クレームのイメージ写真:真っ赤な顔で起こっている外国人女性と右側には小さくなった謝罪する女性

飲食店を経営していると、お客様からクレームがくることは予期しておきたいもの。クレーム対応の仕方によっては店の評判を損ない、経営に悪影響を及ぼすこともあるので、よく備えておくことは大切です。

今回は、飲食店で多いクレーム対応の内容と手順について解説します。また、クレーム対応をする際の注意点もあわせて紹介しますので、業務にお役立てください。

飲食店にとってのクレーム対応の重要性

お客様からのクレームにどう対応するかは店の経営を左右します。そのため、クレームには真摯に対応することが重要です。

クレーム対応には時間がかかり、ストレスが溜まるものとなるものの、その反面で貴重な情報をもたらします。お客様からの苦情が商品やサービスの質の向上に役立つからです。

とはいえ、対応によっては店の信用が損なわれるリスクもあります。最近は飲食店の口コミサイトを利用する人も多いため、その口コミ評価に影響する可能性が生じます。また、TwitterなどのSNSで店の悪い評判を拡散される恐れもあります。

そのような悪影響を防ぐためには、クレームに対して迅速に対応することが大切です。

飲食店に多いクレーム対応の内容

謝罪のイメージ写真。腕を組んで怒っている女性客の横で腰をかがめてお詫びしているベージュのエプロンをつけた男性スタッフ。

飲食店のクレームはある程度パターンが決まっています。ここではよくあるクレーム対応の内容を紹介しますので、確認してみましょう。

異物混入のクレーム

調理中や配膳の途中で髪の毛や袋の破片、小さな虫などが混入したためにクレームが生じることがあります。

異物混入のクレームがあった場合は、迅速な対応が必要です。まずはていねいにお詫びしましょう。その上で、異物が入っていた料理は下げて、すぐに代わりの料理を用意するのが一般的な対応方法です。

接客態度に対するクレーム

店のスタッフの接客態度に対するクレームは、飲食店に寄せられるクレームの上位を占めます。もしも接客態度についてクレームがあった場合は、不快な思いをさせたことに対して、すぐに謝罪しましょう。

その上で従業員を特定して聞き取り調査を行います。お客様からのクレームが100%正しいとは限らないため、従業員側の意見も聞くことはケアも含めて大切です。

接客面で問題があることがわかった場合は、スタッフで共有して改善し、今後の接客に活かせるようにしましょう。

提供時間に対するクレーム

「ずっと待っているのに料理がこない」といった提供時間に対するクレームもよくあるものです。

料理や飲み物の提供に時間がかかった場合は、なぜそのような事態が生じたのか確認しましょう。

その日に限りスタッフの人数が足りなかった、たまたま大勢のお客様が一度に来店された、単純にうっかりオーダーミスがあった、といった要因があるかと思われます。

事実関係を把握し、必要であればスタッフのシフトを見直すなどの対策を講じることが大切です。もちろん、お客様には提供が遅れたことをきちんとお詫びし、今後は同様のことが発生しないように対策を取ることを伝えましょう。

飲食店におけるクレーム対応の基本と手順

イメージ写真:和食店の個室。手前に座っている女性客が女性店員を指さし、ミスを指摘。女性スタッフは困っている様子

飲食店でクレーム対応をする際の基本姿勢と正しい手順を紹介します。

1.まずは、不快にさせたことを謝罪する

はじめに、お客様に不快な思いをさせたことに対して、しっかりと謝罪しましょう。

クレーム対応ではスタッフの第一印象が重要になるため、表情、視線、態度や服装などにも気をつけましょう。言葉遣いはもちろん、相づちやクッション言葉、間の取り方などもお客様をさらに不快にさせないように丁寧な応対を心がけます。

2.クレーム内容をしっかりと聞く

お客様からのクレームを受けたら、まずは相手の話をよく聞くことが大事です。作業の途中の場合は仕事の手を止めて、しっかりと聞きましょう。

クレームを聞くときに確認したいのは、大きくふたつです。

  1. 何が起きたのか、クレームの原因となったのか把握する。
  2. その出来事についてお客様がどのような気持ちになっているのか把握する。

このふたつを整理し、記録しながら最後まで話を聞きましょう。話の途中で疑問点が沸いても遮らず、お客様の言い分を最後まで聞くことが大事です。お客様の言葉に対して反論や言い訳をせずに、お客様のクレーム内容を繰り返すように相づちを打つことでしっかりと傾聴姿勢を示しましょう。

お客様からのクレームを聞くときは、傾聴力を身につけることが役立ちます。傾聴力とは、相手が伝えたいことをきちんと理解するために、よく耳を傾け、熱心に聞くことです。

傾聴力については、下記のページで詳しく説明していますので、参考にしてみてください。

クックビズ採用ノウハウ「1分で理解する傾聴力とは?」

3.相手の立場に立って謝罪する

お客様からのクレームを聞いて、店側に問題がある場合はまずお詫びしましょう。お客様の誤解によるクレームでは、お客様に不快な思いをさせたという意味で謝罪するのが適切です。

