従業員満足の追求こそが、会社を強くする【株式会社ジェイグループホールディングス 代表取締役 新田 治郎氏】

1997年設立、2006年に東証マザーズ上場、2012年は会社分割によりホールディングス体制へ。ここ近年で組織的にも大きな変化を遂げた株式会社ジェイグループホールディングス
同グループを築き上げたのが、代表取締役である新田治郎氏です。

京都府出身、47歳。たった一代で、同グループをここまで成長させた新田氏は、分野にとらわれず、ためらわず、挑戦してきたこれまでを「失敗したことがない」と喝破します。その真意やいかに?

さらに、人材不足が叫ばれる飲食業界で、就業時間換算で正社員比率 約50%、定着率83.5%という業界トップレベルの数字を生み出せた理由とは?クックビズ 藪ノが迫ります。

外食は、進化しない。だから、おもしろい。

藪ノ:全国に53業態125店舗を展開、売上高は114億円、1,800人を超えるスタッフを抱え、大きな組織を率いていらっしゃる新田さんにとって、外食産業の魅力はどんなところにあると感じますか?

新田氏:進化しないところです。言い方を変えると、アナログなところですね。僕らが小さい頃なんかは、ケーキといえばバターケーキ。今思えば、決して美味しいとはいえない物を食べていたわけですよ。それが今では、日本のケーキ屋さんにも世界有数のパティシエがいますし、コンビニのスイーツだって、どれも美味しい。日本の食文化というのは当然進化していますよね。

もちろん外食に関しても、食材や調理法、お店の内装や雰囲気などは進化しています。ところが、お客様と対面して、「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」とおもてなしをするところは、昔からずっと変わっていません。Face to Faceで泥臭い接客をして、それをお客様に楽しんでもらう。そんなアナログなところが外食の魅力だと思います。

ジェイグループ 新田様

藪ノ:その一方で、御社ではコンサルタントを入れて、会社自体の体質改善・変化を目指されていると伺いました。

新田氏:はい。成長するにつれて、売り上げ規模は大きくなり、一生懸命に頑張ってくれる仲間の数も増えています。そんな中でも、みんなとできるだけ多くの幸せを共有して、「外食の世界にいて良かった」と思ってもらうためには、必要なことをやらなければいけない。それが例えば、利益率を上げる、みんなに少しでも多く配当する、そのためにコンサルタントを入れる、そういうことに繋がっているのです。

でも、「目の前にいる人に喜んでもらう」「その数を増やすことで、多くの人に喜んでもらう」という外食の根本のところは、いつの時代も変わりません。そこがやっぱり、外食ビジネスの魅力なんだと僕は思いますよ。

これまで以上に競合がしのぎを削り合い、外食産業はおもしろい時代へ。

藪ノ:御社の4割以上が正社員という従業員比率は、外食企業においてなかなか達成が難しい数字ですが、今後もそのあたりは、こだわっていかれるのでしょうか?

新田氏:もちろんです。パート・アルバイトを増やして効率を上げるというところに、僕らは価値を感じません。リーマンショックの後にも、「正社員比率100%を目指す」って、某新聞社の取材で宣言してしまいましたよ。記事にもデカデカと書かれていました(笑)。でも、本当にそれくらいの気持ちです。

藪ノ:しかし、「飲食=アルバイトの仕事」と考えている学生さんは多いですよね。

新田氏:新卒で働きたい業種ランキングでも、飲食業はワーストに近いです。

ジェイグループ 新田様

藪ノ:一方で、自分のタメになったアルバイトに、飲食業が1位に選ばれています。この矛盾には、飲食業の仕事について理解が進んでいないのかなと思うのですが・・・。正社員とアルバイトで、明確な違いはあるのでしょうか?

新田氏:そうですね、正社員のほうが、将来自分で店を持ちたいと思っている人が多いと思います。新卒で入ってくる子たちはみんな、「将来店を持ちたい」「社長になりたい」「新田治郎になりたい」ということを言ってくれます。そうでなくて、いずれは違う仕事で生計を立てていこうと思っている人が、途中で辞めていくんでしょうね。

藪ノ:マーケットにおいて店舗過剰になっても、独立して店を持ちたいという気持ちは変わらないんですか?

新田氏変わらないです。外食は、雇われているよりも、自分でお店を開いたほうが絶対に楽しい。売れなくて苦しんだとしてもです。本気度も違うし、成長度合いも違ってきます。自分のお店なら、仮に結果がダメでも納得できますからね。将来はみんな独立していけばいい。社員にいつもそう言ってますよ。

ジェイグループ新田様

藪ノ:たとえ、市場環境が厳しくなったとしても、意欲のある人にはチャンスがあるということでしょうか?

