「前例が無いから、挑戦できる。」と書かれた厨房の写真

実際に自分の名前の店を持った「焼き鳥 すず喜」店主の鈴木さんへインタビュー

<店主・鈴木さんのご紹介>
2011年に入社し、当初は塚田農場で勤務。コロナ禍では、他社での就労や新規のデリバリー事業などを担当。2021年の2月に新店の店主となる話の声がかかる。焼鳥に関する技術や経験は一切なかったが、積極的に手を挙げ、同年4月から研修カリキュラムを受講。
今では1つの店舗で昼間帯(地鶏中華そば ねぎしか)・夜間帯(焼き鳥 すず喜)で2業態を運営するお店の店主に。

※「焼き鳥 すず喜」の店舗詳細はこちら

「焼き鳥 すず喜]の入り口

――今まで経験したことのない分野で店を持つというお話だった、とお伺いしました。不安はなかったですか。
不安よりもやったことないことを始めるワクワク感の方が大きかったです。
研修を実施した場所はもともと通常運営していたお店だったんですが、緊急事態宣言中につき休業しており、学びや練習に打ち込める環境が整えられていました。

――まずこの研修ではどういった事を学びましたか。
仕込み、串打ち、部位ごとの特徴、炭、火力、食材の種類や特徴、数多くのことを学びましたが、一番最初に教わったのは「炭の特性」でした。炭と言っても、外国産や国産で火力や熱量が異なるなど、個性があります。そういった細かい違いなどの知識、種類や扱い方などの基本から、改めて教わりましたね。

講師は、焼鳥事業の料理長やマネージャーなど、焼鳥の分野に経験を持つ自社社員。
炭の知識を勉強し、肉の切り付け、串打ち、焼鳥を皆で焼き合って試食し評価する、というような内容で、1週間ごとにスケジュールが決まっていました。切り方一つ取っても部位ごとに肉質や特徴が異なる上、個体差があるので、ひと切れが同じ重さになるようにする感覚を掴むのにも練習を重ねる必要があります。若鶏を使って練習しますが、更に当社の場合、地鶏の串もマスターする必要があり、それだけで覚えることが倍です。全ての作業ごとに、学びと実践を繰り返し、個々に丁寧なフィードバックを受けていきます。

もちろん調理経験の有無で一人ひとりの成長度は違いました。私もあまり理解が追いつかない時もありましたが、講師のサポートを受け、何が苦手なのか、どこが解らないのか、毎回細かく丁寧に教えてもらうことができました。

店主・鈴木さんのインタビュー風景

――いわゆる一般的なお店で習得する「修業」とは決定的に何が違いましたか?
今まで10年飲食業界に勤めていた経験もありますし、調理の研修というものは、何か見て覚えろといったふんわりと学ぶ世界だと思っていたんです。
ただこのカリキュラムは、例えば串打ちでいえば、学ぶ手順や段階など、初級編・上級編といったように細かく論理的に組み立ててあって、それぞれの成長の段階に合わせてすごく丁寧に教えてもらえたので非常に驚きました。

営業中の店ですとやはりお客様が第一の優先なので、その場で質問したり、解決できるタイミングが非常に少ないと思います。この研修では、そういったもやもやしたものを持ち越さずにその場で解決できる。その時に感じて解らなかったことを、その場ですぐに質問できる時間があるのは、決定的な違いですね。
また素材に対する想いやこだわりが非常に強いAPHDだからこその知識やノウハウも多く習得できたと思います。

焼き場に立つ鈴木さんのモノクロ写真

――「すず喜」開店までの流れも教えてください。
この話をもらった時には、業態や立地などの大枠はすでに決まっていましたが、素材は何を使うのか、内装はどうしたいのか、提供するメニューはどうするのかといった意見は存分に反映してもらうことができました。自分がこだわりたい部分をうまく反映しつつ、会社の助言やサポートを受けながら一緒にお店を創っていくというイメージです。

食材やメニュー構成時も、十分に信頼できる商品開発部の知識や意見を得られましたし、当店の特徴である昼と夜とで業態が異なる案も、構想段階のアイデアから実現するまでサポートしてもらいました。

オープンまでの2ヶ月間は実際のお店で研修で学んだものを復習したり、本番のオペレーションを実働したり、扱う食材は銘柄鳥と地鶏の2種類だったので、その違いを比較したり。オープン1ヶ月前には、社内の人に来てもらい、プレ営業させていただきました。
数字の管理の仕方、メニュー構成からオペレーションの確認など、ほぼ毎週のように本部からサポートがありましたので、初めての店舗運営でしたが、特に不安なく始められたと思います。メインである鶏の調理も、いうなれば焼くステージが変わっただけですし、今では自分のやり方すらも追求出来ているので、研修で学んだことがまさに形になっている段階です。

