独自の経営路線で2010年、“100店舗100業態”の偉業を達成。飲食業界にその名を轟かせた株式会社ダイヤモンドダイニング。あれから約2年の月日を経た2013年1月、経営理念を「熱狂宣言」に変更。自らが先頭に立ち、新戦略・新組織を牽引する。代表取締役社長 松村 厚久氏が描く今後のビジョンに、クックビズ藪ノが切り込みます。
「組織が熱狂するために、社長自ら熱狂する!」
藪ノ:経営理念を「お客様歓喜」から「熱狂宣言」へ。
この大胆宣言を発表されたのは、今年1月の社員総会とお伺いしていますが、そもそも「熱狂宣言」に変更された背景を教えて頂けますか?
松村氏:通常、企業というものは売上予算を達成すればOKですよね。でも当社はそうじゃない。さらに他の何かを期待し、期待されているんです。
“何か”をしでかしてくれるんじゃないかって。その空気は、周りから非常に感じますね。大阪、名古屋などに行くと特に強く感じます。
この期待感が戦略の変更、新組織の改革に私たちを向かわせました。2年前に”100店舗100業態”を達成して以来、個々の店長が店の舵取りをできる環境を求めるために、私はGM業、監督業として一歩ひいてやっていました。
しかし、今は違う。サッカーで例えるなら、背番号10番をつけたプレーヤーのイメージ。パスをもらってもパスを返さない、俺がシュートを決めてやるぞ!くらいの気持ちを持って、この組織を引っ張っていこうと。
だからこそ宣言したんです、経営理念を「お客様歓喜」から、さらに気持ちを強くもった「熱狂宣言」に。熱狂していくぞ、という想いのもと、今は私自らバンバン店舗を回ってます。
藪ノ:Facebookで店舗訪問されている姿を、頻繁にアップされていますね。店舗を回って何を感じますか?
松村氏:宣言してからは、店舗にほぼ毎日のように行っていますが、まず感じるのは「全然だめ!」ということです。もちろん、みんな一生懸命やっています、その上で駄目なんです、まだまだだと感じる。「熱狂」出来てない。でもこれはすべて僕の責任なので、これからはがっちり行きますよ。
藪ノ:「熱狂宣言」がまだ浸透してきてないんでしょうか?スタッフだけでなく、宣言に対する周囲の反響はいかがでしたか?
松村氏:確かに最初は社員も「え?なになに?」って感じでした。今もまだ十分ではないかもしれません。でも社員総会後、徐々に浸透してきてきた手応えは感じています。社外でもよく声かけられるんですよ、「熱狂してるか?」って。聞かれて「ハイ!熱狂してます」って答えたり(笑)。「熱狂宣言」は、おかげさまで結構広まってきています。
藪ノ:「熱狂宣言」っていう四文字熟語がいいですよね。しかも自分たちが楽しむから、お客様も楽しむ、っていう考え方は外食産業では素晴らしいコンセプト、理念ですよね。
重要部署は社長直属に。目指すは「外食300億円限界説」打破!
藪ノ:企業理念の変更だけでなく、組織体制も変更されたと伺いました。大きくはどう変わったのですか?
松村氏:まず、会社の肝となる部署、商品開発と人材採用、人材教育は社長室にもってきました。社長の私が、仕組み作りからしっかりと関わっていくことで、大きなこの組織をブレのない強い組織にしていこうと考えています。さらに教育面も、普段から交流のある企業の経営者の方々と情報交換したりしながら、いいところはどんどん取り入れたりしています。
一番大きいのは、事業部の再編成でしょうか。ダイヤモンドダイニングとシークレットテーブルを合併させ、ゴールデンマジックも一部合併、バグースもレストラン部門は合併させるなど、いろいろとテコ入れしました。
簡単に言うとFCはゴールデンマジック、ダーツビリヤードはバグース、それ以外は私が管轄するダイヤモンドダイニングと分かりやすくしたのです。一時期はホールディング化を目指していたのですが、いったんやめて、私が見ることにしたのです。
藪ノ:なぜホールディング化に問題があったのですか?
松村氏:ホールディング自体が悪かったわけではありません。ただ僕を含めて、組織がまだ未熟だったんですね。「外食300億円限界説」と一部では言われる声があります。外食産業では多くの場合、企業の成長が200億円台で止まってしまうんです。200億までは社長のカリスマ性でやっていけるんですね。
しかし、当社はそこで止まらないために、私があらためて「監督業」から「プレーヤー」に戻った。組織を変えた。理念も変えたのです。新体制は3月1日から。盛り上がっていきますよ、これから!
