寒い時期にはお鍋、暑い時期には酒の肴の冷奴。
日本の食卓にとっても身近な名脇役である豆腐について、あなたはどれほど知っていますか?
よくよく考えてみると、不思議なのはその名前。豆腐には「腐る」という文字が入っていますが、腐っているわけでもなければ、納豆のような発酵食品でもありません。
一見不可解ですが、実はそこにはちゃんとした理由があるんです。
そんな名前の由来をはじめとした、豆腐の秘密に迫ってみましょう!
目次
豆腐は腐っていないのに、なぜ「腐」と書く?
豆腐は、大豆の絞り汁(豆乳)を凝固材(にがりなど)によって固めた大豆加工食品です。
同じく大豆からできる「納豆」のような発酵食品ではありません。
もちろん、豆腐を作る工程で大豆を腐らせることもありません。
それでは、豆腐にはなぜ「腐」の字が使われているのでしょうか?
そもそも、いつから食べられていて、どこからやってきた食材なのか、まずは豆腐の歴史を紐解いてみましょう。
「豆腐」発祥の地は中国
諸説ありますが、「豆腐」が生まれたのは紀元前2世紀ごろの中国といわれています。
16世紀に登場した中国の書『本草綱目』に「豆腐は、漢の淮南王劉安に始まる」という記述があることに由来しているそうです。
しかし、もっと前からつくられていたという説もあり、真実は未だに解明されていません。
中国語では「腐」が「液状のものが寄り集まって固形状になった、柔らかいもの」という意味で使われていることから、「豆腐」という名前が付けられました。
「豆腐」の名前の由来は、中国語からきていたのですね。
「豆腐」が日本に伝わるのは奈良時代
中国生まれの「豆腐」が日本にやって来たのは奈良時代とされています。
記録として初めて登場したのは1183年。奈良にある春日大社の神主の日記に、お供物として「唐符」が書かれていました。
その後、まずは寺院の僧侶の間で精進料理の普及とともに広まり、次第に貴族・武家社会へと伝わり、室町時代には全国的に広まっていきます。
「豆腐」が庶民の食卓に登場するのは江戸時代
「豆腐」が一般庶民の食卓に登場し始めたのは江戸時代。
1782年に『豆腐百珍』という豆腐専門のレシピ本が刊行されて人気に火がつきました。
それ以降、『豆腐百珍続編』『豆腐百珍余禄』が続々と登場し、「豆腐」が一大ブームになったことが伺えます。
そして、人気の波に乗り、全国へと普及していきました。
名前の割に「豆腐」の賞味期限は短い!?
豆腐は様々な料理に活用される便利な食材。
冷蔵庫に常備しておきたくなりますが、気が付くと賞味期限が切れてしまったこともありますよね。
名前の割には意外にも賞味期限が短く、数日でも過ぎてしまうと味が損なわれてしまうので注意が必要です。
腐っているかどうかの確認方法
賞味期限を大幅に過ぎてしまった豆腐。
大丈夫かな?と心配になったら、見た目や味、臭いなどを判断基準にしてみてください。
【見た目】
- パックが膨らんでいる
- 中の水が黄色くなっている
- 豆腐が変色してしまっている
【味】
- 酸っぱい
- 豆腐の味がしない
【その他】
- 酸味かかったすっぱい臭いがする
- 表面がヌメッとしている
- 糸を引いている
豆腐の保存食「高野豆腐」
「高野豆腐」は豆腐を保存食として加工したものです。
そもそも、高野豆腐は偶然に生まれた食料。鎌倉時代、寒さで凍ってしまった豆腐を溶かして食べてみたら食感が面白く、僧侶たちの間で精進料理として広まりました。
その後、室町時代から安土桃山時代になると、豆腐を吊るして自然乾燥させて、保存食・兵糧食として確保されるようになりました。
賞味期限を過ぎても気にしない方が多いですが、豆腐に関しては傷むのが早いので特に注意が必要です。
江戸時代に入ると「氷豆腐」とも呼ばれていましたが、高野山でつくられる豆腐として「高野豆腐」と呼ばれるように。
長期保存ができる食料として、近畿地方から全国へと広がっていきました。
そもそも、豆腐ってどうやって作るの?
