なすやキュウリなど複数の野菜とぬか床の写真

ぬか漬け」をはじめとする漬物の種類について、東海漬物株式会社「漬物機能研究所」で漬物の調査・研究・商品開発を長年行っている“漬物博士”小野 浩さん(農学博士)にお話しをうかがいました。

白衣姿の漬物博士の写真

“漬物博士”として活躍する東海漬物 漬物機能研究所 要素技術開発グループ グループ長の小野︎ 浩さん(農学博士)。専門は発酵学、応用微生物学。漬物機能研究所のサイトにさまざまな研究成果と論文が公表されています(写真提供:東海漬物)

日本の四季と風土が育んだ、多様性に富む「漬物文化」

小野さんによれば、日本の漬物は「JAS(日本農林規格)法」の分類を基準にすると、以下の10種類に大別されるとのこと。

(1)ぬか漬け (2)しょうゆ漬け (3)かす漬け (4)酢漬け (5)塩漬け (6)みそ漬け (7)からし漬け (8)こうじ漬け (9)もろみ漬け (10)赤とうがらし漬け

さらに、「酢漬け」ひとつとっても、楽京(らっきょう)、お寿司に添えられるガリ(しょうが漬け)、紅しょうがなどさまざまな種類があります。それをさらに細分化していくと明確に数値化するのが難しいほど、数えきれない種類に!

漬物機能研究所のサイト内にある「漬物探訪」のページでは、日本各地とアジアの漬物の多彩なバリエーションが紹介されています。ご興味のある方はぜひご覧ください!

海外でも、欧米のピクルス、韓国のキムチ漬けなどの漬物文化がありますが、日本ほどバリエーション豊かな漬物を食べる民族は非常に珍しいそうです。その理由を小野さんは次のように分析します。

  • 日本には春夏秋冬の四季があること
  • 日本人は農耕民族であること
  • 日本では作物が収穫できない冬季に備え、食物を長期保存する必要があったこと

つまり、春夏秋に収穫した多彩な農作物を、作物が育たない冬を乗り越えるために保存して食べよう!という「知恵」が、漬物をはじめとする発酵文化を生み、日本各地の風土や特産物に合わせて独自の発展を遂げていったのです。漬物は日本人の「知恵」の象徴なのですね!奥深い!

10種類の漬物が丸皿に乗っている写真

「ぬか漬け」だけでなく、数えきれないほど多様性に富んだ漬物。日本の食文化を支えています。

「ぬか漬け」が誕生したのは精米技術が発達した江戸時代

「日本最古の漬物」として記録が残っているのは、なんと奈良時代(長屋王の大邸宅跡から発掘された木簡に漬物について記載あり)。そんな気の遠くなるほど大昔から日本人が漬物を食べていたなんて、びっくりです!

「ただ、その当時の漬物は、海水で野菜を漬けた塩漬けや粕漬けのルーツとなるもので、ぬか漬けを食べるようになるのはもっと後になってからです」と小野さん。

では、「ぬか漬け」の歴史はいつ始まるのでしょうか?
「ぬか漬け」は米ぬか・塩・水を混ぜ合わせた「ぬか床」で野菜を漬けたものですが、「ぬか漬けを食べるようになったのは江戸時代、精米技術が発達して玄米から米ぬかを分離できるようになってからだと考えられています。ぬか漬けって、漬物の中では比較的、歴史が浅いんですよ」と小野さん。

“漬物博士”として10年以上にわたり全国各地を訪ね、漬物文化を発掘・研究している小野さん。240年以上も前から代々受け継がれてきた老舗旅館の“レジェンドぬか床”に出会ったことがあるそう。

「さすがに“しょっぱい”のでは・・・と覚悟して漬物を口にすると、塩辛くなく香りもいい。愛情深く手入れを続ければ、ぬか漬けはいつまでも食べられることを実証してくれたぬか床でした」と小野さんは語ります。

稲穂とぬかの写真

玄米を精白するときに出る外皮や胚の粉が「ぬか」。「ぬか漬け」にかかせない「ぬか床」の主成分です。


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