和包丁

和包丁」とは、和食の調理に使われる包丁のこと。

和食の調理には「生(切る)、焼く、揚げる、煮る、蒸す」という5つの調理法を指す「五法」という言葉があります。

その中でも「生」で代表される「刺身」などは、魚の細胞を押しつぶさないように、切り方に高度な技術を必要とされます。
和食において、和包丁は特に大切な道具なのです。

今回は、和食で最も大切な切る技法を支える「和包丁」の基本を解説していきます。

「和包丁」とは?

和包丁一覧

日本で使われている多くの包丁は、3種類に分類されます。

  • 和包丁
  • 洋包丁
  • 中華包丁

日本で古くから使われてきた和包丁に対して、洋包丁は明治時代以降に洋食とともに輸入され、普及しました。現在は日本でも優れた洋包丁が作られています。

和包丁と洋包丁の違いは、刃の付き方にあります。
和包丁の最大の特徴は「片刃」であること。

表側には段があり刃先が薄くなっていますが、裏側はほぼ平面です。(身離れが良くなるよう「裏スキ」というくぼみがあります)

洋包丁といえば牛刀のイメージが強いですが、洋包丁は表も裏も同じ「両刃(もろは)」のつくりです。
中華包丁は1本で肉、魚、野菜を切るほか、潰したりもできるような包丁で、洋包丁の一種ともいえます。

和包丁が片刃である大きなメリットは2つ

  • 切断面が綺麗になる
  • 切った材料が包丁の形に沿って、離れやすくなる

材料に対して刃が垂直に入ることで断面がキレイに仕上がります。

両刃で作られた洋包丁は、刃が材料の切断面に対して垂直に入るわけではないので、切断面も片刃包丁に比べると少々雑な仕上がりに。
その分両刃の包丁は刻みものや肉を切ったりするときなど、手早く材料を切り分けることに向いています。

まな板の上で魚のブロックを包丁で切り付けている

和包丁における主な3つの種類分け

つづいて、主な和包丁の種類3つ(出刃包丁、刺身包丁、出刃包丁)について説明していきましょう。

1)出刃包丁

出刃包丁

刃元が厚く、重厚。
魚の頭を落としたり、三枚におろしたり、うろこをとったり、骨を叩き割ったりと、丸︎のままの魚をさばく場面では必要となる包丁。魚の大きさにあわせてサイズが変わるので、使用目的によって使い分ける必要があります。

目安
刃渡り 120mm〜210mm程度
価格 10,000円〜

出刃包丁の種類

◎小出刃

小出刃包丁

目安
刃渡り 90mm〜120mm程度
価格 5,000円〜

◎本出刃

本出刃包丁

通常の出刃包丁に比べ、重みもあり、刃も大きい出刃包丁。鮭、鰤、鰹、メジマグロなど10kgを越えるような大型の魚にも対応可能。

目安
刃渡り 210mm〜
価格 20,000円〜

◎身卸し出刃包丁

身卸し出刃包丁

「刺身包丁」と「出刃包丁」の中間のような包丁。
三枚に魚を卸、そのまま切り身として切りつけも可能です。

目安
刃渡り 180mm〜270mm程度
価格 15,000円〜

2)刺し身包丁

刺し身包丁

刃が長く、細い。
刺身を切るために設計された、日本刀のような見た目をした包丁。「お造りを引く」という言葉があるように、引いて切るために刃渡りが長く作られています。地方によって呼び方や形に違いがあります。

刺し身包丁の種類

◎柳包丁(柳刃包丁)

柳刃包丁

関西型。先端の尖っている部分が柳の葉に似ているからこう呼ばれています。

目安
刃渡り 210mm〜300mm程度
価格 20,000円〜

◎蛸引き包丁

蛸引き包丁

関東型。先が尖っておらず、刃全体が細長い長方形になっています。現在ではほとんど見かけません。
*柳包丁と蛸引き包丁が刺身包丁として代表的ですが、現在、日本に存在する刺身包丁のほとんどは柳包丁です。

目安
刃渡り 210mm〜300mm程度
価格 20,000円〜

3)薄刃包丁(菜切り包丁)

菜切り包丁

菜切包丁の名の通り、野菜を切るために設計された包丁。
刃が薄く、切れ味がとてもよいのが特徴。千切りなどにも対応できるよう、刃はまっすぐになっています。関西と関東で型が異なりますが、基本的な刃渡りなどサイズ感に違いはありません。
片刃の包丁な上、刃が薄いため、日常的な手入れや研ぎ方に技術が必要とされています。

薄刃包丁(菜切り包丁)の種類

◎関東型の薄刃包丁

関東型の薄刃包丁

切っ先がまっすぐになっており、その四角い形は角型とも呼ばれます。

目安
刃渡り 240mm〜300mm程度
価格 10,000円〜

◎関西型の菜切り包丁(鎌形)

関西型の菜切り包丁(鎌形)

切っ先に丸みがあり、関東型よりも細工切りに向いています。鎌形薄刃包丁と言われることもあるようです。

目安
刃渡り 240mm〜300mm程度
価格 10,000円〜

番外編

他にも、特殊な和包丁をいくつかご紹介します。

◎剥きもの包丁

剥きもの包丁

小芋の六方剥きなどのために設計された細工包丁。
刃渡りは180mm程度のものが一般的。
薄刃包丁を小さくしたような形状で、細工作業をするために切っ先が尖っている。

目安
刃渡り 180mm程度
価格 10,000円〜

◎蕎麦切り包丁

蕎麦切り包丁

蕎麦を切るために設計された包丁。
重みで切る為、重厚であり、刃もまっすぐ。

目安
刃渡り 300mm〜330mm程度
価格 10,000円〜

まとめ

和包丁には、今回紹介したものの他にもまだまだ無数に種類が存在します。同じ種類の包丁でも、プロの料理人になれば、その人の体格や料理をする素材によって、刃渡の長さや大きさを使い分けることになります。

様々な和包丁

和食が世界に広まり、人気を集めるのにともなって、繊細で美しい和食の「切る」技術を可能にしている「和包丁」は、世界中の料理人からとても注目されています。

気になる包丁があった方はぜひ、東京であれば台東区にある「かっぱ橋道具街」、関西であれば難波にある「千日前道具屋筋」などの包丁専門店へ足を運んでみてください。自分の手や使い方にあった包丁をプロに選んでもらえるはずです。