以下の具体的な謝罪フレーズを参考にしてみてください。

  • 「ご迷惑をおかけし、大変申し訳ございません。」
  • 「ご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございませんでした。」
  • 「説明がいたらず、ご迷惑をおかけして申し訳ございません。」
  • 「せっかくご予約いただいたのに、ご不便をおかけして申し訳ございませんでした。」

ただし、相手が怒っているからといって「すべてこちらで責任を持ちます」などのように全面的な謝罪をしないようにしましょう。「モンスタークレーマー」といった悪質なクレーマーも近年話題となっているように、全面的に謝罪をしてしまうと、実際はお店側に非がないことも、非があるとして認めたとみなされる可能性もあります。

最初にお客様に不快な思いをさせた部分についてしっかりと謝罪し、お客様のお話を聞いた上でクレームの内容を把握しましょう。その後お店側に非のある部分、謝罪の対象を明確にし、謝ることを意識していきましょう。

もちろん、相手が悪質なクレーマーである可能性があったり、自分のミスではないのに高圧的に叱られたりすると、言い返したい気持ちになるかもしれません。

しかし、丁寧で迅速なクレーム対応にはお店のスタッフが感情的にならないことが大事です。謝罪してもお客様の怒りが収まらない、どう対応したら良いのかわからない場合は、責任者に報告して指示を受けましょう。

4.改善と解決に向けて対処する

クレームで問題がわかったら、改善と解決に向けてすぐに対処しましょう。代わりの料理が必要ならば、速やかに提供します。

問題を解決できた場合でも、必ず速やかに責任者へ報告しておきましょう。

また、クレーム対応ではお客様の都合を優先させることも大切です。食事後の予定が決まっていて急いでいるケースもあるため、代わりの料理を提供するといったことでは対応できないこともあります。

その場合は、どのように対応すると良いか責任者の指示を仰ぎましょう。

5.必要があれば責任者に交代する

誠心誠意を込めて謝罪しても、なかなかお客様の怒りが収まらない、こちらの説明では納得してもらえないといったこともあるでしょう。そのような場合は、責任者に交代して対応してもらうほうが良いかもしれません。

その場合は、まずはクレーム相手に責任者を呼んでくることを伝え、了解を取ります。責任者にはクレーム内容と対応の経過を端的に伝え、お客様に再度イチから経緯を説明させないようにしましょう。

責任者にクレーム内容を報告する場合、いつ、どこで、何が起きているか、今どういう状況かなどを具体的にかつ端的に伝えることが大切です。

責任者が来て謝罪をし、再発防止の説明をしたほうがお客様からの理解を得やすくなります。

最終的に和解して、店先までお送りするのが正しいクレーム対応です。

飲食店でクレーム対応をする際の注意点

「要注意」イメージ。リングノートに赤や黄色、緑の字で大きく書かれた「要注意!」の文字。その片隅にはそれらの色の色鉛筆が並んでいる

最後に、飲食店のクレーム対応でやってはいけないことを紹介します。以下のような対応はしないように注意しましょう。

相手の怒りを増幅させる不適切な言動をしない

どんなクレームでも、お客様の怒りを煽るのは大切な顧客ひいては評判そのものを失うことになりかねないためNGです。

言葉遣いに留意して、相手に敬意を払い、ていねいな言葉を使うようにしましょう。お客様の話を聞きながら、「うん」と相づちするのは不適切です。必ず「はい」「ええ」などと答えるようにします。

他の不適切な言葉遣いの具定例として以下を参考にして注意しましょう。

  • 「担当ではないので…。」
  • 「そこに書いてあるとおりです。」
  • 「そういう決まりです。」
  • 「こちらの電話番号にかけてください(本部・本社に連絡してください)。」
  • 「なるほど。」
  • 「了解しました。」

また、常識や自店のルールを押し付けるのも避けましょう。責任をはぐらかしたり、感情的になることも控えます。

相手の間違いを指摘しない

相手の誤解や間違いによるクレームでも、ストレートに指摘することは避けましょう。相手が感情的になり、こじれる可能性があります。

勘違いや間違いは誰にでもあることなので、勘違いをした相手が悪いという姿勢で対応するのは良くありません。

相手には非がないという低姿勢で臨みましょう。そうすることで、クレームを感謝に変えることもできます。

対応をたらい回しにしない

たらい回しは話がこじれる一番の要因となります。クレームを受けたら、その場で解決するのが理想です。必要に応じて、その場に上司や責任者に同席してもらい、迅速に解決できるようにしましょう。

別の部署や店舗とのやり取りが求められるクレームは、店側がその部署や店舗とやり取りをすると、たらい回しによる不安を与えないで済みます。「あちらが担当なので、あちらで相談してください。」とたらい回しにすることのないようにしてください。

編集後記

飲食店を経営している以上、クレームが発生することはほぼ避けられません。クレームが起きないように細心の注意を払うのはもちろんですが、クレームが発生したときにどう対応するかを考えておくことも大切です。

ていねいなクレーム対応を心がけていればお客様に好印象を与えることもできるので、この記事で紹介したことを参考に、起こりそうなクレームを予期してあらかじめ対応方法を決めておくと良いでしょう。

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