
お客様に愛されるお店づくりに欠かせない要素として色々思いつくと思いますが、その要素のひとつに「クレンリネス」があります。
しかし、飲食業界で働いている方の中でも、クレンリネスについて、具体的にはよくわからないという方もいるのではないでしょうか。
こちらの記事では、クレンリネスの重要性と実施手順についてわかりやすく解説します。2021年6月から開始した「HACCP義務化」とクレンリネスの関係についても紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
飲食店に必要なクレンリネスとは?
はじめに、基本のクレンリネスの概念について解説します。
この章で解説するのは、飲食店を営業する上で、必ず身に付けておくべきクレンリネスの知識。お客様に安心してお店に足を運んでいただけるように、しっかりと押さえておきましょう。
まずはクレンリネスとは何をするのか、どのような目的のために行うのかを知るところから解説します。
飲食店の店舗の衛生、清潔さ
「Cleanliness(クレンリネス)」とは「清潔で快適な状態を保つこと」を意味します。飲食業界では用いられる機会が多いため、一度は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
クレンリネスは、飲食店経営の大切な行動指針である「QSC」のひとつです。
QSCとは、以下の頭文字を取ったもので、飲食店経営に必要な原則ともいわれています。
- Quality(クオリティ)
- Service(サービス)
- Cleanliness(クレンリネス)
Quality(クオリティ)は料理の質を指します。経営する上で、料理の質はお店の売上や集客に大きな影響を与えています。
どれほどお店の内装や外装がきれいでも、料理の質が悪ければお客様はリピートしてくれなくなります。
Service(サービス)は接客を指します。料理の質が高くても、スタッフの接客や対応が悪いとお店の印象は悪くなるでしょう。
SNSが当たり前になった現在、誰もが気軽に日々の出来事や知り得た情報を投稿できるため、お店の接客や対応について、あっという間に広まってしまう可能性があります。
Cleanliness(クレンリネス)は店内の清潔さを指します。料理の質とスタッフの接客に気をつけていても、店内が不衛生な状態ではお客様がまた来たいと思えるお店にはならないでしょう。
また、食中毒を防ぐためにも店内を清潔に保つことは大切です。今は新型コロナウイルスの感染対策としてもクレンリネスは非常に重要な項目となっています。
クレンリネスとクリンネスの違い
クレンリネスと同様に、よく飲食業界で耳にする単語のひとつ「クリンネス」があります。響きも似ていて同じ意味のように感じますが、ニュアンスが微妙に異なりますので、両者の違いを覚えておきましょう。
- Cleanliness(クレンリネス):清潔さや衛生を保つ行為や作業。
- Cleanness(クリンネス):清潔で衛生的で快適な状態。
つまり、クレンリネスは「清潔な状態を保つこと」で、クリンネスは「清潔な状態」を意味しています。
言い換えると、クレンリネスはお店側の清掃をする者が使う言葉で、クリンネスはお客様視点から見た店内の状態を表す言葉ともいえるでしょう。
クレンリネスの目的
前述したQSCの箇所でもお伝えしましたが、飲食店を経営するために、クレンリネスの実施はかかすことができません。
クレンリネスを実施する目的は、お客様の健康と安全を守ることです。クレンリネスが実施されていないと、店内が不衛生な状態になり、食中毒や異物混入などが発生する恐れがあります。
厚生労働省の調査によると、国内で発生する食中毒のおよそ60%は飲食店で発生するといわれています。食中毒は衛生管理を徹底することで予防できるため、クレンリネスの実施が重要です。
また、現在は新型コロナウイルス感染対策や、政府・自治体からの時短要請への対応としてテイクアウトやデリバリーを実施する飲食店が増えています。テイクアウトやデリバリーは、調理をしてからお客様が料理を口にするまでの時間が長くなるため、食中毒発生のリスクはさらに高まっています。
食品衛生法でのHACCP義務化
