
一歩先を見据えたビジネス戦略で「技術のプロ」を育成するため、社員をレベルアップするため、さまざまな研修を実施してきた株式会社エー・ピーホールディングス(以下:APHD)。今回は、コロナ禍による緊急事態宣言に突入したことをデメリットと捉えずに、発想を転換して社員の研鑽機会に転じようと試みた内容についてご紹介します。
当初の予定とは異なり、時間の経過とともに研修という枠からどんどん姿を変えていき、同時に、将来を見据えたプロジェクトへの醸成へと進化していった今回の研修内容。その結果に至ったのは、情勢に合わせて柔軟に対応してきた結果と、素材にこだわり続けてきた同社の環境において焼鳥に携わってきたプロフェッショナルが、その技や工程、作業をロジック化し、体系立てた研修に落とし込むことができたからこそ。
まだ計画段階であり、正式なカリキュラムとしても構想段階であるそうですが、実際にこの研修をきっかけに自分の名前を冠するお店を任されたスタッフがいることも事実。この新しい取り組みに対するAPHDの想いや、この新たなキャリアプランで成長し、活躍するスタッフへのインタビューを実施しました。
<企業説明>
食のあるべき姿を追求し、食の未来を広げるフードクリエイター集団<FOOD CREATIVE FIRM>の構築というビジョンを昨年新たに掲げた、株式会社エー・ピーホールディングス(APHD)。
「塚田農場」や「四十八漁場」などを全国展開する企業です。
食品の生産(一次産業)から流通(二次産業)、販売(三次産業)に至るまでの全てを一貫して手がける独自の『生販直結』という六次産業化ビジネスモデルを展開しながら、地方の第一次産業や地域活性化にも尽力し、食産業における生産者・販売者・消費者のALL-WINの達成を目指しています。契約農家が育てる地鶏や漁師と直結することで可能にした鮮魚の流通など、食材へのこだわりは、全国200店舗以上の規模になっても変わることはありません!「ありきたりじゃ、つまらない。前例がないことに挑戦していこう。」という信条のもと、新たな時代の「食」を構築している企業です。
猛威を奮ったコロナ禍をチャンスと捉え、行動に移したことが全ての始まり
この研修が始まったのは、コロナ禍による緊急事態宣言に突入したことをデメリットと捉えずに、発想を転換して社員の研鑽機会に転じようと試みたのがきっかけだったそうです。以前から構想していたものを急ぎ形にし、社員の技能研修を実施したのです。
研修を実施していた場所は、緊急事態宣言下で休業していた焼鳥設備のある店舗。当初は短期的な研修だった予定が、宣言期間が想像をはるかに超え長期化したことにより、内容をブラッシュアップしながらも5ヶ月余り継続。
さらに、特に適性のあったスタッフを集めて、アドバンスコースを別店舗で実施するなど、時間の経過とともにどんどん姿を変えていきました。同時に、将来を見据えたプロジェクトへの醸成へと進化していったのです。
研修内容には、APHDだからこそできる教育方針が盛り込まれていました
焼鳥の技術といっても幅広く、日頃塚田農場で使用している炭とは種類や火加減が異なる上、鶏も部位によって味や焼き加減、そして季節によっても食材自体の脂の多さが変わります。更に同社の扱う食材「地鶏」は更に火入れが難しいらしく、かなり奥が深い世界です。
そこで同社が注力したのは「教えるポイントの精査」と「実践の数」でした。
■教えるポイントの精査
研修で実施した全ての技術は、その論点を事前にしっかりと整理し、効率のよい学習効果をもたらすための手引書を駆使。長年の経験を培ってきた同社所属であるプロの職人が、焼き加減や串打ちなど基本的な工程や作業を全てロジック化し、「まずはやってみる」「感覚で覚える」「目で見て学べ」といったことを全て順序立て、論理的に落とし込んだそうです。
■実践の数
頭で理解するだけでなく、実践回数をいかに積むことができるか、が職人としての技術に直結するため、研修場所は休業下であることを最大限利用し、本物の店舗を複数活用したそうです。頭で理解した後は即実践。
身体が覚え込むまで、実際の営業に即した方法を取り入れ、繰り返し鍛錬を積むことで、着実に実力を身に着けられる環境が整えられていました。
職人として活躍する、自分のお店を持つ、という夢や目標について、「何年もの修業が必須」といった一般常識が根付いていると思います。APHDではそういった概念に固執せず、一流の技術を誰でもできるようにデータ化、細分化することができれば、一流の職人の習得はスピードアップできる、という考えの下で指導していきました。
その結果、同社の考えを証明する第一歩として、この研修を受けた卒業生が、自身が主人となる新店の出店を果たすことに成功したそうです!
実際の研修はどうだったのか、店を持つまでの経緯など、現在「焼き鳥 すず喜」を運営する店主・鈴木さんと、その下で勉強中の吉原さんへインタビューを実施しました。