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地方創生のために絶対に必要な2つ

── 一方で石川県では2015年に「さぶろうべい」という郷土料理店を引き継がれました。「さぶろうべい」にはどういった思いが?

僕は石川県出身なんです。現在は、大阪と石川に会社を作ってどちらも行き来する生活なんですね。

でも今、日本のどこの地方に行っても幹線道路やショッピングモールでは、都市圏資本の飲食ブランドばかり。石川県にしかなかった飲食店が少しづつ姿を消していることに大きな危機感を感じました。

現在の地方の飲食店は昔とは違い、家賃も人件費も物価も物流コストも高いです。人材流動性も低く、マーケットが都市部に比べて小さい割にコストがかかる。地方の飲食事業者が多重苦なのは確かです。

でもだからこそ、これまでの僕の経験を活かしてできることがあると考えました。

インタビューを受けるSU-BEE田端代表の笑顔

──たどり着いたのが「さぶろうべい」なんですね。でもさきほどの「COIL」などとスタイルが全く違いますね。

最初に「僕や会社が何をやっているかつかめない」と言われたじゃないですか。よく言われるんですけど(笑)、僕の中には軸が2つあるんです。

ひとつには、「COIL」「TILE」のような強い魅力を発信するクリエイティブな地方の飲食店の運営。

そしてもうひとつには、石川県の事業承継という軸です。石川県にあったものがどんどんなくなっていく理由のひとつに、地方の個人の飲食店には、大手企業ほどのビジネススキルがないというのがあります。エンタメ性がなかったり、経営力がなかったり、比較すると負けるものばかりというか、結局、ビジネスのプロには勝てないんです。

ただし、50年続いているような個人経営のお店には、生命力があります。だから長く続いています。

だけど今、地方には、その強い生命力でも続けられないほどの厳しい現状があります。いってみれば外来種が入ってきて駆逐されていっている。

かほく市高松丁にあるさぶろうべい総本店外観

さぶろうべい」総本店は70年の歴史を持つ。1950年に高橋 三郎平氏が、石川県かほく市で創業。二代目誠治氏が後継した後、誠治氏の妻である千恵子氏が、女将として40年以上のれんを守ってきた。現在は4店舗。小松市のイオンモールにも出店している。

SU-BEEが石川県にある会社である以上、地元の一員としてやる価値があり、石川県の観光事業としての価値もあるので、事業承継は、会社の軸として自分たちがやっていくべきだと考えました。

僕から見ると、「受け取ってくれ」と言っているお店のバトンがたくさん見える気がするんです。だけど、まだ僕はその中の1本しか受け取れません。

これをいくつ次につなげられるかが大事かなとは思っています。
僕や会社にも限界があって、いつまでバトンを持って走りつづけられるかは分かりません。でももしかしたら、30年後に誰かが僕たちのバトンをまた受け取ってくれるかもしれませんよね。

さぶろうべいのとり白菜鍋

「さぶろうべい」のとり白菜鍋。鶏肉と白菜を鍋で焼き、たれに漬けて食べる。秘伝のたれは通販でも人気。

──「さぶろうべい」のとり白菜鍋は石川県でも知らない方が結構いるんですね。

もともとの店は70年続いているんですが、それだけ消えゆく食文化なんですよ…。でも「さぶろうべい」は収益性は高いんです。現在は石川県内に4店舗ですが、これから広げていく予定です。

ただ、僕たちは労働力を資本として成長していきたいので、「数字の目標は持たない」という会社方針があるんです。だから数字目標はないです(笑)。でも「さぶろうべい」はフランチャイズも含めて増やしていきますよ。

──「COIL」をはじめとするクリエイティブ事業の軸はどういった目的なんでしょうか。

今あるものが、なくなっていかないようにしていくことの一方で、地元の自分たちでプライドを持って新しいものを生み出すことも大事だからです。

石川県で生まれた飲食店、石川県で生まれたアイデア、石川県で生まれた業態。

確かに大手チェーンのフランチャイズに入る方が簡単だし儲かるし、世の中に受け入れられているやり方でもある。でも自分で考えたり、生み出したり、表現したりすることも諦めてはいけないと思います。

僕たちが会社として掲げている、失敗してもいいチャレンジとしての「実験」を続けていきたいんです。そういうと「悠長なことを」とおこがましくもあるんですが、成功する確率は高くないかもしれないけれども、生み出すことを続けていくという使命感はもっていたいと思っています。

会員制ドッグラウンジ「D.E.」の内観

会員制ドッグラウンジ「D.E.(デー)」(石川県野々市市・金沢市)

──クリエイティブ事業部の先の予定は?

ぼんやりとネタ作りをしているところですが、次は「お出汁」の再定義をしようかと思っています。

──それは楽しみです。田端さん、たくさんのお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

まとめ

「なんだかよく分からない会社」の代表は身長187㎝。長い手足と優しい目もと、そして笑顔が印象的。
あの店ってどういう店?ちょっと行ってみたい!そんな風についつい興味をそそられてしまうh,a,s!とSU-BEEのさまざまな店舗。
こちらの思い描く想像をちょっと超えて、ちょっと先にわくわくを用意する。

豊かなアイデアの土壌には「こうあらねばならない」というしがらみはありません。そこにあるのは、ただわくわくする幸福。

田端 弘一という大きな存在のもとで、“働く私”の未来を信じて、社員もアルバイトも性差も年齢も関係なく“働く私”を楽しめる会社。それが「なんだかよく分からない会社」の正体なのかもしれません。

<インタビュー・記事作成:峯林 晶子、撮影:久岡 健一、画像協力/株式会社h,a,s!、株式会社SU-BEE>

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「働く女性」中心の外食企業ってどんな会社ですか?


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