こんにちは。クックビズ総研編集部の峯林です。
今、飲食業界では、うま~い地酒がそろう居酒屋が繁盛していたり、シャンパングラスで味わう日本酒バルが登場したりと日本酒ブームの兆し?!があります。

実は、日本酒業界は長い間、低迷しています。日本酒の製造量は1968年の142万1000リットルをピークに年々減少し、2009年には46万1000リットルにまで落ち込んでいます。また、全国津々浦々にある酒蔵数も1955年の4,021蔵をピークに年々減少し、現在では1600蔵(2010年)に激減。さらに30年後には350蔵にまで減少するといわれています。(※国税庁調べ)

峯林はビールよりワインより何より日本酒が大好きなのですが、今、日本酒の「最前線」はどうなっているのか?!本当にもうダメなのか?世界に誇る「SAKE」文化は消滅の危機なのか?日本酒の今を調査すべく、あるイベントに参加してきました!

低迷する業界に新風を!日本酒の小さな酒蔵が集うイベントが大ヒット

2014年4月29日(火)、昭和の日に開催されたのは日本酒のイベント「愛酒(あいしゅ)でいと」。会場は大阪市浪速区にある「ZEPPなんば大阪」。日本酒の酒蔵と大阪を中心とした飲食店がタッグを組み、日本酒を気軽にとことん楽しめるイベントです。

愛酒でいとポスター▲愛酒でいと ポスターのデザインテーマは「ドラゴンクエスト」!

“飲み仲間”文化復活!日本酒を盛り上げる女性たち

会場には一軒の飲食店とひとつの酒蔵を1チームとして「このお酒にこの肴」という自慢の銘酒&逸品が用意され、19のブースが設けられていました。興味のあるブースを回って、お酒や料理に舌鼓を打つというのがこのイベントのメインテーマです。

来場者は出店しているお店の常連さんが多いと聞いていましたが、会場は異様な人だかりと熱気。常連さんはもちろん、幅広い「飲み仲間」が集まっていました。年齢層は30代をメインに、20代から50代まで幅広く、カップルや親子での参加という方もいました。

愛酒でいと会場1

見たところ男女同じくらいの比率だったのですが、特に目についたのが、女性の来場者。中でも30代の女性たちです。これまでは「飲み仲間」といえば、男性同士の付き合いというイメージがありましたが、会場で声をかけた参加者の多くが、「自分の行きつけの飲み屋で知り合い、友達になり、常連店が参加するこのイベントに来た」という女性だったのには、おどろきました。

彼女たちは日本酒に対する知識も豊富で、質問すればお気に入りの酒蔵や銘柄を答えてくれます。その中の1人、かなりの「飲み歩き」通の雰囲気なホリエさんは、「以前なら1人で飲みに行ってもそれを誰かと共有できなかった。それが今は日本酒の話で盛り上がれる仲間がいて、すごく楽しい」と語ります。今回の『愛酒でいと』も仲間同士で盛り上がれるひとときをすごく楽しみにしていたとか。

若い人たちの「日本酒離れ」がいわれる今、日本酒という共通の『つながり』のもと、“飲み仲間”が形成され、その飲み仲間というネットワークが以前よりも幅広く、そして30代の女性にも浸透しているのです。

ホリエさんと呑み仲間たち▲「1人で行っても、イヤがらずにかまってくれるお店が好き」というホリエさん(右から2番目)と飲み仲間たち。
かなりの通な雰囲気のホリエさんのオススメは、神奈川県にある熊澤酒造の「天青」(てんせい)、落酒造の「大正の鶴」。
ぼちぼち農園仲間▲丹波市「ぼちぼち農園」の塩屋夫妻(左端)を中心とした飲み仲間たち。

「愛酒でいと」ヒットの裏側にある次世代を担う蔵元たちのエネルギー

飲食店でのお客さんとのつながりだけでなく、30代40代を中心とした酒蔵と飲食店とのつながりがこのイベントの特徴です。主催者の日本酒バー「うさぎ」店主 原口起久代さんに、今回のイベントの経緯とヒットの要因についてうかがいました。

ryouri aisyudeito▲日本酒に合う一品を各店が提供

「2008年当時、私は船場にある『天ぷら介(すけ)』というお店の店長をしていたんです。そのときに“もっと日本酒を置いてほしい”というお客さんの声がありました。それで関西で有名な酒屋さんの『山中酒の店』に通ったんですね。それが私自身の日本酒との出会いでした。」

原口さんは、山中酒の店に通いながら酒蔵を紹介していただいたり、酒蔵見学に行ったりするなかで、同じ30代で酒蔵を受け継いでいる蔵元さんが多いことが意外だったといいます。

「酒蔵って、ガンコな職人気質の杜氏のおじさんがいて、行っても相手にしてくれないようなイメージがあったんです(笑)。でも実際は全然違っていて、同世代の蔵元が気さくに迎えいれてくれた。酒蔵の蔵元同士も商売敵という感じは全然なくて、すごく仲が良かったんです。」

