
「自分の飲食店を持ちたい」「独立したい」と考え始めたら、まずは開業に必要な資格取得に向けた準備を進めましょう。資格取得は、飲食店の独立開業への第一歩です。
今回は飲食店の開業に必要な資格や手続きの流れ、開業に役立つ補助金や助成金についても紹介しています。
目次
飲食店開業に必要な2つの資格
それではさっそく、飲食店の開業に必要な資格について解説します。
開業時に必要な資格は、「食品衛生責任者」と「防火責任者」の2種類です。
この資格は、飲食店の業態は問いません。レストランに居酒屋、ラーメン店、フランス料理でも、求められる資格は同じです。
飲食店には、安全に食べ物をお客様に提供する義務があります。そこで、資格を取得し責任者を置くことで、食の安心や安全を提供し、また事故が発生しないように、業務や計画を作成する必要があるのです。
開業に必ず必要な資格と、場合によっては必要となる資格もあるため、内容を理解しておきましょう。
食品衛生責任者(必須)
食品衛生管理者は、飲食店がお客様に提供する食品の衛生管理を行う、責任を明示する資格です。資格者はお店が食中毒を起こさないことや、食品衛生法の違反をしないよう、管理運営を行うことが義務づけられています。
食品衛生責任者は、飲食店の開業に必ず必要な資格です。店舗ごとに、資格者が1人必要です。
食品衛生責任者の資格は、各都道府県の食品衛生協会が開催している講習会を受講することで取得できます。
参考
講習は1日6時間で終了し、10,000円程度の受講料がかかるのが一般的です。詳しい日程や受講料は、各地の食品衛生協会に問い合わせて確認してください。
食品衛生責任者の資格は全国共通で、講習会の最後に終了試験があり、合格すると終了証が交付されます。保健所で飲食店営業許可申請をする時に、終了証を提出する必要があるため、開業する3ヶ月くらい前までには講習会を受けておくことをおすすめします。
防火責任者
防火管理者は多くのお客様が利用する店舗の、火災予防に関する責任を明らかにする資格です。一定の規模の防火対象物で営業を営む者に対して、有資格者を1人選任することと規定されています。
防火管理者は飲食店の開業に絶対に必要な資格ではありません。飲食店の場合は、収容人数が30人を超えると必要です。
ここでいる収容人数は、お客様の人数や客席ではありません。店舗の従業員も収容人数に含まれ、心配な場合は自己判断をせず、最寄りの消防署に相談することをおすすめします。
防火責任者の資格は、一般財団法人、日本防火・防災協会が全国で開催している講習会を受講して取得する必要があります。
資格には2つの種類があり、店舗の面積によって講習内容や費用が異なるので気をつけましょう。
店舗の延床面積が300平米以上の場合は、甲種防火管理者講習を受講する必要があります。講習会は2日10時間にわたり、6,500円程度の講習費用がかかります。
店舗の延床面積が300平米以下の場合は、乙種防火管理者講習を受講します。乙種の場合は1日5時間で講習会が終了し、講習費用は5,500円程度です。
講習日程や費用は、会場ごとに異なります。店舗の地域を管轄する消防署で、確認をしておくことをおすすめします。
調理師免許は飲食店開業には不要
調理師免許は調理の技能を証明する国家資格ですが、飲食店の開業には必須ではありません。
意外に思う人は多いものの、調理師免許は食品衛生責任者になるための講習が免除される程度で、必ずしも必要ではありません。
ただし免許を取得することで調理師名簿に名前が登録され、公示されるので、お客様の信頼を得ることにつながります。開業に不必要でも集客に役立つため、必要に応じで取得を検討してみてはいかがでしょうか。
飲食店開業に最低限必要な6つの手続き
引き続き、飲食店の開業に必要な申請や届け出について紹介します。
資格取得ほどではないものの、許可や届け出でも担当機関の審査を受ける必要があるため、手続きにはそれなりの時間がかかります。開業までに必要な手続きがすべて完了するよう、計画的にすすめましょう。
食品営業許可
調理した食品をお客様に提供し、飲食させる営業をする際に必要な許可で、最寄りの保健所に申請をします。許可を受けずに営業を始めると食品衛生法違反に問われるため、物件探しと平行して準備をすすめましょう。
食品営業許可は設計図などを添付して申請しますが、受理後に保健所職員の立ち入り検査が行われます。施設の基準をクリアしないと許可がでない可能性があるので、店舗完成の10日~2週間ほど前には、確実に申請をすることをおすすめします。
菓子製造業許可申請
パン屋やケーキ屋など、菓子類を製造して販売する営業に必要な許可で、保健所に申請します。
ただし許可が必要な菓子製造業は、テイクアウトを中心とする営業や卸業に限定されます。カフェやレストランのように、客席を設けて作った菓子類を提供する場合は食品営業許可に該当するため、迷ったら保健所に相談しましょう。
菓子製造業許可も営業開始前に、余裕をもって申請することが大切です。
深夜における酒類提供飲食営業開始届出書
午前0時以降も営業して、お客様に対して主に酒類を提供する場合に必要な届け出です。営業開始10日前までに、店舗を管轄する警察署に届け出る必要がありますが、基本的に書面審査で、立ち入り検査はありません。
酒類提供飲食店の届け出は公安委員会からの「風俗営業許可」ではないため、お店でお客様を接待することはできません。
個人事業の開廃業等届出書
個人事業主として、飲食店の営業開始を届け出る手続きです。とくに事前の準備は必要ないため、営業を開始してから1カ月以内に、管轄する税務署に届け出をしましょう。
必要に応じて、最高65万円の控除が受けられる「青色申告承認申請書」も同時に提出しておくと、開業準備の手続きにかかる費用負担を減らすことができます。
防火管理者選任届
店舗または建物全体の収容人員が30人以上の場合、飲食店の営業開始までに、有資格者を専任したことを消防署に届け出る必要があります。
開業に際して火を使用する設備の設置届も必要になるので、あわせて準備します。
労災、雇用、社会保険の加入手続き
従業員を雇用して飲食店を営む場合は、労災や雇用、社会保険への加入手続きが必要です。雇用日の翌日から10日以内に、雇用保険は公共職業安定所で、労災保険は労働基準監督署でそれぞれ手続きを済ませましょう。
個人経営の場合、社会保険の加入は任意です。営業を開始してから検討することをおすすめします。
できるだけ安く飲食店を開業するための補助金・助成金
最後に、飲食店の開業で活用できる、国や自治体の補助金、助成金を紹介していきます。
独立開業を目指すとき、資金は非常にシビアな問題です。できるだけ費用を抑えて開業できる方法もあるので、前向きに活用することをおすすめします。
創業補助金
新たに事業を始める個人と法人が国から受けられる制度で、最大200万円の補助金が受け取れます。
ただし申請期間が限られており、審査を受ける必要があるので、詳細は毎年開設される、地域創造的起業補助金事務局の特設サイトで確認しましょう。
小規模事業者持続化補助金
日本商工会議所が運営する制度です。就業員数が5人以下の規模が小さい事業者に対して、上限50万円、経費に対する補助率のその3分の2を補助してもらえます。
この補助金も公募期間が限られており、経営計画書や補助事業計画書の提出が求められるので、日本商工会議所の公式サイトを確認しましょう。
編集後記
飲食店の独立開業を考えたら、必要な資格のチェックを始めましょう。本格的な開業準備が始まると忙しいので、早めの資格取得が肝心です。
資格取得や事業計画を立てることは、補助金や助成金の申請にも役立ちます。ぜひ前向きに、開業準備をすすめましょう。