ただ、数値的なものはもっと勉強しとけばよかったと後悔しています(笑)。

カウンターに立つ笑顔の鈴木さん

――今後の目標はありますか。
今はまだ社内独立の準備段階なので、私の名前の看板ではあるもののAPHD直営店ですが、これから名実ともに私の店として社内独立をし、このお店を地域密着型のお店にしていきたいです。地鶏以外の食材でいえば、地域の農家さんから直接仕入れなどもしているので、橋本周辺にさらに同じお店をつくり、貢献していければと考えています。

当社が掲げるビジョンである「食の未来を広げるフードクリエイター集団を目指す」にはとても共感していますし、まさに自分のように“個”を存分に活かせるようなお店が増えていけばいいと思います。通常の独立ではなく社内のサポートを受けながら店主としてやっていく手法にこその魅力もあって、それは「圧倒的に良い食材を安く使える」ということ。個人店ではできない流入経路ですし、これは当社だからこそ得られるものだと思います。

焼き場の手元の写真

将来の出店を目指す吉原さんへインタビュー

<研修中の焼き師・吉原さんのご紹介>
もともと料理が好きだったことから、飲食業界の道へ。元々農家と関りが多い地方出身だったこともあり、APHDの食材のこだわりや生産者に対する想いに共感し、入社。
当初は塚田農場で勤務を続けていたが、「焼き鳥 すず喜」でスキルアップしないかという要請に手を挙げ、同店でイチから焼き師として研修を受けている。

カウンターで話す吉原さんのインタビュー風景

――現在は何を学び、何を勉強していますか。
まだ勤務開始して2ヶ月目ですが、(育成カリキュラムと同じように)1週間ごとにスケジュールを設定し、鈴木さんと共に勉強してきました。〇〇をできるようになる、といったように直近の目標設定をしながら、いまは炭焼き、塩加減などを中心にやっています。炭の火起こしなど、マンツーマンで常に隣に立って教えて頂いています。

――全くの未経験からのスタート。どこが難しいと感じましたか。
特に炭の扱い方は、今後一生の課題になると思っています。
その日の気温や湿度、更に空気の入り方で火の上がり方が違ったり、同じに見えても炭の組み立て方が微妙に違うので、例え意識的に綿密にすり合わせてもずれがあると感じています。強火が好きだったり、弱火が好きだったり、好みや素材の扱い方なども含めると、一生追求しなければならないテーマですね。人と向き合うといいますが、炭はまさしく炭と向き合っていかなければなりません。

その炭に関しても、例えば名高い備長炭は火が長持ちして、それで焼くとやっぱり美味しさに違いがあるなど、色々お話を聞きながら&実践も交えながら、知識と感覚で同時に覚えていけています。

――いわゆるチェーン店から専門店へ。何が決定的に変わったと思いますか。
元々のお店と違って専門店は「レシピがない」ということが大きく違いました。
塚田農場にいたときはマニュアルやレシピがあったので、その通りにやればうまくできたんですが、その日の状況や素材で細かく変更をしていく職人は、それだけですごいなって改めて感じました。

そして同時に魅力も、「レシピがない」ということ。
焼鳥1本で完結する世界ですし、お客様も1本で満足していただける。逆に1本でお客様を失うこともある。レシピがないことの柔軟性や、1つにかける想いは個人店だからこその魅力ですよね。

鈴木さんの指導は、練習中でも目を離さずにポイントごとに助言をしてくれるので、一度の経験値がすごく高く、吸収しやすいです。いち早くお互いの認識や技術のズレをなくし、塩の加減といったお店としての味を統一して、誰が調理しても同じものをお客様に提供できるようにしていきたいです。

カウンターで笑顔の吉原さん

――将来の目標などはありますか。
もともと、あまり目立ちたくないんです(笑)。
いまは2番手としての立場が居心地がいいですが、いずれは地元に戻って同じようなお店をやっていきたいな、と漠然とした考えはあります。実力や経験が全然伴っていないので、ちゃんとした“夢”っていうほどではないですが(笑)。
そこに対しての努力をこれからも続けていくことができれば、カタチになるのかなと思っています。

店の前に立つ、鈴木さんと吉原さん

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