在庫管理のイメージ。人型の小さなフィギュアが各方面に積まれた積み木を指さしながら手元の在庫管理表を照らし合わせている

飲食店の在庫管理は、定期的にチェックをすることが求められます。すでにご存知だと思いますが在庫管理は、お店の信用や料理の味を守るために重要な作業です。

今回は飲食店の在庫管理の重要性を解説しながら、作業の注意点や確実な管理のコツをご紹介していきます。

飲食店で在庫管理が重要視される理由

最初に、飲食店における在庫管理の重要性を解説していきましょう。

在庫管理とは、飲食店を営業するのに必要な食材や資材、店の商品などを保管・管理することをいいます。飲食店で管理すべき物品には生鮮食品のほか、調味料、食器、テイクアウト用の容器など、幅広い資材が含まれています。

飲食店の利益向上につながる

飲食店にとって在庫管理が重要なのは、食材や資材を適切に管理することが、飲食店の利益向上につながるからです。

そもそも在庫管理は、仕入れ・発注した食材の数量が、実際の販売数と比較して適切な数量であったかを見極めることを指します。

そのため、やり方や方法によって、お店の利益・コストを左右するため、在庫管理は「経営手法のひとつ」とも言われます。

仕入れ数が少ないと商品を作り出すことができず、大事な商機や顧客を逃がしてしまいます。逆に仕入れが過剰だと、食品ロスが生じて負担が大きくなりかねません。

特に食品ロスがでると仕入れにかけたコストが無駄になるだけでなく、食材や商品の廃棄にも費用がかかって経営コスト増につながるため、きちんとした在庫管理が求められます。

また適切な在庫管理をすることで、これまで以上の経営コスト削減が期待できます。なぜなら、仕入れの値動きを把握して適切なタイミングで仕入れをすれば、営業に必要なコストを最小限に抑えることができるでしょう。

正確に在庫管理を行えば、正確な原価率の算定もできるようになります。在庫管理は、店の経営戦略をたてるうえで必要不可欠な作業ともいえます。

飲食店の信用を守る

適切な在庫管理は、飲食店の信用を守るのにも役立っています。

食中毒などの食品事故を起こさないことは、飲食店にとって当然の義務です。特に令和3年6月1日からは、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point=ハサップ)に沿った衛生管理の制度化が図られました。

在庫管理は、飲食店が食品事故を防ぐのに欠かせない作業です。食品事故が起きると飲食店の信用が低下し、営業にも支障をきたすリスクもあります。在庫管理をしっかりすることでそのような事故を未然に防げるようになるのです。

期限切れ食材や傷んだ商品を廃棄するのは、在庫管理の観点からいっても当然です。在庫管理をしていくなかで適切な処分をして、食中毒のリスクを減らしましょう。

また在庫管理をしっかりすれば、食材はいつもフレッシュなまま、おいしい料理をお客様に提供できます。店の料理や商品の品質をハイレベルに高められるため、在庫管理はお客様の満足度向上にも貢献します。

飲食店における在庫管理の方法とポイント

「POINT」のイメージ写真。机の上に開いて重なる本とリングノート。ノートには黒字のボールペンで「POINT!」と書かれている

それでは、飲食店における在庫管理の基本を解説していきましょう。

手間や時間はかかるものの、すでに実施されている方も要領のポイントを再度確認することで改善や見直しに役立つため、ぜひ前向きに取り組んでみてください。

食材は分けて保存する

飲食店の場合、食材を分けて保存するのが在庫管理の基本です。これは食中毒を防止するための措置でもあり、仕入れた食材や半製品、製品を区分けして、別々に保管するように心がけましょう。

肉や魚介類から出たドリップは、細菌やウイルスの繁殖を招きやすいため、とりわけ注意が必要です。清潔なバットやビニール袋、蓋付きタッパーなどを使って、ほかの食材や商品と直接的に接触しないよう、分けて保管します。

必ず日付を記入する

在庫として保管する食材や商品には、必ず日付を記入する必要があります。仕入れた納入日や開封日、解凍日、賞味期限、消費期限などを、一目でわかるように容器に記入しておくと利便性はさらに高まります。

