、お客様の前で調理をして見せたり、料理を提供する際の演出にこだわったりしても良いでしょう。見た目の想像を裏切るような味わいを提供するのも面白いかもしれません。
飲食店の最新情報を知ってお店の経営に活かしたい方は、ぜひ「ククロ」をチェックしてみてください。飲食業界のトレンドを日々配信しているので、飲食店の新しい取り組みをスピーディーに知ることができます。
新メニュー開発の注意点
ここまで、新メニュー開発におけるさまざまなメリットを挙げました。しかし、さらに細かく掘り下げると注意したいポイントもいくつかあります。
ここからは、新メニュー開発の注意点を4つ紹介します。
注意点1.新メニューに必要な食材が安定に手に入るか
手に入りにくい食材を使った新メニューは、できるだけ避けるようにしましょう。食材が安定的に供給できなければ売り切れが頻発し、新メニューを食べに来てくれたお客様に提供しにくい状況になってしまいます。
せっかく足を運んできてくれたお客様をがっかりした気分にさせないためにも、常に供給できる食材で新メニューを開発しましょう。
注意点2.新メニューがお店のコンセプトから外れないこと
新メニューを開発するにあたり、お店のコンセプトやお客様のニーズとかけ離れないようにすることが重要です。
お店のイメージと大きくかけ離れた新メニューを提供すれば、これまで作り上げてきたお店のブランドを崩してしまうことにもなるでしょう。
新規のお客様、そして既存のお客様の両方に受け入れられるような、メニュー開発を意識するようにしましょう。
注意点3.食材のロスを減らす
新メニューを開発したことがきっかけで、食材のロスが大きくなってしまってはお店の利益になりません。
既存のメニューと新メニューの食材が共有できるかどうか考慮しながら、メニュー開発を行いましょう。
また、保管スペースの問題や、売上と原価率のバランスもしっかりと考えておくことも重要です。
注意点4.作業効率を落とさない
調理が複雑であったり、新しい調理機器を買ったりする新メニューは避けたほうが無難でしょう。
新しく調理器具を揃えるとなると、大きなコストがかかり、仕込みや提供まで時間がかかるなどの調理の流れが悪くなると、ほかの定番メニューの調理にも影響が出る恐れがあります。
これまで行ってきた作業効率を落とさないようなメニュー開発を心がけましょう。
編集後記
新メニュー開発をきっかけに、売上げを伸ばしているお店はたくさんあります。新規顧客の獲得や既存顧客の満足度向上など、メリットが多く存在する一方で、注意しなければならないポイントもあるのです。
調理や提供シーンなども含めて多角的に分析し、お店の売上げに貢献できるような新メニューを開発しましょう。