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サムギョプサルの美味しさを伝えるために、欠かせないのが「伝道師」の役割

藪ノ:最初は、ほぼ普及してなかったサムギョプサル。「なんのお店?」と首を傾げるお客様も多かったのではないですか?
勝山氏:もちろんありました。お客様にサムギョプサルのお店ができましたよー、と呼び込みをしても、ものの見事にサムギョプサルを知らない。9割方は知らなかったですね。中には「サムゲタンなら知ってるけど?」とかね(笑)。サムゲタンと思ってこられるお客様もいらっしゃいました。
藪ノ:確かにややこしいかもですね(笑)。
勝山氏:ただ、知らないっていう事実は、僕の中で大きなヒットでした。だって知らないんだったら、私たちが作るもの=本当のサムギョプサルでいいじゃないかと。本場韓国のルールにこだわることない。ただ、お客様もサムギョプサルを知らない人ばかりだったので、食べ方を教えてあげる必要がある。知らないままだと、本当の美味しさを知ってもらえないまま帰ってしまうことにもなりかねないのです。
だからこそスタッフは、サムギョプサルの食べ方をちゃんと伝える人、つまり「伝道師」でなければならない。この食べ方が、サムギョプサルなんですよと伝えることが大事だったのです。
むしろベジデジやにもう一回来てくれ、とは伝えなくていい。美味しいと思ってくれたら「本当のサムギョプサル」であるベジテジやに勝手に戻ってきてくれるはずだから。サムギョプサルをちゃんと伝えること、そこにこだわり続けたことで、ベジテジやは京都で一気に広まっていったのです。
藪ノ:なんだか文化の継承みたいですね。
勝山氏:サムギョプサルの少なくともリーディングカンパニーでいる以上は、「ベジデジや」をしっかり運営することは当然なんだけど、まずはサムギョプサルの業態を作ること。そこが大切だと考えたのです。
藪ノ:私が最初にお邪魔したのが大阪の福島店なんですが、食べた印象としては“何十店舗もやっているお店”、そんな完成度を感じました。店舗数と業態の完成度でいうと、圧倒的に業態の完成度が勝っている。食べた瞬間、これは成功するはずだよなあ、と感じました。
勝山氏:そういって頂けると嬉しいですね。でもその完成度って、かなりの割合で伝道師の力量にかかっているんです。たとえば50点の味の唐揚げが、とてもホスピタリティの高いキレイな女性が持ってきても、よくて70点だと思うんですね、100点になることはないと思うんですよ。
逆に、どれだけサービスが悪くてお皿を投げられたとしても、50点の唐揚げなら40点くらいかな、10点にはならないと思うんですよ。
ところが僕らのサムギョプサルは、50点の味だとしたならば、持っていく人によっては100点になったり、5点になったりもする。接客する人に依存する食べ物なんですよね。目の前に置かれたお肉やトッピングがあったとして、私たちが全く喋らず、伝道師が何もプロデュースせずにお出ししたとします。満足度ってだいたい100点中、5点くらいになるんですよ。美味しい食べ方がわからないから。逆に一番おいしい食べ方を伝えたら、80点にも90点にもなるんです。伝道師の力によって、お客様の満足度を変えられる、こんな面白い食べ物でもあるのです。
藪ノ:なるほど。そうなると、かなり人材教育が重要になりますね。
勝山氏:教育の仕組みに大切なのは「やらなくてはいけない環境」をつくること。当然想いがあって、自分で考えてするのが理想ですが、そこまで深く掘らなくても、お客さんに褒めてもらうことで頑張れることも多い。一般的な居酒屋さんでは「いらっしゃいませ」から「お会計」までのお客さんとの接点は3~5分なのですが、私たちベジテジやでは実に平均14分間もお客様と接点をもっているんですよ。
藪ノ:14分!お客様の滞在時間が約2時間くらいだと考えると、かなりの割合を占めますね。