藪ノ:『IZAKAYA YUJI(いざかや ゆうじ)』を昨年11月、アメリカ・ロサンゼルスにオープンさせるなど、海外にも数店舗展開されているんですよね。
松村氏:そうなんです。特にハワイは非常に伸びてますよ!もう絶好調です。一ヶ月5,000万円位を売上げています。さらにいま二店舗目を計画中なんですが、おそらく月商1億円は売上げると思います。なぜなら日本企業としては過去最高の大きさ、初じゃないかと思う規模ですから。しかも…いや、今は企業秘密なのでこれ以上言えません(笑)。
藪ノ:アジアではどこに注目をしていますか?これからも海外へは注力されるのですか?
松村氏:アジアで注目すべきはシンガポールでしょうか。弊社のグループ店舗で言うと、バグースはアジアに引き合いがありますよ。FC展開とかですね。
でも今年の僕はとことん国内の得点王を狙っていきます。海外は別の人材を社長にたてて任せていますので、私はしばらく日本に専念するつもりです。ライバルはそうですね、株式会社sublimeのまろちゃんと、株式会社ブルーコーポレーションの長谷川くんかな。長谷川くんはキテますからね(笑)!オーラもノリも何もかも違う。彼は天下を獲る人です。関西には若手でいい経営者がいっぱい居ますけど、彼のように一歩踏み出さない人が多い。その中で彼くらいじゃないでしょうか、心から突き抜けたいと切望しているのは!!
藪ノ:店舗展開してる方は少ないですもんね、とくに大阪は。
松村氏:大阪だけでなく東京もですよ。実は、飲食店って3店舗の繁盛店を作ることが出来れば、それで大もうけできる。だから普通はそこで止まるんです。そこから先は本部をつくらないといけない。本部作ったら最後ですよ。本部を維持するためにやり続けるしかないから。だからなかなか一歩を踏み出せないんですよね。でも、私はまだ止まりません、まだゴールじゃないですから。「外食300億円限界説」打破が目標なんです。
企業として成長を続けるために、今こそ組織が変わる時。
藪ノ:人材についてお聞きしたいのですが、採用時、何か大切にしていることなどありますか?
松村氏:実は人材採用に関しては、人事部にとても優秀な女性スタッフがいます。今回の人事異動で社長室にきたのですが、自分がリーダーになって100人くらい集めた異業種交流会をやってるような人物なんです。まだ入社して1年くらいなんですが、とても優秀な人材です。しかも、「私は人事として各方面で注目されています。でも、ダイヤモンドダイニングが好きなのでここで働いているんです!」と生き生きと自信を持って話してくれます。そんな面白い人材にこそ、人材採用のことは任せるほうが、きっといい人材が採用できますよね。
藪ノ:採用は新卒だけでなく、中途採用もされているのですか?
松村氏:もちろん、中途もやっています。しかし中途と比べて新卒は数が違う。毎年ものすごくたくさんのご応募をいただきます。おかげさまでエントリーというところでは、新卒採用に不自由はまったく感じてないくらいです。
藪ノ:あとは定着するかどうかですが、何が魅力で応募してきている、とお考えですか?
松村氏:やっぱり自由さ、なんでしょうね。ただしこれからは、私たちの目指す方向には「自由」ばかりではありません。規模も目指すステージも変わってきたからです。でも自由さがなくなる、というより、それぞれがプロの仕事をしていく、ということですね。自由に個々で作っていると原価のブレなども出てきます。外食300億円を目指すなら、そういうところをまとめていく必要があると考えています。
藪ノ:では、教育面ではどんな取り組みをしているのですか?
松村氏:新卒の新入社員を集めて、合宿などいろいろ積極的に行っています。特にこれからの私たちには、教育が重要なポイントになると考えているからです。今までは”100店舗100業態”、「自由な社風」に魅力を感じて頑張ってきたメンバーが数多くいます。100店舗くらいまではそのやり方でもよかった。でもこれから国内は1,000店舗という目標の下、勝ちまくらないといけない。これから「外食300億円限界説」打破を目指して、さらに突き進むには、ブランドを少しまとめて整理してあげる必要があるのです。大きく九州なら九州、焼き鳥なら焼き鳥、土佐なら土佐、大きな業態ごとにまとめて、その中でベンチマークを作る方向で進めています。個性を殺さず、スケールメリットをいかしていきたい、そう考えています。
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