特に生鮮食品を取り扱う場合は、食材の消費期限である「シェルフライフ」と、賞味期限である「ホールディングタイム」を、しっかりわかるようにする必要があります。

食材に日付を記入するのは、古い食材から順に使用していくためにも欠かせません。仕入れた食材を計画的に使い切れればロスが出ず、無駄を減らせます。

また日付を記入しておけば、食材の見た目、香りや風味と一緒に期限切れ食材の判断目安になるため、廃棄処理にかかる手間や負担を軽減できるでしょう。

先入れ・先出しを徹底する

在庫を使う場合は、先入れ・先出しがルールです。仕入れた日付が古い在庫から先に、順番に使用していきましょう。

これは料理や食品の鮮度を保つことを目的とした、飲食店の基本的な食材管理方法です。きちんと順番を守るためにも保管場所を整理し、日付を確認しやすく整えておくことをおすすめします。

在庫の置き場は新しく仕入れた食材を奥に、古いものほど前に置くのがコツです。一工夫をするとスムーズに取り出すことができ、在庫管理の手間を減らせます。

定期的に棚卸しをする

定期的に棚卸しをして、すべての在庫数や保管状況を確認することも大事です。総在庫の実数を定期的に確認し、記録しておきましょう。

店によって異なるものの、棚卸しのタイミングは月1回、月末に行うのが一般的です。棚卸しを機会に期限切れの食材や商品がないか確認し、あれば確実に廃棄してください。

棚卸しをして在庫状況を把握することは、原価率を正確に算出することに役立ちます。

棚卸表・在庫管理表を作成する

棚卸しをしたら、確実に棚卸表を作成しておく必要があります。

棚卸表には食材名・仕入先・仕入単価・在庫数量・単位・合計金額・前月残・当月仕入・当月残などを記載するのが一般的ですが、その点は店に適した項目で記載するようにしてください。当月売上高も記載しておけば、原価合計や原価率が算出しやすくなります。

あわせて食材ごとの在庫管理表も作成することもおすすめします。毎月の入出庫数と在庫数を記録すると、1日あたりの出庫数が算出できます。

食材の消費ペースが正確にわかるので、次回の発注数や発注のタイミングを予測して、適切な仕入れに役立てましょう。

飲食店の在庫管理で失敗を防ぐポイント

悩んでいるイメージ。男性がノートPCの前で頭を抱えこんで悩んでいる様子

飲食店の在庫管理で失敗を防ぐ方法も解説していきましょう。

飲食店が目指すべきは、売り上げの機会を逃さず、ロスを出さない管理です。適切な仕入れをするためにも。次の点に注意してください。

在庫管理の手順・時間を決めておく

在庫管理の手順や作業をする時間は、あらかじめ決めておくと良いでしょう。店で調理や接客をする合間に在庫管理をするのは手間がかかり、スタッフの負担増を招きかねません。

作業工程が多くなると管理が曖昧になるので、管理方法をルール化させておけば、負担を減らせます。在庫管理の負担を減らせば、作業ミスの削減にもつながるでしょう。

在庫管理はスタッフ同士協力しあって行うことも大切です。在庫管理の手順はマニュアル化し、誰でも作業ができるようにルールを共有化しておきましょう。

ABC分析を活用する

ただ在庫を調べるだけでなく、ABC分析を活用すると在庫管理がより実践的に役立ちます。

ABC分析は複数の指標から、優先すべき項目を決めて管理を行う方法です。まず累計売上額によって、在庫をA・B・Cの3つのグループに分けていきます。

売上額が大きい主力商品を重点的に管理することで、新メニューを考案する経営戦略がたてられます。逆に売上に直結しない商品は最小限の管理で在庫管理を最適化し、作業負担を減らしていきましょう。

在庫管理システムを活用する

すでに実施されている方も多く、定番の管理方法として、市販されている在庫管理システムを利用する方法があります。ソフトウェアを使えば大量の在庫を効率的に管理することが実現します。

在庫の入出庫状況も一元管理でき、仕入れの予測もしやすくなるので、売り上げ機会の損失や食品ロスを防ぐのに貢献します。システムを使えば在庫管理をするスタッフの負担も減らせて、一石二鳥です。

在庫管理表には、Excelの無料テンプレートを活用するのもおすすめです。自分たちのお店に適した食材の在庫品目や保管場所などを項目にカスタマイズできるため、活用を検討してみてはいかがでしょうか。

最初に一度だけExcelのテンプレートをカスタマイズし在庫管理表を作成すれば、毎日必要な在庫管理表を印刷するだけで利用できるため便利です。

編集後記

飲食店にとって、正確な在庫管理は必要不可欠です。毎日のチェックは手間がかかるものの、きちんと管理すれば結果的に収益アップを目指せます。

在庫管理システムなども活用して負担を減らし、前向きに在庫管理に取り組みましょう。