
オフィス街のランチタイムや野外イベント、近頃ではリモートワークの増加に伴って住宅街でも目にするようになった「キッチンカー」。
別名フードトラックとも呼ばれており、近年、コロナ禍における飲食業界の新たな経営戦略として、キッチンカーでの移動販売に参入する事業者が増加傾向にあります。
今回は、キッチンカーの強みや、開店準備に必要なことと始める際に注意しておきたいポイントについて解説します。
目次
コロナ禍の苦境をキッチンカーで乗り越えよう
飲食店ではコロナ禍の苦境を乗り越えようと、キッチンカー販売を始める事業者が増えています。
コロナ禍の今、キッチンカーが注目されている背景にはどのような理由があるのでしょうか。ここからは、キッチンカーならではの強みやメリットについて紹介します。
コロナ禍で注目されるキッチンカー
コロナの影響により、飲食業界全体においてさまざまな変化が起きています。
最も大きな変化は、飲食店における店舗環境でしょう。徹底した感染防止策が求められ、3密空間になりやすい店舗は敬遠されつつあります。さらに、時短営業によって店舗に来るお客さんも減っています。
そんなコロナ禍で注目を集めているのが、キッチンカーによる移動販売です。キッチンカーは店舗をもたず、テイクアウトで料理を提供する販売形態です。
キッチンカーでの開業は、自治体による支援も積極的に行われており、デリバリーやテイクアウト事業を新たに始める事業者に向けた助成金・補助金などを活用することができます。(2021年2月現在)
キッチンカーがコロナ禍でも強い理由
キッチンカーがコロナ禍で注目される理由は、3密空間になりにくい点にあります。屋外での提供かつテイクアウトのため、お客様が安心して利用できます。
また、店舗をもたないことから家賃などの固定費が必要なく、店舗を構えるよりもコストが抑えられる点もメリットです。少人数で運営できるため、人件費も抑えられるでしょう。
そして、移動することができる点もキッチンカーのメリットにあげられます。店舗営業の場合には来店客を待つ必要がありますが、キッチンカーであれば見込み客の多い場所に移動することが可能です。
コロナ禍で在宅ワークが増加したことから、都市部では外食需要が減少し、デリバリーやテイクアウトの需要が増加しています。
キッチンカーであれば、郊外の在宅ワーカーをターゲットに販売展開することができるため、新たな販路を確保することができるでしょう。
キッチンカーの開業準備で押さえておきたい3つのポイント
キッチンカー開業のおおまかな流れは、事業計画の立案、開業資金の準備、車両の確保、食品衛生責任者資格の取得、営業許可の申請、許可証の交付、そして営業の開始となっています。
ここからは、キッチンカーで開業する際に重要になる3つのポイントについて解説します。
ポイント1:開業資金の調達
キッチンカーを開業する際に必要になる資金は、おおよそ300~500万円ほどです。
資金の調達方法にはいくつかあり、自己資金・融資を受けるといった方法が挙げられます。
また、公的な補助金や助成金を活用すれば、開業に必要な費用を軽減することができるでしょう。
利用できる制度は、従来からある制度とコロナ禍に新設された飲食店支援を目的とした制度のふたつに分かれます。後者は利用できる期間が限られているものもあるため注意が必要です。
◆従来からある支援制度
- ものづくり補助金/全国中小企業団体中央会
- 地域創造的企業補助金/経済産業省中小企業庁
- 地域雇用開発助成金/厚生労働省
- 小規模事業者持続化補助金(コロナ特別対応型では上限金額が引き上げになっている)/日本商工会議所
◆コロナ禍に新設された制度
- コロナ特別対応型小規模事業者持続化補助金/全国商工会連合会、日本商工会議所
- 事業再構築補助金/経済産業省
- IT導入補助金(キャッシュレス決済の導入などに活用できる)/一般社団法人サービスデザイン推進協議会
- 雇用調整助成金/厚生労働省
また、コロナの影響によって、飲食店を経営している事業者の運転資金を実質無利子・無担保で融資する際の上限金額も引き上げられています。
キッチンカーの導入に際し、新規開店だけでなく店舗経営者の業態転換を支援するものもあるため、該当するものを積極的に活用しましょう。
ポイント2:キッチンカーの入手
