
さまざまな飲食店で導入されている「マニュアル」。作成するのであれば、業務効率アップやスタッフが働きやすくなるようなものを作成したいと考えている方も多いでしょう。
自分の店舗に合うものを作成するのはどのようなポイントを押さえておくべきなのでしょうか。
今回は、飲食店においてマニュアルが必要な理由やメリットと、マニュアルの種類や作成時のポイントについて解説します。
目次
飲食店にマニュアルが重要な理由3つ
飲食店でマニュアルが必要になるのは、導入によってスタッフの得られるメリットが多くあるためです。
ここからは、マニュアルが重要視される理由を紹介します。
オペレーションの品質を維持できる
飲食店にマニュアルを導入することで、オペレーションの品質を一定に維持することができます。
スタッフ同士で業務の進め方が統一できるため、キッチンでの調理業務やホールでの接客サービスについて、一定以上の高さでクオリティを維持できるのもメリットのひとつです。
また、マニュアルによって業務を文書化することで、認識のズレをなくすことにもつながります。
マニュアルがあれば、お店のスタッフ全体で共通認識を持つことができ、作業効率が向上して働きやすくなるでしょう。
スタッフの個々の判断での対応は、お店のサービスの品質に偏りが出てしまい、お店の信用やブランディングにも影響を与えてしまいます。
マニュアルは、スタッフが働きやすさの向上と合わせて、サービス品質を統一化を図ることができるため、顧客満足の向上やクレーム減少にもつなげていくことができます。
新人教育にかける労力・時間を減らせる
マニュアルを整備しておくと、新人教育にかける労力や時間を削減できるメリットがあります。
飲食店で新人教育を行う際は、業務と指導を並行することが多く、指導者の負担が大きくなる傾向にあります。
また、学生アルバイトを雇用している飲食店は人の入れ替わりが激しく、指導者への新人教育の負担は特に大きいでしょう。
新人教育への負担が大きい場合、マニュアルがあることで、スタッフ全員に共通の業務フローを共有でき、指導する側とされる側両方の負担軽減に期待できます。
マニュアルを整備することで、新しいスタッフを戦力としてスムーズに育成できるでしょう。
スタッフが自分から積極的に学べる
マニュアルがあることで、スタッフが自分から業務について積極的に学べるようになることも、マニュアル作成が重要な理由のひとつです。
業務中に不安や疑問が生まれたら、マニュアルを確認してすぐに問題点を解消できます。自分で学べることから、オペレーションの習得自体が早くなるでしょう。
また、新人スタッフの中には、一度教わったことを何度も先輩スタッフに尋ねることに不安を感じる人もいるかもしれません。マニュアルがあれば新人スタッフが安心して仕事に取り組めるうえに、先輩スタッフの手を止めることはありません。
新人スタッフの不安解消だけでなく、先輩スタッフの負担軽減にもつながります。
マニュアルは、休憩室などの共有スペースに置いたり、各スタッフに紙媒体か電子媒体で配布し共有することが大事です。いつでも新人スタッフがマニュアルを確認できる状態にしておきましょう。
飲食店に必要なマニュアルの種類と内容
飲食店でマニュアルを導入する場合、盛り込むべき内容は大きく分けて4つです。ここからは、4種類のマニュアルそれぞれに記載しておきたい具体的な内容や目的について解説します。
業務マニュアル
店内での業務内容や仕事の流れを盛り込んだものが「業務マニュアル」です。
スタッフの役割分担や責任の所在を明記し、判断に迷った際に誰に聞けば良いのかを具体的に示しておくとスタッフがより安心して働くことができます。また、店の方向性や独自ルールなども記載しておくと良いでしょう。
業務マニュアルも記載内容はさらに細分化されるため、どの業務についての内容なのかをわかりやすくまとめることが大切です。
業務マニュアルに記載すべき内容は以下のとおりです。
- 出勤退勤のフロー
- 開店や閉店時の業務フロー
- 清掃業務のフロー
- 飲み物の作り方・入れ方に関するフロー
- 接客業務フロー
- バッシングのフロー
- 厨房業務のフロー
- イレギュラー対応のフロー
など、全体の流れがわかるようにしておくと、スタッフも把握しやすくなります。接客業務のフローについては、次項の接客マニュアルでさらに詳しく解説します。
接客マニュアル
「接客マニュアル」は、接客業務のフローについて重点的に記載したものです。接客の質を統一して一定のクオリティを維持するためのもので、効率よく新人スタッフを教育するうえでも重要です。
接客の基本となる身だしなみや心得、実際に接客を行う際の流れを記載しましょう。
- お客様のお出迎えとご案内方法
- メニューの出し方
- オーダーの受け方
