ワインで乾杯

ワインについての知識が深い消費者も増え、赤か白かロゼか、どこのワインか、ぶどうの品種は何か、といったこと以外に、最近ではワインがどう作られているかに関心が向けられるようになっているようです。

特にいま話題なのは「自然派ワイン(仏語:Vin nature,ヴァン・ナチュール)」。

このところ、自然派ワインを売りにする飲食店やワイン店が増えていますので、皆さんも、「自然派ワイン」「ビオワイン」「有機ワイン」「無添加ワイン」……きっとどれかは口にしたことがあるのではないでしょうか?

そもそも「自然派ワイン」の定義って?

「自然派ワイン」「ビオワイン」といった言葉に明確な定義はなく、使い分けも曖昧なのが実情です。

「ビオ」という言葉は「バイオ」のフランス語。フランス語と英語をミックスした「ビオワイン」という造語を、日本のワイン界は好んで使ってきましたが、これは国際的には通じない用語です。

「自然派ワイン」という表現は、可能な限り自然に寄り添い、自然の力を存分に引き出せるように作られたワインに使われることが多いです。ぶどうの底力を引き出し、それを最大限に生かしてボトリングをされているものが多いため、味わいがとてもピュアだったり、パワフルだったり、それまでのワインに持っていたイメージを覆してくれるのが大きな魅力です。

また味はもちろんのこと、土地や環境のことを考え手間暇かけて作られているということが、消費者の心をくすぐるのも事実でしょう。

では、なにをもって「自然派ワイン」と言うか?
それはぶどうの栽培方法にのみ注目して考える場合と、さらに醸造方法まで含めて考える場合、大きく二つに分けられます。


手に持ったぶどう

<ぶどうの有機栽培について>

ぶどうの有機栽培農法にはいくつか方法がありますが、EU法では厳密な規定を3年以上守ってぶどうを栽培した場合に認証資格を得ることができます。この農法により生産されたぶどうのみを使用しワインを作った場合、「有機ワイン」との表記が可能となります。

有機ワイン先進国のヨーロッパでは、「有機ワイン」にもさらにいくつかの分類があります。例えばフランスでは以下のようになっています。

  • リュット・レゾネ=減農薬農法。農薬や化学肥料の使用を最小限にとどめたもの。有機ワインとは表示できない。
  • ビオロジック=殺虫剤、除草剤、化学肥料の使用をしない。いわゆる有機農法。
  • ビオディナミ=ビオロジックの一種。哲学者シュタイナーの唱えた、月や天体の運行に合わせた農作業を行う農法。

自然に寄り添うように作られている「自然派ワイン」の中には、有機栽培されたぶどうのワインでないために「有機ワイン」とは表記できないものもあるのです。

<醸造方法について>

ぶどうの栽培方法の他、醸造方法において問題になるのが、亜硫酸塩の使用量と、酵母の種類の違いです。

亜硫酸塩は微生物の活動を抑制し、かつワインの酸化を防ぐため、古代ローマ時代からワイン醸造に必要とされてきているものです。しかし、この亜硫酸塩の添加量を極力抑える作り手も出てきました。

同時に、一般的に使われる培養酵母ではなく天然酵母を使うものや、加熱殺菌や香料の添加などを控えるワインも多くなっています。

こうした醸造方法をとっているワインや、有機ワインを大きく括って「自然派ワイン」と呼んでいることが多いと考えましょう。


ワインと窓

亜硫酸塩について知っておきたいこと
特に懸念されるのは、ワイン市場で亜硫酸塩が悪者にされすぎることです。現在、亜硫酸塩というキーワードで検索をかけると、頭痛を引き起こす、アレルギーを起こす人がいる、発がん性があるといったネガティブな側面ばかりがクローズアップされているのがわかります。
しかし、特に国際的な流通に乗るワインについては、亜硫酸塩の添加は必要不可欠のものであると同時に、ワインに使用される亜硫酸塩の量はごくわずかで、昨今ブームのドライフルーツに添加される亜硫酸塩に比べ、添加の割合は10分の1以下程度ということを知っておきたいものです。


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