キッチンカーの入手方法は、大きくわけて3通りの手段があります。
ひとつは、キッチンカーを購入する方法です。キッチンカーを専門に販売している企業もあり、新車購入だけでなく中古車を購入することもできます。
また、自分が保有している車をキッチンカー仕様に変更するのも方法のひとつです。保有車を変更する場合は、加工車として8ナンバーの交付を受けましょう。
さらに、一時的にキッチンカーでの移動販売を行う場合には、期間を限定して営業を行う際に便利なキッチンカーのレンタルも活用できます。
営業期間や資金などを総合的に判断し、キッチンカーを入手する方法を検討することが大切です。
ポイント3:保健所の営業許可証
キッチンカーで販売営業を行うためには、保健所の営業許可証を取得する必要があります。
許可証は、キッチンカー1台に対して1枚入手する必要があります。複数台で営業する場合は、台数分の許可証を取得しなければならないため注意しましょう。
また、許可証は営業場所を管轄している地域の保健所で得る必要があります。そのため、複数の地域で営業を行う場合は、再度その地域の許可証を取得しなければなりません。
ほかにも、営業許可証にはいくつかの種類があり、取り扱う商品によって異なるため注意が必要です。
たとえば、キッチンカーの中で調理を行う場合には「食品営業自動車」、袋詰めされたパンやお弁当などの調理済みのものを販売するときは「食品移動自動車」の許可証が必要になります。
食品営業自動車の許可証には、飲食店営業・菓子製造業・喫茶店営業があります。キッチンカーで取り扱う商品に適したものを申請しましょう。
営業許可が下りる基準は保健所ごとに異なるため、事前に確認しておきましょう。
キッチンカーの準備・運営で失敗しないために
キッチンカーでの販売を始める場合、失敗しないためにいくつかのポイントを押さえておくことが大切です。
ここからは、キッチンカーの成功・失敗を左右する準備と運営のポイントについて紹介します。
独力で準備を進めるとお金も時間もかかる
キッチンカーに必要な準備や手続きを独力で進めると、営業開始までにコストも時間もかかってしまうことがあります。
資金調達を行う際には助成金や補助金をうまく活用し、自己資金や融資を受ける金額は必要最低限に抑えましょう。
また、キッチンカーの開業セミナーなどに参加し、手続きの流れや営業開始までに必要な準備を確認しておくのも方法のひとつです。
開業のタイミングを逃さないためにも、スムーズに営業を始められるようにしましょう。
メニューは提供しやすく買いやすいものから
キッチンカーで販売するメニューは、提供しやすくお客様が購入しやすいものから始めるのも失敗を防ぐポイントのひとつです。
凝ったメニューや単価が高いものはお客様が購入しづらいため、まずは手に取りやすいものから展開すると良いでしょう。
また、原価率の高いメニューも注意が必要です。原価率が高くなると利益が出にくくなります。
ほかにも、調理工程の多いメニューは提供までに時間がかかる点にも注意しなければなりません。回転率が悪くなるうえに、提供が遅いとお客様の満足度を下げてしまうことにつながります。
メニュー選びは慎重に行いましょう。
始める前に出店場所の当たりをつけておく
キッチンカーを始める前の事業計画を立てる段階で、ある程度出店場所をリサーチしておくことも大切です。
周辺に定期的に行われるイベントがあるか、ランチタイムに人出の多いオフィス街で出店できそうな場所はあるかなど、チェックしておきましょう。
インターネットでキッチンカーの出店場所を提供しており、出店者を募集しているサイトなどもあるので活用するのも方法のひとつです。
また、企画書を作成して、目星をつけた場所の所有者に直接交渉するのも良いでしょう。
いずれにしても、どのような場所に出店したいか具体的にイメージしておきましょう。
編集後記
キッチンカーは、店舗をもたず屋外で料理をテイクアウトで提供する移動販売手段です。3密を避けながら料理を提供できることから、コロナ禍での飲食業界の新たな経営手段として注目されています。
キッチンカーは、飲食店の店舗を新たにオープンするのと比較して、初期投資が安く済むメリットがあります。
ただし、やみくもに出店してしまうとうまく集客できない可能性があるため、メニュー選びや出店場所選びは注意して行いましょう。