グレーのスーツの人と黒のスーツの人が握手している写真

働き手の中核メンバーとして、多くの飲食店ではアルバイト・パートスタッフが活躍しています。正社員の確保が厳しい飲食業界において、人柄の良さや成長の伸びしろなど、将来性を感じる優秀なアルバイト・パートスタッフを正社員に登用したいというニーズも高まっているようです。

そこで、今回は雇う側と雇われる側の双方がハッピーになれる正社員登用について、飲食業界での取り組みや役立つ助成金についての最新情報をご紹介します。

アルバイト・パートから正社員になるメリットとは

アルバイト・パートで働く最大の魅力には、働き方の自由度があります。生活スタイルや予定に応じて、比較的流動的に勤務日や勤務時間を調整できるよさがあります。

では、一方で正社員になるとどんなメリットがあるのでしょうか。

黒髪にハーフアップでボーダーの服を着た女性が右手でグッドをして立っている写真

各種社会保険や福利厚生といった待遇面以外に、大きな正社員のメリットとして「キャリアパス」の描きやすさがあります。

■正社員になると賃金が安定し年収増

平成28年度の民間給与実態統計調査(※1)では、正社員の平均年収478万円に対して非正規社員は170万円と報告されています。

非正規社員の年収と比べて正社員の年収が大幅に高いのは、固定給と賞与に恵まれていることが大きいと推測されます。固定給は勤務年数や年齢によって上がることも多く、さらに昇給や昇格が加われば年収の大幅アップも期待できます。
(※1)国税庁 「平成28年分民間給与実態統計調査結果について」より

■正社員になると手厚い保障と福利厚生で安心感増

アルバイト・パートでも一部適応されますが、正社員になると社会保険に加入することになり、通勤手当や住宅手当、家族手当など定められた各種手当を受け取ることができます。

会社によっては、社員食堂や保養所、寮といった福利厚生の利用が可能になり、企業年金などの保障があることで、いざ病気や怪我、災害にあった際にも手厚い補償が受けられます。

■正社員になると「キャリアパス」や「将来設計」が描きやすい

いくら正社員と同じくらい活躍しているアルバイト・パートであっても、会社組織の中でキャリアの幅を広げていくことは難しいのが現実です。

正社員であれば、本人と会社(もしくは組織)の希望によっては店長やエリアマネージャー、本部スタッフといった道に進むこともできます。

また、正社員になると、結婚などに伴い、住宅ローンを組むようなこともしやすくなります。

飲食業界での正社員登用に向けた取り組み

飲食業界には、アルバイト・パートから積極的に正社員登用へと移行を推進する会社も多く、さまざまな取り組みが行われています。

では、実際にどのような取り組みが行われているのでしょうか。

スーツ姿の男女3人が同じ方向を向いて横並びに座って、笑顔でメモを取っている様子の写真

■アルバイト・パート向けに半年に一度の会社説明会

人材を絞って正社員にスカウトするケースもありますが、最近では定期的な中途採用として、すでに各現場で働くアルバイト・パートに向けた会社説明会を半年に一度のペースで行う事業所もあります。

この説明会では

  • 事業体についての説明、事業所全体の店舗の紹介など
  • 福利厚生、各種社会保険(厚生年金、健康保険、雇用保険など)、手当などの説明
  • キャリアパスについての説明

といった基本事項の説明を中心に内容構成されることが多くなっています。

定期的に説明会を開催することは、「正社員」という働き方を常にスタッフに意識してもらうという点においても有効です。

■正社員お試し期間の設定

長期間に渡って働いているアルバイト・パートほど、正社員登用に躊躇してしまう傾向があります。
「もし正社員になってダメだったら、お店を辞めなければならない」という不安を持つのがその理由です。

そうした不安を解消するために登場したのが「正社員のお見合い期間」。

まずは正社員として3カ月~半年ほどトライアルで働いてみて、正社員としてやっていけそうであれば本契約へ、もしダメであればアルバイト・パートに戻るという制度。

正社員には興味があるけど二の足を踏むスタッフの背中を押してあげる施策として効果的です。

■近年導入が増えている「限定正社員」

地域や時間、職務などを限定して働く正社員のことを「限定正社員」と呼び、近年では限定正社員制度を導入する事業所が増えています。
働き手にとっては自分の希望も考慮され、正社員の立場も保障されていることがメリットです。

ただし、一般の正社員より固定給が低い場合や、昇給や昇格を限定されるケースも。さらに、店舗の閉鎖などで希望の地域や職務がなくなれば、働き続けられないデメリットがあります。

正社員登用で事業所が受け取れる「キャリアアップ助成金」

パート・アルバイトを正社員登用すると、事業所側は社会保険料や福利厚生費などの費用負担が増加します。

そうした正社員登用にかかる企業負担を軽減するために設けられたのが、厚生労働省の「キャリアアップ助成金」という制度です。

企業規模にもよりますがパート・アルバイトから正社員に登用された場合は、一人当たり45万から60万円の助成金支給があります。

電卓と豚の貯金箱の前にお金が置かれている写真

■助成を受けるための雇用条件

雇用契約期間

正社員登用しようとする従業員が、転換の前日までに同じ事業所に通算6カ月以上雇用されていること。(※通算して6カ月以上なので、例えば3カ月の労働契約であっても、その契約に更新があり6カ月以上の継続雇用となっていれば問題ありません)

雇い入れ時の契約内容

雇い入れ時に、正社員になることを確約していないこと。(※正社員になること前提で、パート・アルバイトとして雇用した場合には対象となりません)

出戻りとしての正社員雇用

パート・アルバイトから正社員になる前日から3年以内に、助成金を受ける事業所に正社員として雇用されていないこと。(※正社員への転換の前日から3年以内に正社員だった労働者が、一度パート・アルバイトとなって再度正社員となる場合は対象となりません)

■助成を受けるための事業所条件

キャリアアップ計画の作成

正社員登用をする事業所は「有期契約労働者等のキャリアアップに関するガイドライン」(※以下参照)にそってキャリアアップ計画を作成する必要があります。

労働協約または就業規則の制定

アルバイト・パート労働者等の非正規社員の正社員登用を、労働協約または就業規則その他これに準ずるものに規定する必要があります。

労働協約または就業規則の制定

対象となる従業員を正社員登用への転換後6カ月以上継続して雇用し、6カ月以上分の賃金を支払っていること。

※詳しくは厚生労働省の「キャリアアップ助成金」案内のページと「有期契約労働者等のキャリアアップに関するガイドライン」などを参考にしてください。

まとめ

正社員の採用が厳しい飲食業界でのアルバイト・パートからの正社員登用についてご紹介しました。未来を担う優秀な人材確保に繋がるよう、ご紹介した仕組みや制度を活用しながら、雇う側と雇われる側の双方がハッピーになれる正社員登用を目指してください。

■この記事の指南・監修

クックビズフードカレッジ講師 荒木寿夫

大学卒業後、アパレルメーカーを経てマンションコンシェルジュ、飲食業界で人事・採用・教育を担当。現在、クックビズフードカレッジにて、飲食業界の各企業向け人事ノウハウや研修サービスを提供。飲食業界や人材業界での知見を活かしたメディア出演も多数。

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