2020年6月1日から改正食品衛生法が適用され、2021年6月1日までに原則としてすべての食品等事業者はHACCPに沿った衛生管理に取り組まなければなりません。
HACCPとは「Hazard Analysis and Critical Control Point」の略称で、欧米でも導入されている国際的な衛生規格です。
もしHACCPを導入しなければ、都道府県が定める条例によっては罰則を受けたり、営業許可の更新ができなくなる可能性があります。
そのため、これからのクレンリネスはHACCPに沿った衛生管理を実施する必要があるのです。
飲食繁盛店には必須!クレンリネス3つの実践手順
クレンリネスの基本的な概念と目的について解説しました。
クレンリネスはお店を繁盛させるためにはかかせない項目です。では、どのような方法でクレンリネスを実施すればよいのでしょうか。
この章では、今すぐできる「クレンリネスの実施手順」を大きく3つにわけて解説していきます。
お店の基準とマニュアルを作る
クレンリネスを実施するために、まずはお店の基準とマニュアルを作成しましょう。
お店の清潔な状態の定義や条件は店舗によって異なりますので、それぞれのお店に適した基準を設定するのがポイントです。
このとき、使用する掃除道具や清掃の範囲、頻度なども決めておくとスムーズにクレンリネスを実施できます。
さらに、クレンリネスが実施されているかを確認するために、チェックリストを作ります。チェックリストはHACCP義務化でも必要な書類になりますので、必ず作成しましょう。
下記の資料に、衛生管理のためのチェック項目が掲載されていますので、チェックリストを作成する際の参考にしてみてください。
スタッフの意識を高め教育する
クレンリネスを実施するのは一人ひとりのスタッフです。それぞれのスタッフにクレンリネスの重要性を伝え、意識を高めてもらう必要があります。
スタッフの意識がお店の清潔さの状態に直結しますので、下記の項目を徹底することでスタッフの意識を高めていけるでしょう。
- まめな手洗いの推奨
- ユニフォームにゴミや髪の毛がついていないかの確認
- 汚れている箇所を見つけたらすぐに掃除する
このほかにも、スタッフ同士で話し合ってお店独自のルールを設定していくと、さらにクレンリネスを推進していけるのではないでしょうか。
お客様の目線を意識する
お店の基準を設定する際は、お客様の目線を意識することが重要です。
お店側がどれだけ気をつけていても、お客様に衛生的と感じてもらえなければ、クレンリネスが達成されていることにはなりません。
店内清掃だけでなく、下記の項目にも気を配り、お客様がまた来たいと思えるお店づくりをしていきましょう。
- 従業員の身だしなみ
- 調理器具や食器
- お店の外観、店舗周辺
お客様の安全や快適さを意識したクレンリネスの実施によって、さらなる売上アップと集客につながっていくでしょう。
クレンリネスのマニュアル作成で意識すべき2つのこと
最後に、クレンリネスのマニュアルを作成する際に、意識すべきポイントを紹介します。
HACCPに沿った衛生管理を徹底する
これからのクレンリネスは、HACCPに沿った衛生管理を徹底しなければなりません。小規模の飲食店に求められている衛生管理は、下記のとおりです。
- 衛生管理計画の策定
- 計画に基づく実施
- 確認・記録
マニュアルの内容は、これらの項目が満たされるように作成しましょう。
一般的衛生管理のポイントを押さえる
また、マニュアルは一般的衛生管理のポイントも押さえておく必要があります。
- 原材料の受入の確認
- 冷蔵庫・冷凍庫の温度の確認
- 交差汚染・二次汚染の防止
- 器具などの洗浄・消毒・殺菌
- トイレの洗浄・消毒
- 従業員の健康管理・衛生的作業着の着用
- 衛生的な手洗いの実施
上記以外にも、新型コロナウイルスの感染対策として、下記の記事も参考にしてみてください。
クックビズ総研:これで感染拡大を防ぐ!飲食店でのコロナ対策の基本
編集後記
クレンリネスの基本的な概念と目的、実施方法について解説してきました。
クレンリネスの実施は、お客様の健康と安全を守るだけでなく、お店を繁盛させるにもかかせない項目のひとつです。また、HACCP義務化への対応にもクレンリネスは重要な役割を担っています。
ぜひこの記事を参考にして、クレンリネスのマニュアル作成やスタッフの教育にお役立てください。