現地の方々と集合写真

クックビズ株式会社は、株式会社VIDA Corporationが実施する農林⽔産省補助事業「令和3年度⽇本産⾷材サポーター店への料理⼈派遣を通じた⽇本産⾷材利⽤拡⼤⽀援事業」において、日本産食材の利用を拡大させるための取組を共にスタートし、第1弾となる料理人派遣を2022年9月に実施しました。

本事業は、農林⽔産物・⾷品の輸出拡⼤実⾏戦略に基づき、マーケットインの発想の下で更なる輸出拡⼤を図るため、海外における⽇本産⾷材の発信拠点であるサポーター店へ海外展開を⽬指す⽇本⼈料理⼈を派遣し、⽇本産⾷材の利⽤を拡⼤させる取組みです。

第1弾の派遣では、クックビズが保有する人材データを含め幅広く日本人料理人を募集し、日本産食材に造詣があり海外進出の意思が極めて高い人材をVIDA Corporationが選考。
選考の結果、クックビズの人材データに登録されている、海外勤務やマーケティング、マネージメント等の経験を有する人材3名が採用され、2022年9月7日より3週間ベトナムへ渡航し、現地で以下の活動を行いました。
• 現地における⽇本⾷や⽇本産⾷材に関する情報収集(トレンドや流通している⽇本産⾷材等)
• 現地で⼊⼿可能な⽇本産⾷材を使⽤した現地のニーズに即した定番化が可能なメニューを複数開発
• ⽇本⾷、⾷⽂化の発信(現地の⽅へ向けた⽇本産⾷材を使⽤した料理の試⾷会等)

この記事では派遣料理人の3名の活動報告をもとにインタビューを実施。全3回の連載でご紹介します。
▼vol.1はこちら
「現地で感じた日本産食材の課題と伸びしろ」派遣料理人@ベトナムレポvol.1

<派遣料理人紹介>
渡邉 慶一(わたなべ けいいち)さん
経 歴:国内で和⾷の調理を経験後、韓国・オマーン・中国にて総料理⻑やプライベートシェフとして勤務。現在は国内の和⾷店に在籍。
派遣先:ベトナム「割烹いし⽥」

渡邉さん_調理風景

ベトナムの料理や土地や文化を知り、学ぶこと

ー日本産食材利用拡大支援事業に興味を持ち、応募に至った経緯を教えてください。
まず、ベトナムの方がどれくらい日本食を知っているのか、興味を示しているのかを知れる良い機会だと感じました。それと、ベトナムのベジタリアン料理を学びたかったので応募しました。
実は10年以上、韓国やオマーン、中国で海外勤務を経験し、総料理長やプライベートシェフとして活動していました。そして、今後も海外での出店や活動を視野に入れています。もっと色々な世界を見てみたいと思っていた頃で、ベトナムという新しい土地に行けること、ベトナムの文化を知りたいというワクワク感がすごかったです。不安はなかったですね。

ー3週間の派遣ということで準備も大変だったと思いますが、出国前に株式会社VIDA Corporationで受けた研修はいかがでしたか?
現在は総料理長として、和洋食それぞれ8名シェフをまとめる役割を担っています。3週間の派遣ということで調整は必要でしたが何とかなりました。
研修では日本産食材がどれくらい流通しているのか聞くことができました。使いたかった調味料は、現地でも結構売っていたので良かったです。
治安についても話を聞いて警戒してましたが、思ったよりも大丈夫でした。

ベトナムという国を知り、直面した課題

ベトナムの街

ーベトナム・ハノイの印象や様子を教えてください。
ベトナムについてホテルにチェックインしてから街に出ましたが、そこで気付いたのは支払い方法です。市場などは現金のみ利用可能で、レストランはキャッシュレスが進んでいました。が、まだまだ普及していないなと。あと、ローカルの市場では食材がパックされず大量に積んでいて量り売りでした。肉や野菜もそのまま。新鮮でも怖いなと感じました。
日本産食材を仕入れるところも無く、特定の業者のみでしたので、仕入れに関しても困ったなと、どうしようかなと悩みました。

ベトナムの若者が楽しむIZAKAYAとは?

ーここから活動について伺います。まず渡邉さんが訪問したサポーター店のことを教えてください。
日本とは何もかも全てが違いましたね。居酒屋と鉄板焼きのお店は厨房が1つだけ。これが和食?と疑問に思う料理や雰囲気でした。DJが音楽をガンガンならしていて、居酒屋というよりクラブですね。お客さんも若い方が多く、ターゲットを定めて商売をしているなと感心しました。
サポーター店である「Entertainment Izakaya KANKO」と「割烹いし田」で食事させてもらいました。「割烹いし田」は日本そのままの懐石コース料理でしたが、「Entertainment Izakaya KANKO」は若者にうける料理を出す居酒屋という感じ。刺身は大葉と海苔で巻いて食べたり、日本とは違いましたが現地では受け入れられていました。
やっぱり現地の方は日本料理を知らなくて、知っていてもロール寿司やラーメンぐらいでしたね。