「豆腐」は、中国、日本、朝鮮半島、台湾、ベトナム、 カンボジア、タイ、ミャンマー、インドネシアなどで日常的に食べられています。加工法や調理法は各国ごとに異なりますが、日本の「豆腐」は日本の気候風土にあわせて、白く柔らかい食感を持つ「日本独特の食品」へと進化してきました。
日本で「豆腐」といえば「木綿豆腐」や「絹ごし豆腐」が一般的。
柔らかさ以外に、このふたつの違いを知っている人はあまりいないのではないでしょうか?
ここからは、豆腐の豊富な種類とその作り方について紹介していきます!
木綿豆腐
実は最も歴史が古い豆腐は、「木綿豆腐」といわれています。
木綿豆腐は煮崩れがしにくい固めん豆腐で、作り方も特徴的。豆乳をにがりなどの凝固剤を加えて固め、「木綿の布を敷いた型」に流し込み、水分を切る過程で固さが生まれます。
表面に刻まれている格子状の模様は木綿の布目。木綿豆腐と呼ばれる所以です。
型崩れせずに食感をそのまま味わえるので、野菜炒めに入れてみたり、揚げ豆腐としても美味しくいただけます。
絹ごし豆腐
「絹ごし豆腐」の名前の由来は、絹のような滑らかさときめ細かい口当たり。
よく誤解されていますが、実際に絹を使うわけではありません。
木綿豆腐に比べて成分の濃い豆乳を使い、重石などで水分を切らず、にがりなどの凝固剤で固めます。独特の柔らかな舌触りは、水分をたっぷりと含んでいるから。
炒め物や揚げ物には向きませんが、煮物や和え物だけでなく、デザートとしても楽しめます。
寄せ豆腐(おぼろ豆腐)
「寄せ豆腐」は絹ごし豆腐よりも滑らかな口当たりと濃厚な味わいが特徴です。
濃厚な味わいなので冷奴や湯豆腐にして、豆腐本来の味を楽しめる料理に多く使われています。
ほかの豆腐同様、豆乳ににがりを加えて固めますが、箱型に入れずにすくいとります。
にがりを入れて攪拌する作業を「寄せ」と呼ぶのが「寄せ豆腐」という名前の由来。
豆腐がゆらゆらと揺れる姿がおぼろ月夜に似ていることから「おぼろ豆腐」とも呼ばれています。
充填豆腐
「充填豆腐」は、密閉された容器(パック)の中で固められた絹ごし豆腐です。
他の豆腐はパックに水分が入った状態で販売されていますが、充填豆腐は密封状態で店頭に並んでいます。
通常の絹ごし豆腐とは違い、加熱して凝固するのが特徴。
この過程で殺菌・消毒されるので、賞味期限が1〜2ヶ月に設定されています。
通常の豆腐が2〜3日と考えれば、とても長いですね。味わいに若干の雑味がありますが、栄養価はほぼ変わりありません。
「豆腐」は「世界のJapanese TOFU」へ
ここまで読んでいただき、いかがでしたか?
「豆腐」について、ほんの少しでも見る目が変わったのではないでしょうか。
「豆腐」は腐っているわけではなく、その名前のルーツは発祥の地・中国にありました。中国で生まれた豆腐が日本に伝わり、江戸時代には爆発的なブームにのって日本全国の庶民の食卓に登場して、現在では世界中で人気の高まりを見せています。
最近では、和食の国際化が顕著です。長期保存が効く充填豆腐を中心に世界へと広がり、アメリカやフランスの健康食・自然食志向の人たちの間で「TOFU」として人気が高まっています。
低カロリーかつ栄養価が高いため、ダイエット食品としても親しまれており、無添加の自然食品としても世界中で注目を集めています。
今後は「TOFU」が和食ではなく各国の料理の中で食材として使われる時代になるかもしれません。ますます目が離せませんね。
資料参照サイト | 「一般財団法人 全国豆腐連合会」 |
URL | http://www.zentoren.jp/ |