さまざまなナットとそのオイルが置かれた写真

食用に用いられる植物油として皆さんが思い浮かべるものには、胡麻油、菜種油、ひまわり油、米油、オリーブオイルなど、さまざまあると思いますが、今回紹介するのは「ナッツオイル」です。
「ナッツオイル」には、マカダミアナッツ、アーモンド、ピスタチオ、ヘーゼルナッツなど、たくさんの種類があり、それぞれに風味や味わいが異なります。

この「ナッツオイル」の特徴のひとつに、健康維持に欠かせないさまざまな「オメガ」が豊富に含まれていることが挙げられます。大量生産されていないものが多いため、値段は比較的高価になりますが、料理やスイーツに良質なオイルを直接かける楽しみ方も可能です。組み合わせ次第で、いつもの料理を美味しくさせるだけではなく、ひとふりで栄養価や健康効果をアップさせることから注目が高まってきています。

今回は代表的な「ナッツオイル」の素材、製法(焙煎・搾油・濾過など)、そして料理とオイルの上手な組み合わせ方について、「FRESCO(フレスコ)」の搾油師・シニアオイルソムリエの福島三知子さんにお話を伺いました。

シニアオイルソムリエが解説!「ナッツオイル」の実力

「ナッツオイル」は植物油のひとつです。植物油は、主に植物の種や仁などを圧搾して作られますが、種子には植物が発芽してから育つ過程で必要とされるエネルギーや栄養素がたっぷりと詰まっています。
植物油の中でも「ナッツオイル」は、健康維持や成人病予防に欠かせないとされる「オメガ3・6・7・9」など、貴重な栄養素が特に豊富なため、栄養効果の高い万能オイルのひとつとされています。植物の生命力が凝縮された「生きたエッセンス」と称されるほどです。

また、「ナッツオイル」の魅力は、いつもの料理にオイルそのものを加えるだけで違った風味が楽しめたり、加熱に強いオイルならスパイスやハーブと合わせてグリル料理の下味として加えるなど、レシピの幅も広がります。

オメガ7が豊富でサラリと軽い「マカダミアナッツオイル」

マカダミアナッツとマカダミアナッツオイルの画像

マカダミアナッツを搾って作る「マカダミアナッツオイル」は、ナッツ特有の香りがほのかにあり、油なのにサラリとして軽く、あっさりとした味わいが特長です。数あるナッツオイルの中でも、風味の良さなどの理由で人気のオイルです。

また、「マカダミアナッツオイル」には世界的に注目されているオメガ7をたっぷりと含んでいることが最大の特徴です。なかでも、オメガ7系の脂肪酸であるパルミトレイン酸は、血管壁を強くすることから、美肌効果を高めるインナービューティオイルとも呼ばれています。また、健康面ではインスリンの分泌を促進する効果があることから、高血糖や糖尿病予防などになると注目されています。

【オススメの料理】

マカダミアナッツオイルは熱に強いため、香りを活かした料理との相性が抜群。ソテーした野菜や鶏肉・豚肉によく合います。また、デザートオイルとしてアイスクリームにそのままかけたり、バターコーヒーのバターの代用品として入れるのもオススメです。
パルミトレイン酸は融点が高い脂肪酸なので、冷蔵庫に入れると結晶化し風味を損なう可能性があるため、オイルは冷暗所で保管するように気をつけましょう。

<かぼちゃのマッシュ>

かぼちゃのマッシュの写真

加熱して柔らかくしたかぼちゃを好みの粗さに潰して、生クリームやバターの代わりに、マカダミアナッツオイルだけをかけてマッシュ。いつもと違った風味が楽しめます。

芳醇な香りにうっとり!「ピスタチオオイル」

ピスタチオとピスタチオオイルの写真

ピスタチオは「ナッツの女王」とも称されるほど栄養価が高く、抗酸化作用の高いビタミンA、ビタミンE、βカロチンやレスベラトールなどのファイトケミカル、鉄や亜鉛などミネラルが多く含まれています。
ピスタチオの実を搾って作る「ピスタチオオイル」は、数あるナッツオイルの中でも突出した豊潤な香りと奥行きのある風味が特徴です。また、オメガ9のオレイン酸を多く含むことから悪玉コレステロールを減少させる効果があり、心筋梗塞や脳梗塞などの生活習慣病の予防に効果的と言われています。

【オススメの料理】

「ピスタチオオイル」の香ばしさを活かして、鶏胸肉や豆腐、モッツァレラチーズ、白身魚のカルパッチョなど淡白な食材と合わせるのがオススメ。塩とピスタチオオイルだけでも十分にリッチな味わいが楽しめます。
オイルの保管は冷蔵庫の中でOK。

<手作り鶏ハムのアボカドトマトサラダ>

手作り鶏ハムのアボカドトマトサラダの写真

じっくりローストした鶏むね肉に、プチトマトやアボガド、バジルを和えて塩・黒胡椒・ピスタチオオイルで味付け。ドレッシングではなく調味料とオイルだけを使うのがポイント。

