鏡餅のイメージ画像

日本には、さまざまな年中行事があります。年の初めを彩るお正月飾りのなかでも鏡餅は、もっとも一般的なもののひとつ。その飾り方や飾る時期、そしてそもそもの由来や意味についてひも解いてみましょう。

鏡餅を飾るのはなぜ?

元旦には年神様(としがみさま)という神様が、一年の幸福をもたらすために家庭にやってくるとされています。その年神様の依り代(よりしろ)(※1)となるのが鏡餅。
一連のお正月行事とは、その年神様を迎え入れてお祝いし、たくさんの幸せを授けてもらうためのものなのです。
(※1)神霊が依りつく対象物のこと

床の間に着物の女性が鏡餅を飾る画像

◆なぜ「鏡餅」というの?

古来より、「鏡」には魂が宿るものだと信じられてきました。鏡餅の餅が丸いのは、鏡のかたちに由来する、あるいは人間の心臓の形を表している、と言われています。また、大小2つの餅を重ねているのは<円満に年を重ねる><縁起がいい>という意味が込められています。
そして、日本人にとって「稲」は特別なものでした。稲は一年という長い月日と労力をかけて育てられます。だからこそ、毎年一回ずつ収穫される新しいお米を食べることで、生命力を得られるとされてきました。そんなお米をついて固めた「餅」は、生命力を倍増させるものとして特に重要視されてきたのです。
このように、新しい年に良い縁を運んでくる年神様に入っていただくための相応しい器(依り代)として「鏡餅」が親しまれてきました。

◆いつから始まった?

鏡餅には「歯固め」という意味があり、鏡開きは「歯固めの儀(式)」に由来しています。
歯固めの儀とは、長寿を祈願して正月に鏡餅などの固いもの(容易に噛み切れないもの)を食べる習わしのこと。年齢の「齢」にも「歯」という字が使われており、年を重ねるには丈夫な歯が大切だと古くから考えられてきました。
正月行事は古い一年に区切りをつけて、一度リセットして、新たな年を始める節目になるのです。

鏡餅はどこに飾る?いつからいつまで飾るの?

◆飾る場所は?

以前は、神棚や床の間が基本とされていました。鏡餅は、年神様に来てもらうのにふさわしい場所に飾るもの、と考えられていたからです。現代では、リビング・玄関・台所など、年神様に来てほしいところに飾るのが良いとされています。

床の間に飾られた鏡餅の画像

◆鏡餅の飾り方は?

基本的な飾り方を紹介します。まず四方紅を敷きましょう。その上に、紙垂、裏白、譲り葉と重ねていきます。鏡餅をのせたら、昆布や橙で飾ります。飾りには縁起の良いものが選ばれるので、串柿、勝栗など家や地方によって特色がみられます。
それぞれの飾り物には正月飾りにふさわしく、次のような意味が込められています。

名称 祈願・意味するもの
四方紅(しほうべに) 四方からの災いを退ける、繁栄
裏白(うらじろ) 長寿、末永い繁栄
譲り葉(ゆずりは) 家督相続、家系の存続
御幣(ごべい) 魔よけ、繁栄
橙(だいだい) 代々の子孫繁栄
昆布 よろ「こぶ」、子孫繁栄(子生・こぶ)
串柿 日本の三種の神器をあらわす(「鏡:鏡餅、玉:橙、剣:串柿」)

「家族の繁栄」「災いをはらう」「長生きをする」という願いが、今も昔も変わらない共通の想いなのです。

◆飾る時期は?

鏡餅を飾るタイミングは、12月28日までに飾るか、遅くとも30日には飾るものとされています。12月29日は「9」が苦しみを表すとして、31日は一夜飾りになるとして、一部の地域を除いて避けられています。
1月11日、または松の内とされる15日まで飾られたあと、供えていた鏡餅を下げて鏡開きをします。

鏡餅をおろして食す「鏡開き」とは?

◆鏡開きとは?

鏡開きとは、神様に供えていた鏡餅をさげて食べる年中行事のこと
昔は1月20日に行われていましたが、徳川三代将軍・家光と月命日が20日であるため、現在は、その日を避けて1月11日に行われることが多いとされています。
また、お供えから下げた餅に包丁を入れることは「切腹」を連想することから禁忌とされていたため、多くの場合は木づちや手で割られていました。しかしこの「割る」という言葉も縁起が悪いので、末広がりを意味する「開く」を使うようになりました。もっとも、現代では中に個包装パックの餅が入っている鏡餅が多数流通していますので、昔ながらの鏡開きが行われる機会はぐんと減っています。

割れた鏡餅の画像

◆飾った鏡餅を「いただく」

鏡開きでいただくお餅(鏡餅)は、年神様の力が込められている特別なものです。そのお餅をいただくことで、餅の持つパワーに加えて年神様のご利益をも受けられます。こうして鏡開きは、一年の無病息災を祈願する行事として親しまれ続けているのです。

まとめ

毎年何気なく飾っていた鏡餅、実は一年のはじまりに欠かせない年神様が宿る大切な居場所。
そして、ただ飾るだけではなく時期がきたら鏡開きをして、雑煮やぜんざいなどにしてすべていただくことが大事なんですね。鏡餅を食べることで年神様より力を授けてもらい、一年の家族の無病息災を願います。
定番料理だけでなく、チーズをのせて焼く餅ピザやグラタン、ふわもちの食感も楽しい餅入りパンケーキなどアレンジレシピも豊富。家族の好みに合わせて工夫して、鏡餅を残さずおいしくいただきたいものですね。

<参考文献>