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「飲食業界で、独立を考える料理人に送る、10のメッセージ」第2回です。
「オープンキッチンでフライパンばかり見ていると損をする」ネガティブなタイトルですが、言い換えると「回りを見ていれば得をする」ということです。

オープンキッチンでフライパンばかり見ていると損をする

レストラン

まず「オープンキッチン」とは、お客様にとって舞台であり、そこに立つスタッフは演者であります。
お客様を見るよりもまず自分が見られています。
その意識を持ってオープンキッチンに立つことが大事です。営業中一生懸命料理に打ち込むことも大切ですが、フライパンばかり見ずにたまには顔を上げてお客様の顔を見てみましょう。

お客様と目が合えば軽くニコッと微笑むと、それだけでお客様との距離はぐっと近くなります。
そしてそれがカウンター席なら自分から話かけられるチャンスでもあります。会話をすることでお客様との信頼関係を深めることができます。

料理人が料理以外のサービスをすると、想像以上に喜んでもらえる

オープンキッチンからお客様を観察することで、いろんなサービスを仕掛けることができます。
お客様は常に何かのサインを出しています。
もう一杯ワインを飲もうかどうか迷っていたり、追加オーダーのメニューを考えていたり、お水がほしい、と思っていたりとそのカタチは様々です。

そしてそのサインを感じとり、お客様に「すみません」と呼ばれる前に自分が動けばそれだけで素晴らしいサービスになります。(お店のスタイルの違いもあるので一概には言えませんが)。
僕自身の経験では料理人が料理以外のサービスをすれば、意外と喜んでもらえることが多かったです。

それと顔を上げていることでお客様から話かけられることも多くあります。
オープンキッチンだといろんな質問をされますが、中でも「料理の作り方を教えてほしい」という質問は多くありました。

僕は自分の料理のレシピは公開するタイプなので、営業中にオープンキッチンでカウンターのお客様とお料理教室みたいになっていることもよくありました。
レシピをメモされているお客様もいてとても喜んでくださいました。

お客様の好みや飲み物に合わせて、料理をアレンジ

料理をする際も、お客様を観察しておけば同じメニューでも味付けや付け合せ、盛り付けを食べやすいように変えて提供することもできます。
僕自身はよくお客様のその時の飲み物によって微妙に味付けや調理法を変えていました。

ビールか白ワインか赤ワインかによって少し塩加減を変えたり、おまかせサラダでは飲み物に合うようにハムなどを使って肉系に仕上げたり、又は魚のカルパッチョをのせて魚系に仕上げたりしていました。

前菜から通して肉料理ばかり続けてオーダーされてるお客様には、メインの肉料理に少しサラダを付け合せて食べやすいように提供したり、もし着物を着ているお客様や小さなお子様だったら予め食べやすいようにカットしたりして提供します。
お客様を見ていればできる、料理人ならではのサービスだと思います。

男性のお客様に、かわいいデザートを提供してしまった


ケーキ

第1回記事「料理人は、失敗を失敗と考えるべからず」でお伝えしたとおり、僕が料理の仕事に就いてまだ一年目の頃、イタリア料理店で働いていました。
当時デザートの盛り付けを担当していて、デザートソースできれいにハートが描けていつもより一段とかわいらしく盛り付けができたことがあったんです。

その店はオープンキッチンではありませんでしたが、その一段とかわいらしく仕上がったデザートが提供されたお客様がどんなに喜んだ表情をされるのか見てみたくて、厨房からホールに出て覗いてみました。
すると・・・、そのデザートが出されていたテーブルのお客様は二人の中年男性の方々だったのです。

「しまった!かわいらしく、ではなくてスタイリッシュに盛り付けしとけばよかった」とその瞬間思いました。
その店は女性のお客様が大半で、特にデザートを頼まれるお客様もほぼ女性だったのでてっきり女性だと思い込んでかわいらしく盛り付けてしまった。

きっと出された二人の男性のお客様は気まずい感じになっただろうし、僕自身も複雑な気持ちになりました。
お客様のリアクションを見るのもはずかしく、厨房にすぐ戻ってしまいましたね。
もうすこし経験があれば、お客様に声をかけたり、柔軟に対応できたかもしれませんが。

それ以降は、たとえ忙しくてお客様の顔が見られなくても、自分が今作っている料理の食べ手の顔を想像しながら盛り付けするようになりました。
僕は盛り付け時、女性のお客様ならかわいらしく華やかに、男性のお客様ならシンプルかつダイナミックでスタイリッシュに、を心掛けています。

サービスはタイミング。チャンスを見過ごさない

同じ料理を作るにしても、お客様に合わせて臨機応変迅速に対応できるのが、オープンキッチンの料理人ならではのサービスだと思います。
少し抽象的にはなりますが、サービスとはタイミングが大事です。

同じサービスでもタイミングが違えばお客様に不快感を与えてしまうこともあります。
回りを見ていないとそのタイミングすら気づきません。

回りにはサービスを仕掛けられるチャンスは沢山転がっています。
2~3年料理の仕事を続けてこられた人なら包丁で切りものやフライパンを振ることなど手元を見なくてもできるはずです。

顔を上げて回りを見てどんどんさりげないサービスを仕掛けお客様を幸せにしてあげましょう。
それはきっと自分にも返ってくるものと思います。

次回は、12月6日(金曜)更新ですので、よろしければまたお付き合いください!

※更新されました。バックナンバーは以下からご覧いただけます。

<コラム作者紹介>木下誠吾

香川県出身。調理師専門学校卒業後、船上料理人として就職。その後イタリア料理店で、23歳にして料理長を任せられる。レストラン新店立ち上げ、店長兼料理長としてレストラン経営を任せられるも、あえなく閉店。その後、ダイニングバーへ転職し、2010年から「オステリア エ バール インコントロ」の料理長としてオープンから関わり、お店は界隈の人気店として定着。2013年からはイタリアンワイン卸会社へ転職。3年後の独立目指し、今はワインの知識と自身の人間性を高めるべく、毎日仕事に取り組んでいる。家庭では、バリバリ働く妻と4歳の娘がいる。

【連載企画/飲食業界で、独立を考える料理人に送る、10のメッセージ】

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