
こんにちは。クックビズ総研編集部の世古です。
飲食店の研修といえば、OJT、セミナー参加、試食会や試飲会、競合店視察などありますが、いま外食企業の中にはとても個性的で面白い研修・教育制度を取り入れている企業が増えてきています。
なぜ今、個性的な研修制度を設ける飲食店・外食企業が増えてきているのでしょう?
目次
数ある飲食店から「自分のお店」が選ばれるために必要な「独自性」
今や東京都内だけを見ても約9万店舗近くあると言われている飲食店。
業態も、本格店から「フォアグラバル」「燻製バル」「缶詰バー」など、独創性を打ち出した業態まで多様化・複雑化しています。飲食業界で生き残っていくためには、他店との差別化を図って独自性を出し、1人でも多くの顧客を取り込んでいかないといけません。
料理の品質やサービスに「+α」を加えた独自性(=ブランド力)を持たせ、「そうだ!あの店に行こう!」と言ってもらえる飲食店を1店舗でも多く作らないといけないのです。
外食企業にとって「ブランド=飲食店」であり、飲食店を動かすのはスタッフ。現場のスタッフの行動・意識こそが企業のブランドイメージへとつながっているのです。
だからこそ企業は、スタッフが自発的に飲食ブランドへの愛着を深められる研修を設けているのです。
そんな飲食店・外食企業の研修・教育制度をいくつかご紹介します。
■ 株式会社イートウォーク
毎月「畑の日」という日を設定。代表でもあり自身もカリスマシェフとして活躍した渡邉明氏が厳選して契約した農家や生産者をスタッフが訪問。種まきや収穫などの農作業体験を実施。
■ 株式会社ワイズテーブルコーポレーション
「スーパーシェフコンテスト」を開催。日本でのナポリピッツァ第一人者とも言われるサルヴァトーレ・クオモ氏が出題するテーマ食材をもとに、スタッフたちがメニューを考案。決勝戦では実際に目の前で調理し優勝者を選出。
■ 株式会社一家ダイニングプロジェクト
自社に在籍するソムリエールによるワインセミナー、外部講師によるバリスタセミナー、社長自らノウハウを伝授する「一家塾」など、多種多様なセミナーを開催。社外研修では、なんと他社飲食店での勤務研修も実施。
■ カトープレジャーグループ
接客マナー研修に加え、「茶道」「華道」「書道」「着付け」など、専門講師を招いた講習会を開催。「おもてなし」の本質への理解を深め、サービススキル向上を図る。
生産者の想いをお客様に届けるため、スタッフ全員で「畑」へ
各社ともにさまざまな研修・教育制度を設けています。
その中でも、今回は株式会社イートウォークの「畑の日」に着目してみました。
株式会社イートウォークの「畑の日」とは?
- 毎月1回、必ず開催
- 対象はアルバイトを含めた全スタッフ
- 「畑の日」は店舗は営業せず産地へ(お店を閉められない場合は各スタッフ交代で実施)
- 会社で契約している全国の農家・生産者を訪問
- スタッフも生産者と一緒になって野菜作りや収穫などを実施
「アルバイト含めた全スタッフが対象」という所がポイントです。全てのスタッフが野菜に愛情を持ってほしいという代表の想いが込められています。大自然の中で、土と戯れながら、普段とは違う目線で野菜と触れ合う機会を設けています。
「畑」に行くからこそスタッフに生まれる効果とは
スタッフたちが生産者の目線で野菜と向き合い、農作業を行なうことで以下のような効果が生まれています。
自社ブランドと野菜への愛着
生産者の立場で作業することで野菜を育てる大変さ、やりがい、楽しさを体感し、愛情が深まる。
サービス・顧客満足の向上
料理の提供時に「この野菜を収穫した時、こんなことがあって大変だったんですよ!」と、ひと言つけ加えることで、お客様に料理+αの魅力や感動を伝えられる。
強いブランドイメージの植え付け
お客様に、自らの実体験もふまえて説明することができるようになるので、明確なブランドイメージを植え付けることが可能になる
産地で経験したことが、しっかりと現場に反映されています。結果、「野菜」へのこだわりを持ったお店であると多くの顧客に認知され、ヘルシー志向の女性客を中心にしっかりと顧客の獲得に成功しているのです。
「畑の日」にはスタッフ自身も非常に意欲的で、自分たちが学んだことを店舗で活かすだけではありません。
届いた野菜がどんなメニューになったのか、お客様がどれだけ喜んでくれたかを生産者に伝えることで、生産者とお店との絆がより深まり、良好な関係を続けられています。
会社からの押しつけではなく、スタッフが自発的に「学びたい」と思える研修
株式会社イートウォークでは、「畑の日」という独自の研修制度が、スタッフ全員が野菜やブランドへの愛情を深める機会となっています。
海外店舗も含めて30店舗近くを展開している今でも、「畑の日」は毎月必ず実施するよう徹底されているのです。
継続することで、毎回違う発見がある。新しい発見は、スタッフが現場に戻って活かし、新しいお客様に株式会社イートウォークのブランドを印象付けています。
最後に
自社の飲食ブランドや商品への知識を深めるための機会や環境を用意するのは企業です。
ただ、その機会をどう使うかはスタッフ次第。
会社のブランドを担うスタッフが、いかに意欲的に学べるかを試行錯誤した結果が、飲食店・外食企業の個性的な研修制度・教育制度を生み出しているといえるでしょう。
※株式会社イートウォークの渡邉明社長が登場する記事こちら
→迷いは誰にでもある「迷った時には、畑に行け」【株式会社イートウォーク 渡邉明氏】