料亭では、座敷でのふるまい方、服装、料理のいただき方にもさまざまな作法やルールがあります。
- 上座・下座の違い
- 料理に箸をつける順番
- あけたお椀のフタを置く位置
など、細かいことを挙げればキリがありません。
しかし今回は、「これを理解しておけば大丈夫」という最低限のポイントを実際の現場で働いていた板前の視点から
- 基礎知識
- 服装
- 料理の種類
- 予約の際に伝えること
- 食事中のマナー
- 支払い方法
の6つの項目に分けて説明します。
料亭に行く前段階の基礎知識
まず、料亭に行く前に知っておきたい基礎知識が2つあります。
料亭とは
そもそも料亭と名乗るお店に明確な基準はありません。以下、Wikipediaより抜粋します。
料亭(りょうてい)とは、主に日本料理を出す高級飲食店である。企業の接待、宴会や商談、要人や政治家の密談、タレント、芸能人の打ち合わせ等に使われることが多い。
<中略>
原則として、予約して利用する。料理は和食が中心で、個室で供される事が多い。食事をしながら、酒類を飲み、歓談したり芸妓の芸を楽しんだりする。
<中略>
明確な基準がないために、現在では、料亭という言葉の高級感や響きの良さから、通常の日本料理店が自ら「料亭」と名乗る例が非常に多いが、それらは本来の料亭ではない。
- 芸姑を呼べる
- 料理業組合に参加している
- 日本庭園を有している
など、さまざまな判断基準はありますが、会合や接待のために使われる個室対応の高級日本料理店を“料亭”と指すことが多いです。
会席料理と懐石料理の違い
“かいせき”料理には2つの意味があります。
- 会席料理=お酒を楽しむための料理
- 懐石料理=お茶を楽しむための料理
料亭で提供されるのは会席料理で、会合や接待の場を円滑に進めるために、各個室を担当する仲居さんが料理や飲物の配膳を担当してくれます。
料亭で食事する際の服装
料亭に行く際の格好に明確なルールはありません。
実際にデニムパンツなどのカジュアルな服装で来る方もいらっしゃいますが、その料亭の常連客の方が多いです。
不安に感じる方はスーツやビジネス寄りの服装で行く方が無難といえます。
また、和室の場合は履物を脱ぐことになるので、事前の確認が必要です。
香りの強い香水や整髪料は控える
日本料理は繊細な香りを楽しむものでもあるので、匂いの強い香水は食事自体の満足度を下げます。
喫煙に関しても一緒で、部屋で灰皿を用意してくれているお店もありますが、ゲストの方が吸わない限りは個室での喫煙も避けたほうが無難でしょう。
喫煙者の方に対しての配慮ももちろん用意されているので、担当の仲居さんに聞いてみるのが一番です。
料亭で提供される料理の種類
料亭で提供される料理には、一般的に以下の3種類があります。
会席料理
一般的に会合や接待で使われるのは会席料理です。
以下のような順番で料理が順番に提供されます。
- 先付け
- 前菜
- お椀
- お造り
- 焼き物
- 煮物
- 蒸し物
- お食事
- 甘味(デザート)
料亭での料理の提供の順番や法則も近年徐々に柔軟になってきているので「計◯品」など、順番などが関係ない料亭もあります。
アラカルト(単品注文)
一品注文の方法です。お店毎に用意されているものは違いますが、順番を考えて構成されている会席料理とは違って、自分たちの好みで選ぶことができます。
しかし、準備に時間のかかる料理にたいして事前の仕込みができないので、注文後に時間がかかる場合も多くなります。
お弁当(松花堂・お重)・定食
料理が順番に提供される会席料理とは違い、出し切りのスタイルで提供されます。
お昼でゆっくりと時間の取れない場合などにはこういったスタイルで、食事を早めに済ませて打ち合わせに集中することも可能。
お子様御膳
店舗によっては松花堂弁当(四ツ仕切りのお弁当)のようなお子様用に用意されたメニューがある場合もあります。
無理に大人に合わせて会席料理にする必要はないので、電話で予約する際に「◯歳くらいの子供がいる」と伝えてみると、お店毎に用意してあるメニューをだしてくれます。
お子様がいる場合の配慮
店舗によっては、お子様がいる場合には部屋に飾ってある高級な置物や掛け軸を事前によけておくこともあります。
お子様がいる場合は事前にちゃんとお伝えした方が、後のトラブルを防ぐことができるので、遠慮せずに予約の際に相談しましょう。
料亭の予約で伝えること
料亭で予約をする際に確認しておきたいのは以下の4つです。
会社名や会合・接待の目的
料亭には政界の方や大企業の方もいらっしゃいます。
同業他社の方と入店時間や退店時間がかぶらないように配慮もしてくれるので、事前にお伝えしておけば当日の席や時間を配慮してくれます。