エレガントな甘さと香ばしさ「ヘーゼルナッツオイル」

ヘーゼルナッツとヘーゼルナッツオイルの写真

ヘーゼルナッツはアーモンドやカシューナッツと並んで、世界三大ナッツのひとつに数えられる人気のナッツです。「ヘーゼルナッツオイル」は、上品な甘さとビターな香ばしさが特徴です。オメガ9を代表とするオレイン酸の含有量が極めて多く、悪玉コレステロールの増加を抑制する効果があり、動脈硬化やメタボを予防する効果が。また、酸化に対する安定性があり、体内における過酸化物の発生が抑える効果があります。

【オススメの料理】

加熱に強いオイルなので、ローストした豚肉の下味として使うのもオススメ。セロリ・ルッコラ・春菊など味の濃い野菜との相性も抜群です。また、シフォンケーキをヘーゼルナッツオイルで作ると香り高いいスイーツに!
オイルの保管は冷蔵庫の中でOK。

<ハーブとスパイス、ヘーゼルナッツオイルの黒豚ロースト>

ハーブとスパイス、ヘーゼルナッツオイルの黒豚ローストの写真

ローズマリーと塩・胡椒・ヘーゼルナッツオイルに漬け込んだ黒豚肉と野菜をシンプルにオーブンでロースト。シンプルなだけに素材の味をしっかりと味わうことができるおもてなし料理に!

ビタミンEとファイトケミカルたっぷりの「アーモンドオイル」

アーモンドオイルの写真

ナッツの中でも多くの人にもっとも馴染みのあるアーモンド。その仁で絞った「アーモンドオイル」はクセがなくアーモンド特有の豊かな香りとまろやかな旨味が特徴。
抗酸化作用のあるビタミンEのほか、ポリフェノールやカロチノイドなどのファイトケミカルが凝縮され、オレイン酸やリノール酸などの不飽和脂肪酸も豊富に含んでいることから、抗酸化作用と合わせて血管・血液循環を正常に保つ働きにも注目されています。

【オススメの料理】

アーモンドオイルの豊かな香りとまろやかな旨味は、どんな料理やスイーツともマッチ。パンに塗って焼くだけで、アーモンドの香りいっぱいのラスク風トーストのできあがり。
オイルの保管は冷蔵庫の中でOK。

<牛肉とセロリの塩きんぴらマリネ>

牛肉とセロリの塩きんぴらマリネの写真

アーモンドオイル、米酢、レモン汁、粗びき黒コショウでマリネ液を作る。細切りにしたセロリをアーモンドオイルで炒め、先に炒めておいた細切りの牛肉と合わせ、マリネ液と和えて黒コショウをふったら完成。

香ばしさと甘みのある「くるみオイル」

くるみオイルの写真

くるみの殻を割って、中の仁を搾って採る「くるみオイル(ウォールナッツオイル)」。中でもFRESCOのくるみオイルはフランス産のくるみを使っているため苦みが少なく、まるでキャラメリゼのような甘みが特徴的です。くるみオイルには脂肪肝や動脈硬化の予防に効果的とされるオメガ3が多く含まれているため、コレステロールや中性脂肪を下る効果があります。ビタミンやミネラル、くるみポリフェノールなど豊富な栄養素が摂取できるまさにウェルネスオイルです。

【オススメの料理】

くるみオイルは和食との相性が抜群。出汁とオイル、塩、レモンでマリネ液を作り、お刺身や肉、野菜と和えるあけでも味わい深いメニューになります。
くるみオイルは冷蔵庫保存が必要です。

<蒸し鶏のめかぶとオクラねばねば和え>

蒸し鶏のめかぶとオクラねばねば和えの写真

くるみオイルと醤油、すりおろした生姜のマリネ液を用意。蒸した鶏胸肉を冷まして割き、塩もみして茹でたオクラとネギを小口切りにし、すべての材料とマリネ液を和えれば出来上がり!

まとめ

シニアオイルソムリエの福島さんのお話から、良質な「ナッツオイル」には栄養素が豊富で、その健康効果が注目されていることがよくわかりました。また、ナッツオイルには、ナッツの種類ごとにそれぞれ風味が異なり、生食が向いているもの、加熱が向いているものなど特性に違いがあるので、料理に合わせて使い分ける楽しみがあります。
今後は、味わいもよく、風味も豊かなナッツオイルを取り入れた、ヘルシーな料理を提案していく飲食店が増えていくかもしれません。家庭では、いつもの料理に少しナッツオイルを加えるだけで、違った風味や香りを楽しむことができるので、色んなレシピをぜひ楽しんでみてください。

<取材協力>

搾りたてオイル専門店「FRESCO(フレスコ)」
搾油師・日本オイル美容協会認定 シニアオイルソムリエ 福島三知子さん

2017年7月に食用油脂製造業の許可を得て、搾りたてオイル専門店「FRESCO」をオープン。ナッツ系オイルを中心に、大阪市内の工房ですべて手作業による食用オイルを製造販売。

オンラインショップ 搾りたてオイル専門店「FRESCO」
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