新田氏:人間が食べるということは、なくなりませんから。胃袋が小さくなったり、人口が減ったり、そのようなことはあるかもしれません。でも同時に、日本に来る外国人の数は増えています。女性の社会進出により、女性の方がどんどん外食するような時代にもなっています。僕らにとっては追い風です。

藪ノ:最近では家族連れで居酒屋を利用するケースも増えていますね。

新田氏:仕事をリタイアされた方が、夫婦でお見えになったりもするじゃないですか。僕らの時代なんか、親父とお袋が2人で居酒屋に行くなんて考えられなかったですよ。それも昔は、近所の割烹やお寿司屋さんにしかチャンスはありませんでした。でも今は、みなさん色んなところに足を運ばれます。

現実的な話、外食のマーケット自体が大きく成長することはないと思いますよ。けれど、急激に縮小していくこともないでしょう。現状に近い市場規模において、店舗過剰の状態が続くと僕は見込んでいます。その中でも、繁盛店とそうでないお店とがある。そこに、もっといろんなことを知ったやる気のある若い人がどんどん参入してくれば、変化をしない企業というのは淘汰されていく。店舗過剰だからこそ、おもしろい時代。「若いヤツ、出てこいや!」という想いです。

社員は将来の宝。不景気でも、採用をやめない、投資をやめない。

藪ノ最近、外食産業全体で人材の採用が難しくなっていると、メディアでも取り沙汰されているかと思います。その点については、どのようにお考えですか?

新田氏:景気が良くなると、飲食店は忙しくなる。新しい店舗もオープンする。そのために、積極的に人を採用する。逆に景気が傾くと、暇になって採用をストップする。正直いって、そんな会社のエゴに社員が振り回されていれば、人が集まらなくなるのは当たり前だと思いますよ。

ジェイグループ 新田さま

藪ノ:なるほど、そういう風に思われているんですか。

新田氏:ええ。そんな企業が求人を出すのはナンセンスですね。ハートがない。少なくとも当社は、不況でもリストラをしたことがありませんし、店舗をオープンしなくても採用を続けてきました。しかも、従業員の大半を新卒で採用しています。今年も80人くらいの新卒が入りましたから、4月1日にはスーパー過剰人員(笑)。

でも、もちろん給与は発生するわけです。それは僕らが彼らのことを、「将来の宝」と考えているから。先んじて、一生懸命投資を続けてきたのです。結果として、当社は業界トップレベルの正社員比率を誇っています。同業他社さんがおっしゃるほど、人手不足でもありません。

ちなみに、最近の楽しみは新入社員研修。新入社員に、いかに「治郎ちゃんファン」になってもらうか。仕事に対する考え方はもちろん、人生の先輩としても、教えてあげられることはすべて教えてあげたいと思ってやっています。

とにかく、新卒はカワイイですね。彼らと一緒にご飯を食べに行くと、一番幸せな気持ちになりますよ。それも、入社1年目だけの特権。2年目からは自分の力で上がっていって欲しいので、僕にはしゃべりかけるなと言っています(笑)。

公平感、達成感、連帯感があれば、会社は必ず強くなる。

藪ノ:人材採用・育成面について、何かこだわっていることはありますか?

新田氏:経験や実績よりも、この業界が好きかどうか。知識や技術よりも、どれだけ情熱を持っているか。採用面ではそこを重視しています。僕たちの仕事はお客様に喜んでいただくこと。ただそれだけで、そんなに難しいことだとは思いません。だから、やる気があれば老若男女、学歴問わず採用していますね。

ジェイグループ インタビュー

藪ノ:その点、他社と比較して定着率83.5%と非常に高いですよね。

新田氏:なんというか、結婚みたいなものじゃないですかね。お見合い結婚と恋愛結婚とあるけど、お見合いのほうが離婚率が低かったりする。会社だって、入ってみたら意外と良かったって(笑)

と言いつつ、会社としても精一杯社員を大切にしてきたつもりなので、その結果でしょうか。

藪ノ:では、従業員満足とは、どうあるべきとお考えでしょうか?

新田氏:基本的な考えとして、公平感、達成感、連帯感が満たされているかどうかだと思います。これらの3つの要素があれば、企業は必ず強くなると僕は信じています。公平と平等は違いますから、みんなを同じように昇給させ、同じように給与を上げる必要はありません。上司と部下の立場が逆転するなんてこと、うちでは珍しくないですからね。大切なのはそれが妥当かどうか、みんなが納得できるかどうかということです。

業界の社会的向上なくして、優秀人材の活躍なし。

藪ノ:新田さんは飲食業界で唯一の社会人硬式野球部を設立されました。他にも、社員に向けたセンチュリー会やGM制度など、ユニークな仕組みもたくさん作ってらっしゃいますね。

新田氏:硬式野球部は、連帯感を高める目的で作りました。幼少期からずっと野球をやってきた子は、負けてみんなで泣いた、勝ってうれし泣きをしたという経験をしています。そこから、連帯感がなければチームは強くならないということを学び、卒業までやりきることで達成感を味わう。連帯感と達成感が体に染み付いているわけですよ。

彼らはお店でも、「一緒に頑張ろう!」「楽しんでやろう!」というのが上手です。場を盛り上げ、連帯感と達成感をもたらしてくれますね。部長や店長でなく、普通のいちスタッフであってもですよ。だから、硬式野球部が必要なんです。

ジェイグループ 新田会長インタビュー

藪ノ:GM(ジェネラルマネージャー)制度は、役員以外の社員も店舗運営のチャンスが得られると伺いました。これは、具体的にはどのような基準で選んでおられるのでしょうか?