お寿司

日本の30~40年前を彷彿とさせる市場の様子

ー日本食やベトナム料理のレストランの様子はいかがでしたか?
鍋や焼肉など、皆でつついて食べるお料理が多いのと、専門店が多かったですね。ベトナム人が経営している日本料理屋さんに行くと、寿司、ラーメン、丼とか、なんでもあるんです。ベトナムのローカルなお店に行くとリーズナブルでお得感もある。現地のレストランに視察に行ったときは、新たな気付きが多くて楽しかったですよ!
ただ、全体的に衛生面は良いとは言えないです。日本の30~40年前を考えるとこんな感じだったかな。これからどんどん変わっていくんだろうなと思います。食器も洗っているのか分からなくて少し抵抗はありましたが、とにかく美味しくてリーズナブルだったので、ハズレはなかったです。

ー最初にベトナムの印象でも伺いましたが、市場はどんな様子でしたか?
青い柿を水につけて売っていたり、どうやって食材を使うのか、通訳をとおして聞きましたが結局分からなかったですね。イカなど魚介類は生きたまま売っていました。蛙なんか生きたまま持って買っているんですよ!帰って調理するのか、日本では考えられないことが多かったです。
そして、やっぱり気になったのは衛生面。ミンチの機械も洗ったりせず次の人のカットをそのまま行うんですね。気温が高いので、ちょっと心配になりました。

市場の様子

市場の様子

ー日本産食材がほとんど流通していないベトナム。日本食市場はどうでしたか?
日本産食材専門のスーパーでは骨付き肉が売ってないんですが、現地のスーパーでは骨付きで、しかも丸々鶏1羽が売っていました。日本の食材は高いし新鮮ではないので、売れるものが必然的に少なくなる印象を受けました。
魚も古いのに高いんですね。しかも切り身でしか売っていないんです。日本人だけが買物にきていて現地の人の姿は見えませんでした。日本産食材はハードルが高いのと、まだまだ認知されていないようです。日本産は良いものというより高いものという印象があるかもしれません。

試食会はコミュニケーションが肝。

ー試作会での様子、メニュー考案のポイントや現地の反応など教えてください。

試食会のお刺身

ベトナムにきて最初に食べたのがブンという料理で、香味野菜を入れて食べるものです。ベトナムでは香りを重視するのかなと思い、野菜をうまく使えそうなメニュー考案をしていました。
事前にハノイにあるロッテホテルのスタッフに聞いたのは、「ベトナム人は刺身を食べない」ということ。だからこそ刺身を出して、わさび・山椒・柚子胡椒の香りをうまく使えないかなと思いながらメニューを決めました。
実は出国前から色々アイデアはあったんですが、現地に入って変わりましたね。和菓子は受け入れられるかが気になっていましたので挑戦してみたんです。
胡麻醤油は受け入れられなかったですが、海老醤油・きなこ塩は受け入れられました。わさびのような香りを好むらしく、良いアクセントになっていると好評でした。
あと、若鶏をもろみ焼きにしてキャベツで巻いて食べる料理は不評でしたが、盛り付けと食感を工夫したら良い反応が返ってきましたよ!意外にもきんぴらごぼうは皆すごく喜んでくれました。

若鶏もろみ焼き

試食会ではベトナムの方に調理のお手伝いをしていただいたんですが、「○○取ってください」というレベルの言葉やジェスチャーはきちんと伝わりました。ただ試食会では「美味しい?美味しくない?」くらいしか会話できなかったので、もう少しコミュニケーションを取りたかったですね。やはり言葉の壁は厚かったです。
私からも「こんな日本産食材を使ってるよ」とか、「こんな味付けにしたよ」とか、もっとアピールできたらなと思いました。
納得と驚きがいっぱいの試食会でした。
渡邉さん試食会の様子

ー日本食文化の発信活動に手ごたえはありましたか?
先ほどもお伝えしましたが、ハノイのロッテホテルに行って、もろみ味噌や上白糖や甘酒を持っていき、チャイニーズシェフに使えるか判断してもらったんです。もろみ味噌はしょっぱい。わらび粉・くず粉は片栗粉と同じくくりになること。上白糖は使いやすいし、ベトナムにも売っているがグラニュー糖が浸透しているため馴染みはないと教えてもらいました。
甘酒はお酒だと思ってしまうらしく「こんな甘いお酒は飲めない、もっと強い酒を」と言われてしまいました。
あとは、現地の日本語学校の生徒とコミュニケーション取れたら良かったかもしれません。日本食文化の浸透は遠くまだまだ厳しいかもしれませんが、やり方次第でチャンスはあると思います。

渡邉さん試食会準備の様子

ー今回の活動について感想をお願いします。
いろんな意味で刺激があった3週間でした。凝り固まった考え方を良い意味で崩してくれた。麺の使い方や、きぬた巻きは自分の発想には無かったので勉強になりましたね。
海外で必要な調味料が手に入らない時にどうしたらいいのか、と考えるようになったのも大きいです。今後は、ベトナムをはじめ、海外に目を向けながら出店や活動に挑戦し、日本産食材の魅力をどんどん伝えていきたいです。この取り組みは飲食人にとっても夢を掴むきっかけとなりますので是非続けてほしいです。


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