木下シェフコラムタイトル

こんにちは。イタリアン料理人の木下です。
第5回のテーマは、「パスタメニューを考えてきてと言われたら。お客様の意見をメニュー開発に活かせ」です。

「パスタメニューを考えてきて」と言われたら。お客様の意見をメニュー開発に活かせ

まずイタリアンの場合、料理のメニューを大きく区切ると「Antipasti(前菜)」「Primipiatti(第一の皿、パスタやリゾット、スープ)」「Secondipiatti(第二の皿、メイン料理)」「Dolci(デザート)」に分かれます。
それぞれ要素は違いますが、日本の場合だとやはりパスタの需要が高く、パスタだけで食事をすまされるお客様も沢山いらっしゃると思います。

パスタ

また前菜の「カプレーゼ」や「カポナータ」「クロスティーニ」が分からなくともパスタの「ペペロンチーニ」や「カルボナーラ」「ペスカトーレ」などは説明しなくても誰もが知っているくらい認知度は高く、パスタがいかに日本人にとって身近なものであるかがよく分かります。

伝統的なイタリア料理に、旬の食材を組み合わせる

イタリア料理をしている人は、イタリアの地方の料理や精神を忠実に再現するタイプの人と、日本で手に入る食材を自由に使ってアレンジして表現するタイプの人にわかれると思います。

italia

僕は後者のタイプだったのでけっこう自由にメニューを考えて料理をしていました。
ただイタリアの地方料理というものはルーツや文化があって、それを知るとやはり伝統的な料理というのはパスタとソースとの相性もよくとても美味しいものだと思い知らされます。

例えば、エミリア・ロマーニャ州の手打ちパスタ「ガルガネッリ」だと肉のラグーソースが合いますし、プーリア州の手打ちパスタ「オレキエッテ」だとアサリやブロッコリーのソースがよく合います。

そういう伝統的な料理の組み合わせ、パスタとソースの基本的な相性、そして旬の食材を組み合わせアレンジすることでパスタメニューは沢山広げられると思います。

パスタメニューを作る上での基本方程式

伝統的な料理 × パスタの種類 × ソース × 旬の食材

定番/季節限定/即興?どのメニューとしてだすか

一概にパスタメニューといっても、定番メニューなのか期間限定メニューなのか、それとも今すぐ作る即興メニューかによって内容が変わってきます。
簡単に言うと定番メニューは、年間通して入手できる食材を使って作ることのできるもの。
期間限定メニューは旬の食材を使い季節感を出したもの。
即興メニューはリストには記載されてないメニューで、その場でお客様の要望に応え特別感のあるものだと思います。

料理経験の浅い時期に「パスタメニューを考えてきて」と言われても、なかなか発案できないと思います。
頭の中の引き出しの情報量が少ないですから、当然メニューも出てきません。僕も始めの5年ぐらいは、いろんな料理の本や写真を見て、それらを組み合わせることでメニューを発案していました。
今から思えば頭の中の引き出しに情報を詰め込んでいる期間でした。

1枚の紙に、ドンドン書き出していく

今では僕がいつもパスタメニューを考えるときは、1枚の紙に自分が使いたい食材をどんどん書き出し、それらを線で繋げていく方法をとっています。

メニュー開発メモ

例えばカテゴリー別に、野菜で「芽キャベツ、カブ、キノコ、ブロッコリー」、肉で「豚肉のラグー、鴨のラグー、ベーコン」、魚介で「アサリ、サーモン、タコ」パスタで「スパゲッティ、タリアテッレ、ペンネリガーテ」と書くとします。そしてそれらを組み合わせることでメニューが出来上がります。

この場合だと「芽キャベツと豚肉のラグーソーススパゲッティ」「キノコとベーコンのトマトソース、ペンネリガーテ」「サーモンとブロッコリーのクリームソース、タリアテッレで」等々、沢山出てきます。
そして、そこからリストに載せるかどうかは消去法になってきます。

最初に挙げた芽キャベツだと冬場にしか入手できない食材なので、定番メニューにはならず冬季限定メニューになります。
続いてのペンネリガーテはボイル時間が長いので他のメニューとの兼ね合いを考えなければなりません。

最後のクリームソースのパスタも同様、他のカテゴリーのメニューなんかにクリームソースを使ったメニューが存在していれば兼ね合いを考えなければなりません。

他のメニューとのバランスや、メニューに載せたものがお店が忙しくなったときに仕込みも含めオーダーが入ってから回せるかどうか、ということが大事です。
また、どうしてもそのメニューを載せるのであれば、他のメニューを変えるなり減らすなりの調整も必要です。メニューを考え構成する上で一番悩み、葛藤が出てくるのがこの段階だと思います。

お客様の要望に、付加価値を加える「即興パスタ」

この悩みや葛藤を解消するため、そしてなじみ深いパスタだからこそいろいろと出てくる要望に応えられるよう、僕は常時メニューに“おまかせパスタ”を載せていました。
お客様に食べたいパスタのイメージを言ってもらい即興でそれに応えるというものです。そしてただ要望にそのまま応えるのではなく何か付加価値を加えて応えていました。

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例えばお客様から「ブロッコリーを使ったトマトソースのパスタが食べたい」との要望があったとします。
それに対し、「ブロッコリーのトマトソーススパゲッティ」を作っても味気ない感じに仕上がってしまいます。

が、そこで「サーモンかベーコンを使用してもいいですか?パスタの種類は何でもいいですか?」と了承を得た上で付加価値を加えた「サーモンとブロッコリーのトマトソースリングイネ、生クリーム添え」といったようなメニューが出来上がります。

下がってきたお皿に、お客様が言葉に出さない本音が隠れている

またメニューを考える上では下がってきたお皿を見ることも大事です。
そこにはお客様が言葉に出さない本音が隠れています。

ソースも残らずきれいな状態のお皿なのか、お腹がいっぱいで残した状態か、嫌いな食材が入っていて残した状態なのか、それとも口に合わず残した状態なのか、様々な情報が見いだせます。

お客様の意見というのは全てが本音ではありません。
特に美味しくなかったとか、嫌いな食材が入っていた、等のネガティブな意見はもらえないので自分たちスタッフで探すことが必要です。

普段の生活に、メニュー作りのヒントが

それから普段の生活の中にもメニュー作りのヒントは沢山隠れています。
テレビを見たり本を読んだり人と会話したりしていた内容が、メニューを考える際にふと新しい発想に繋がることもあります。
見聞を広めておくことも大事です。

テレビ

それと、料理人が作りたい料理とお客様が求める料理は、必ずしも一致はしていません。
お客様の要望に応えるのは当たり前。そこに何か自分のエッセンスを加えて応えることでとても喜んでいただけるものだと思います。

次回は1月24日(金曜)に更新です。コラムに対するご意見、ご感想などもお気軽にお寄せください。

<コラム作者紹介>木下誠吾

香川県出身。調理師専門学校卒業後、船上料理人として就職。その後イタリア料理店で、23歳にして料理長を任せられる。レストラン新店立ち上げ、店長兼料理長としてレストラン経営を任せられるも、あえなく閉店。その後、ダイニングバーへ転職し、2010年から「オステリア エ バール インコントロ」の料理長としてオープンから関わり、お店は界隈の人気店として定着。2013年からはイタリアンワイン卸会社へ転職。3年後の独立目指し、今はワインの知識と自身の人間性を高めるべく、毎日仕事に取り組んでいる。家庭では、バリバリ働く妻と4歳の娘がいる。

【連載企画/飲食業界で、独立を考える料理人に送る、10のメッセージ】

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