そんな同世代が運営する飲食店と酒蔵の仲間が集まって、日本酒を楽しめるイベントをしようとはじめたのが、この『愛酒でいと』。

愛酒でいと
お店に酒蔵とお客さんを呼んで始めた100人ほどの小さなイベントが口コミで広がり、2010年には600人、2012年には900人と、あれよあれよという間に規模が拡大。2013年には1200人を突破し、これ以上は手が回らないということで、原口さんは2014年の今年も1200人限定で開催したそう。

「本当にここまで大きくなるとは私自身思っていなくて、びっくりしています。ただこの人気は、日本酒がブームというのではないとは思います。それよりも、きちんと造られた日本酒が認知されてきた結果なんじゃないでしょうか。」

確かにここ数年、大手酒造メーカーではなく、小さな酒蔵の地酒を目にすることが増えています。特に、昔ながらの酒造りの手法をきちんと守った純米酒の価値が見直されています。

『愛酒でいと』のフィナーレを飾った蔵元たちの挨拶で登場した蔵元は、みんな30代~40代。日本酒という伝統文化を守りながらも、酒蔵の垣根を越えて、自分たちで業界全体を変えていこう、盛り上げていこうというエネルギーを感じました。

今回のイベントには、特典として、主催者 原口さん自らが参加酒蔵を取材したDVDが付いていました。そのパッケージのコピーには「日本酒作りに全身全霊を捧げる蔵人たちの熱い想いが無ろ過で詰まっています。」とのコトバがありました。

蔵元の挨拶

ポテンシャルの高い純米酒など、再評価のフィールド拡大に期待。

低迷する日本酒業界の中で、『愛酒でいと』のように、柔軟で若いエネルギーにあふれる酒蔵が蔵元同士でつながり、飲食店とつながり、お客さんとも直接つながる。その姿には、新しい時代の到来を感じさせます。

日本酒が大好きな私にとっては、全国津々浦々にある酒蔵がじっくりと時間をかけて醸す、風味も味わいも地域や作り手によってさまざまに異なる純米酒がたくさん造られていることは、単純に喜ばしいこと。日本酒をきちんと扱ってくれる飲食店が増え、ネット販売で各地の地酒が気軽に飲めるようになり、男女問わず飲み仲間とイベントに参加できるようになってきた今をシアワセな時代だなと感じています。

日本酒は奥の深い日本の伝統文化です。海外でも非常に高い評価を得ています。特に純米酒には「飲めば美味しさが分かる!」というシンプルなポテンシャルがあります。小さな酒蔵の地酒がマーケットを確保しはじめた今、そのポテンシャルにこそ未来への展望がある!そんな思いに包まれた『愛酒でいと』でした。来年も参加します!

「愛酒でいと」はこんなイベント!

30代後半以上にしか分からないベタベタなイベント名、昭和を代表するゲームをコンセプトにしたチラシやポスター。
決して多くの人間を惹きつける趣があるとはいえないそれらに(失礼)、完全前売りチケット制で告知や宣伝もフェイスブックとブログ以外にはほとんどなし。

しかも、チケット代2,500円に飲食代は別途。なのに販売から1ヶ月の時点でチケットが完売したという伝説のイベントが『愛酒でいと』です。
毎年“昭和の日”に開催ということで、ポスターやイベント名、さらに音楽なども昭和にちなんだ趣向を盛り込んでいるんですね。来年の『愛酒でいと』にも期待大!

【飲食店(関西)×銘酒リスト】

  1. 東心斎橋 ほおずき × 大正の鶴(岡山)
  2. 創作居酒屋ぶどう × 大倉(奈良)
  3. 小料理ともか × 玉川(京都)
  4. Kitchen 和(nico) × 貴(山口)
  5. SASAYA/居酒屋梅の湯 × 相模灘(神奈川)
  6. 奈良の美味いもん処よばれや × 北島(滋賀)
  7. 大阪焼きトンセンター × 大治郎(滋賀)
  8. 魚料理と純米酒 だんらん家 × 花巴(奈良)
  9. 宮崎名物もも焼き まんとく × 花垣(福井)
  10. 地酒と地魚の居酒屋 羅漢 × 原田(山口)
  11. サケとスミビとロシュタン × 菊鷹(愛知)
  12. 炭焼笑店 陽/さつま黒豚食堂 川崎商店 本店本舗 × 小左衛門(岐阜)
  13. 北浜 くくり × 美冨久(滋賀)
  14. 魚菜 ことわ × 文佳人(高知)
  15. 惣作料理 喜きつ × 一博(滋賀)
  16. 海の家 天六マッシュアップ × 酒屋八兵衛 (三重)
  17. おでんまる/bonbori × 天青(神奈川)
  18. もも焼き かわむら × 七本鑓(滋賀)
  19. スナックうさぎ × 鯨波(岐阜)/忠臣蔵(兵庫)

【イベント主催者情報】
日本酒うさぎ
大阪市中央区内本町2ー3ー8ダイアパレスビル本町一階107
06-6944-8899
http://blog.livedoor.jp/aishudeito/