新田氏:社員が自由に立候補できます。過去に、一つのお店に複数名が立候補したときは、くじ引きで決めたり、ジャンケンにしたこともあります(笑)。もちろん、1年目の社員がGM制度に選ばれることもあります。そこで活躍すれば、去年店長だった先輩より給料が上回りますからね。若い人たちに下克上の機会を与えているわけです。「若いヤツ、出てこいや!」って。極端な話、本社の社員だって、自信があれば手を挙げてもいいんです。

藪ノ:医療互助の制度(センチュリー会)があると、安心して病院に行けますね。飲食業界では、福利厚生や保険そのものが整っていない企業が、まだまだ多いとされていますが・・・。

新田氏:業界の社会的地位向上なくして、やる気のある良い人材は入ってこないですよ。ダメな人がいっぱい入ってきて会社を作ったって、良い会社になるはずがない。そのためには、週休2日制にしなければならないし、保険などの制度も確立しなければならない。休みなんて多いに越したことはないでしょう?ボーナスだって払うべきだし。企業が儲かったら還元しなければならない。それは、外食だって同じですよ。うちだけじゃなく、業界全体がやらなければならないことです。

ジェイグループ 新田様インタビュー

失敗といわれても諦めなければ、成功への途上。

クックビズ藪ノ:インタビュータイトルが「食のメンター」ということで、新田さんにもどなたか師匠となる存在はいらっしゃいますか?

新田氏:僕は外食に参入する前、全盛期のディスコ業界にいました。そこで、人として尊敬できる人にたくさん出会いましたね。特に大きな影響を受けたのは、ディスコ時代のグループのオーナーです。当時にして年商30億円を超えるグループ会社の社長に、まだ24歳だった僕を大抜擢してくれた本当にスゴい人です。

残念ながらもう亡くなってしまったのですが、「地位が人格をつくる」とおっしゃたその言葉が、「若い人にチャンスを与えたい」「社員の数だけスターを作りたい」「自分たちの仲間の可能性を強く信じていたい」という僕の考えのベースになっているんだと思います。

藪ノ:新田さん自身、失敗や挫折をした経験はありますか?

新田氏:一切なし。失敗なんか思ったことないもん。すべて成功(笑)。今まで何をやってもうまくいったと思っています。周りの人からすれば、「これはあり得ないでしょう」っていう失敗はいっぱいあったけれど、僕自身にとっては成功。失敗って、途中で諦めるからそうなるわけであって、諦めずにいれば、それは成功への発展途上。世の中って、失敗するより、諦める人のほうが多いわけでしょ?「こうしておけば良かったな」と思うことはあります。でもそれは、次の成功へのバネになります。

藪ノ:経営者としては大変なことも多いと思うのですが、立ち直りは早いほうなんですか?

新田氏:立ち直りは早い。というか、気にしてない。「うまくいったら周りのおかげ。失敗したら自分のせい」って思っていれば格好いいし、本当にそう思えたらそんな素晴らしい人生はないと思います。でも、僕は絶対に自分の失敗を認めない。

ジェイグループト 新田様インタビュー

藪ノ:最後に、今後挑戦していきたい分野はありますか?

新田氏:分野を問わず、外食であろうがなかろうが、チャンスがあれば何でもやっていきたいと思っています。だから社名に、「ダイニング」とか「テーブル」とか、外食を連想させる言葉をつけなかったんですよ。可能性があったら服屋さんだってやるし、エンターテインメントにも興味があります。こうなったらプロ野球球団でも作ってしまおうかな(笑)。

藪ノ:本日はありがとうございました。

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編集後記

新田社長とお話していると、「従業員満足度の追求」という、今まさに外食企業に求められている本質的な存在価値に、長年アプローチを続けてきたことがうかがい知れます。

その上で、外食の魅力は独立にあると言い切るところがジェイグループホールディングスの強みです。

今までの飲食店経営は、独立・開業の修行・経験が出来るからと、薄給で労働環境が悪くても通用する時代がありました。

ただ、同社は、独立・開業の夢も達成できて、更に企業としての環境整備もされていると。まさに鬼に金棒です。
これからもジェイグループホールディングスの採用優位性は持続していくでしょう。(取材:クックビズ藪ノ)