アレルギーや信仰上の食事の特徴
料亭の会席料理では、献立が決まっているのがほとんどなので、基本的には献立の内容は変更されません。
しかし、甲殻類のアレルギーやベジタリアンの方などが同席される際は、一部もしくは全体の献立構成を変更して頂けることもあります。
予約の際にお伝えしておけば、当日までに対応するための変更献立を用意してもらえるので、事前に料亭にお伝えしましょう。
ゲストの方にも事前に食事に関しての要望を伺っておけば、当日急に対応して頂くこともなくなります。
お土産・タクシーなどの伝言
ゲストの方にお渡ししたいお土産がある際も、予約時にお伝えしておけば、お渡しするタイミングの相談などもできます。
予約時間前に、はやめに料亭に足を運んでお土産を預かってもらっておくことも可能。
また、ゲストの方の帰りの手段を確認しておけば、タクシーを手配して頂くこともできます。
ゲストの方がいらっしゃる前にタクシーチケットを仲居さんにお渡ししておけば、支払いの面やゲストの方の退店後のサポートまで段取りを組むことができます。
料金の確認
料亭では、料金帯に合わせて組み立てた献立の会席料理を仕込むので、基本的には事前予約は必須です。
席を予約する場合でも料金が変わったりします。一般的に以下の3つが料金として計算されます。
飲食代
会席料理・アラカルト・お弁当などの食事と、お酒などの飲物の基本となる料金です。
席料
選んだ部屋によって料金を請求される場合もあります。
この場合は一般的には◯%などではなく、固定の金額であることが多いです。
価格帯としては、以下の順番で席料は高くなります。
- 個室(和室)
- テーブル席
- カウンター席
サービス料
各席でのサービスにかかる料金です。
料亭では、一部屋に1人の担当の仲居さんがつき、一般的に、会席料理に対して10%前後のサービス料が加算されます。
割高に感じるかもしれませんが、スタッフさんが入れ代わり立ち代わり入ってくることはないので、伝達事項も伝言ゲームにならずに行き違いを防ぐことができます。
不安であれば、まず一度料亭に足を運んでみる
また、料亭をはじめての利用するのに、大切なゲストを招いた接待で使うことに不安を感じることも多いと思います。
そんな場合は、お昼の時間帯に一度実際に足を運んで“お試し”として食事をしてみるのがオススメです。
お昼の時間帯は、比較的安い会席料理や、お弁当・定食スタイルの料理の提供をしているお店もあるので、金銭的な負担も少なめにすみます。
その際に、実際に利用したい場面のイメージを接客の方にお伝えすれば、お店毎の的確なお返事を頂けるでしょう。
料亭での食事中のマナー
言い出せばキリがありませんが、「音を立てて食べる」「料理に箸を刺す」などしなければ基本的に“恥をかく”ということはありません。
細かいマナーに関しては多くの情報がありますが、基本的に相手が不快に思うような行動でなければ大丈夫です。
慣れないうちに細かいルールに緊張して話の内容に集中できないよりは、相手もリラックスできるように自分もリラックスすることが大切です。
料亭での支払いの方法
基本はクレジットカード・現金での支払になりますが、企業の方であれば請求書を起こし、後日会社に送って頂く方法もあります。
請求書起こしは何度も通っている企業の方が使う方法なので、一般的な支払い方法はクレジットカードか現金です。
スマートに支払いを済ませたい場合は、食事が落ち着いた頃に仲居さんにクレジットカードをお渡しするのが一番でしょう。
料亭での豆知識
来店した際の食事やお酒の好みや食事のペースなどは料亭内で記録が残してあります。
こうした細かい配慮が料亭ならではのキメ細かいサービスと言えます。
料亭に行く際のポイントまとめ
料亭で過ごす時間は、ただ美味しい食事を頂けるだけではなく、入店前から退店後までの配慮が行き渡っています。
大切な会合のときは、普通の居酒屋さんで食事をするより値段は高くなりますが、安心してゲストの方をおもてなしすることができるでしょう。
また、初めて料亭を利用する際は緊張するかもしれませんが、仲居さんも配慮してくれますし「わからないことがあれば素直に質問する」くらいの気持ちで、ある程度気軽に足を運んでも大丈夫な空間です。
敷居の高い空間に感じるかもしれませんが、周りの迷惑にならないように食事を楽しむことができれば、それで問題はありません。
もし一度足を運んで、日本料理のマナーや由来に興味が出てきた場合は、少しずつ勉強していけばいいのだと思います。
接待・会合・お祝い事など、大切なゲストの方との食事の時間を心置きなく楽しむために、まず一度、実際に料亭の空間を体験してみてはいかがでしょうか。