- 料理の出し方
- 会計時の接客方法
また、お客様からよくあるご質問、FAQやQ&Aなどの想定問答を用意しておくことで、スタッフのスムーズな接客対応が期待できるでしょう。
ほかにも、お店のこだわりや、先輩スタッフが心がけていることなどを盛り込むことで、さらにクオリティの高い接客マニュアルをつくることができるでしょう。
キッチン業務マニュアル
飲食店でマニュアルが必要になるのは、接客を行うホール業務だけではありません。「キッチン(厨房)業務マニュアル」も作成しておくことで、キッチンスタッフの業務効率化に役立てることも可能です。
調理のスピードや料理のクオリティを安定して提供できるように、キッチン業務のマニュアルには、以下の内容を記載しましょう。
- 調理工程のフロー
- 食材の管理方法
- 仕込みや効率的な調理順序について
- 厨房機器や調理道具の取り扱い方法、清掃方法
- ゴミ出しのルール
- キッチンが洗い場を担当する場合は皿洗いの流れなど
業務の流れだけを記載するのではなく、スタッフの連携を意識して調理の手があいたら洗い場に入るなど、臨機応変な対応についても記載しておきましょう。
トラブル対応マニュアル
飲食店ではなんらかのトラブルが発生することも多く、突発的な事態に対応できるように「トラブル対応マニュアル」を準備しておくと安心です。
対処のルールに加えて誰に指示を仰げば良いのか、過去の例や想定できるトラブルと具体的な対処方法について明記しておきましょう。
また、マニュアルに記載していないトラブルが発生した際には、その都度マニュアルのブラッシュアップを兼ねて内容を増やしていくことが大切です。
- 予約のブッキング
- クレーム対応
- オーダーミス
- 食材の到着遅れ
- 病気などによる急なスタッフの人手不足
- 責任者が不在時の対応
ほかにも、トラブルを防ぐための対策方法についても明記しておくと良いでしょう。
飲食店マニュアルの作成時の注意点
マニュアルは単純に業務フローを記載すれば、業務効率アップや効率的な教育ができるというものではありません。飲食店のマニュアルを作成する際に、いくつか注意点があります。
ここからは、飲食店マニュアルを作成する際に注意しておきたいポイントや、マニュアルの効果を高めるためのコツについて紹介します。
店のルールを明確にする
店独自のルールを洗い出し、マニュアルに明示しておく必要があります。暗黙の了解になっているような詳細なことも、マニュアルに記載していなければ新人スタッフには伝わりません。
新人スタッフでも、見ただけで店のルールがわかるようなマニュアルを作成するのが理想です。
1日の業務をすべて書き出す
開店から閉店までの業務フローをいったんすべて書き出して、時間ごとに行う作業順に並び替えて記載します。
一旦すべての業務を洗い出すことで、マニュアルの抜け漏れを防ぐことができます。
店で習慣になっている何気ないルーティンワークなどもすべて書き出しましょう。実際に働いているスタッフからも情報を集めるのがおすすめです。
業務の合格ラインを決める
それぞれの業務の合格ラインを決めておくと、一定のクオリティを維持しながらサービスの提供を行えるようになります。
業務ごとに評価基準を明確にしておきましょう。オープンの準備作業であれば一通り終わるまでの時間を設定する、清掃作業でのチェック項目を決めるなどが一例です。
随時改善を行う
マニュアルの作成は、完成して終了ではありません。随時ブラッシュアップを行いながら、より良いサービスの提供や効率の良い業務の進め方に変更していく必要があります。
また、完成したマニュアルをスタッフに見せて確認してもらい、理解しやすい内容になっているか、人によって正確に理解できていない場合は記載内容を見直すことも大切です。
飲食店のマニュアルは、状況や流行などの市場動向に合わせてルールを変えていく必要があります。
定期的に見直すために、月に一度、年に3回などのように期間を区切って改善するスパンを設定しておくのがおすすめです。
更新時には、変更点についてスタッフに伝えたうえで、新しいマニュアルを古いものと差し替えましょう。また、古いものと新しいもので混同しないように、マニュアルを置く場所を定めておくことも大切です。
編集後記
飲食店のマニュアルは、現場で働くスタッフの意見を盛り込んだ内容にすることが重要です。
スタッフがアイデアを出し合うことで、店にマッチしたマニュアル作成ができるようになるでしょう。また、どのようにすればスタッフが覚えやすいか、効率アップのためのポイントなども記載しておくのがおすすめです。
マニュアルだけにこだわらず、日頃からより良い業務フローやサービス提供の方法をつねに意識するようにスタッフに伝えることが、顧客満足度を上げる店づくりのポイントです。