勝山氏:そうなんです。おっしゃるとおり、お客様はだいたい2時間くらいはお店にいらっしゃるのですが、お客様に直接スタッフが判断してもらえるのはたった14分。満足度を上げるも下げるも14分間だけなんですよ。ヒアリング・プロデュース・クロージングと14分を3つに分けていますが、平均3分・8分・3分という構成なんですね。
最初の3分のヒアリングは、お客様を見て聴いて感じること。「いらっしゃいませ」の声かけから、今日ははじめてかな?いや何回目かな?団体さんかな、女性と一緒だな、など。感じることが大事なんです。
一番メインの8分でする仕事、それはサムギョプサルを伝えること、いわゆるプロデュースです。この8分でどれだけ伝えられるか。今日は団体だから、こういうサムギョプサルがいいよね、この方は3回目だから、定番じゃない、新しい食べ方がいいよね、とか。
いいサービスでもなんでもなく、当たり前のことなんですけど。
藪ノ:確かに、一度目に「ベジデジや」に来た時にあたるスタッフの方で印象は変わるかなと。
最初に福島店に行った時と、二回目に渋谷店に行ったときは、ちょっと違っていて。二回目は半分私も伝道師になっていたのです(笑)
勝山氏:はいはい。
藪ノ:渋谷店のスタッフはたぶん入ったばかりなのか、滑舌がよくなかったんですけど、その人が説明してわかりにくいところは僕がかわりに伝道師として知人に説明したりして(笑)。既にファンになっているんで、スタッフと一緒に、知人に嬉しくって教えている、そんな感じでしょうか。お客がスタッフを育てる環境ができやすい業態だなと感じました。
勝山氏:本当に、そうなんです。お客様のためでもあり、自分たちのためでもある14分なのです。
新しい人材を集めるに、明確なビジョンと、そして、労務環境の改善は必須!

藪ノ:リクルートサイトが面白いですね。辞めなきゃよかった度があるんですよね(笑)しかも、高いのかなと思ったら、低かったりして、結構赤裸々だなと。あれは社内で企画しているんですか?
勝山氏:そうなんです、普通はほとんどの企業さんが当然、いいことおっしゃいますよね。
逆にいいことより悪いことのほうが面白くて、見ていただけるんじゃないかな、って。結構僕ら、物事を考えていくときに。逆張りの法則というか。常に当たり前とされていることの真裏をとったりする。サムギョプサルという業態もそうですし。
藪ノ:飲食というと、どうしても“ブラック企業”の代名詞のように言われることがあると思うんですが、飲食業を取り巻く採用の不利さを感じたりしますか?
勝山氏:やはり、人気のない業種ナンバーワンといいますか(笑)。若い働き手が少なくなっていけばいくほど、厳しくなっていくのは目に見えているんで、なんとかしなくちゃいけない、とは思っています。ただ一方で高齢の方でも一緒にできる形を作らなきゃいけないんじゃないか、とも考えたり。
とはいえ、今10人でお店を回しているところを11人にしようとは、絶対に思わないです。どのようにしたら8人にできるか、という工夫は、これから飲食業界での大きな課題でしょうね。人がたくさんいないと成り立たない状態のままでは、採用の厳しさという課題は、なかなか抜け道が見つからないでしょう。
藪ノ:なるほど。
勝山氏:最近、私の中で1つ決めたことは、IPO(株式公開)なんですよ。飲食店で上場を目指すことにしたのも、目的は労務環境の改善。店をどれだけ展開していっても、上場企業と変わらないくらいの労務環境にしなかったら、今の飲食業界には人は揃わないと思うのです。
今まで上場する事でのデメリットといえば、労務環境を整えることへのハードルの高さ。「飲食店がそこまでは無理だよね」という認識だったと思うんです。逆に上場することによって、労務環境をしっかり整えて、企業としてあるべき姿を示していったほうがいいんじゃないかなと。上場を目指さないとしても、労務環境がしっかりしていなかったら、いずれにしても人は集まらなくなってきていますから。
藪ノ:そうですよね。現時点で実際の募集効果ってどうなんですか?
勝山氏:応募の満足度は10段階の1ですね。もっと来るはずです!
藪ノ:(笑)!!
勝山氏:もっと来るはずだ、と思うのは、私たちだけでなく各飲食店さんの将来のビジョンが、仕事を探してる方に届いていないんだと思うんです。ただそれだけのことだと思うんです。やっていることの全てが、やりたいことの全てがちゃんと伝わったら、もっとこの業界に来てもらえるはずです。来ないのは、単純にビジョンが伝わっていないから。なぜなら、注目されている企業の話も聞くんですよ。
先日、サブライムさんがガイアに出て、一気に採用が変わった、と仰っていました。応募の桁が変わったと。これは仕事を探している方に、企業のビジョンや魅力がしっかり伝わったからだと思うんです。僕らもまずは想いをしっかりと伝えられること。そして労務環境を改善して、採用という入り口でしっかりブランディングすることなんだと思います。
まずは国内100店舗へ!その後は、国内一次産業とリンクしたビジネスモデルで海外を目指す
藪ノ:御社のホームページで、海外展開は国内の店舗展開を達成してからと拝見しました。最近では、国内での出店をすっとばして海外へ行かれる飲食店・企業もあると思うんですね。その辺りは、どうお考えになりますか?
勝山氏:私たちは国内でいま100店舗を目指していて、新しい飲食店のビジネスモデルを創ろうとしているんです。いわゆる農業とか1次産業を含めての飲食モデルを作りたいんです。海外はその後。なぜかというと、そのビジネスモデルも含めて海外に持っていきたいからなんですね。
今の状態で「ベジデジや」を海外で持っていって、当然数店舗はできると思うんですけど、どうせなら海外へ行くときは一気にどーんといきたい。もちろん私たちくらいの規模で既に、海外展開されているところもありますし、それぞれのやり方だと思います。ただ、私は日本で新しいビジネスモデルを作って、海外に持っていきたいんです。
藪ノ:しっかりとした競合優位性を確保できてから、海外へというイメージですね。
勝山氏:食材ありきの飲食店である以上、そこ(1次産業)も含めたビジネスモデルを海外に持っていきたいなと思っています。
藪ノ:やはり、伝道師としてサムギョプサルの認知に挑んでいらっしゃる、という点から考えると、まずは「14分」の面白さや濃さをキープしたまま、50店舗、100店舗と展開して頂けると見ている方も楽しい。もし国内でそこまでできれば、かなり異質の飲食店ができると思いますので、本当に頑張っていただきたいと思っています。
勝山氏:ありがとうございます、嬉しいです。
藪ノ:最後にお聞きしたいのですが、食のメンターというテーマなので
勝山さんにとっての食のメンターってどなたですか?
勝山氏:多分、イヤな奴だと思われるでしょうが…、私は特にいないんですよ、メンターと呼べる方は。
ただ、影響を受けた人はいます。例えば外食では、株式会社てっぺんの大嶋啓介さん。飲食への考え方、飲食店から日本を元気にするぞ、飲食店でも夢を見れるぞ、という考え方に影響をうけました。
飲食店ってこんなに、毎日みんな感動して、スタッフが泣いて夢語って、そういう世界なんだと、素晴らしいことだなと思ったんですね。その他にもたくさん素晴らしい方はいらっしゃいますが、中でも素晴らしいなあと思うのはサイゼリアの正垣会長。そして、鳥貴族の大倉社長も素敵な方ですよね。
藪ノ:大倉社長には私も以前お話を伺いましたが、長期的な視点で持続的な経営を目指されていると思うんです。あんな方が関西にいるというのは、同じ関西人としても嬉しいですよね。そして勝山さんのような方もいらっしゃる。数年後にはここ関西から、海外へと飛躍されることを期待しております!
編集後記

勝山さまとお会いするまでは、業態の勢いそのままの印象を想像していましたが、非常に冷静に市場を分析し、自社のあるべき姿を模索し続けていると感じました。そうして作り込まれた業態、“ベジテジや”は非常に美しい。私もいちユーザーとしてお店に行くと毎回ワクワクしています。
常々、私は飲食業界で採用強者になれる可能性のある企業はほんの一握りだと感じています。ゴリップさんはその可能性のある数少ない関西発の飲食ベンチャー。これからも近くで微力ながらお力添えしたいと思った一日でした。
(取材:クックビズ藪ノ)