
焼酎、ウォッカに続いて、世界で3番目に生産されている蒸留酒がブラジルの「カシャッサ(ポルトガル語:Cachaça)」。サトウキビを原料にして、ブラジルでは4,000以上のブランドが存在する国民酒とも言えるお酒です。今まではブラジル国内での消費がほとんどでしたが、近年は輸出が増加し日本でもカシャッサを扱うバーや量販店が増えています。
カシャッサとはどんなお酒か、そして暑い夏にぴったりのカシャッサを使ったカクテルレシピなど、日本カシャッサ協会会長の佐藤裕紀さんに伺いました。
目次
豊穣の大地ブラジルの国民酒カシャッサ
サトウキビを原料にした蒸留酒としてラム酒を思い浮かべる方が多いと思いますが、同じくサトウキビを原料としたカシャッサとはどんなお酒なのでしょうか。ブラジルの法律ではカシャッサを次のように定めています。
「カシャッサとはブラジルで生産されたサトウキビを原料とし、その搾り汁を発行させた、アルコール度数が38〜48度の蒸留酒。また製品1リットルに対して6gまで加糖したものも含める」
ブラジルで生産されるカシャッサは目的により、2種類のカテゴリーに分けられます。
- カシャッサ・インダストゥリアル (Cachaça industrial)
主に連続式蒸留機を使用し、大量生産を目的としている - カシャッサ・アルティザナウ (Cachaça artesanal)
小規模生産が中心で、芸術的なカシャッサを意味し、単式蒸留機を使用しハンドメイドされる
アルティザナウはブラジル全土に点在する小さな蒸留所で家内生産され、4,000以上の銘柄があると言われています。主な生産地は内陸部のミナス・ジェライス州、リオ・デ・ジャネイロ州、サンパウロ州、南部のリオ・グランデ・ド・スル州などとなっています。
日本ではカシャッサは1,000円~3,000円前後と比較的低価格で購入できるアイテムも増えましたが、プレミアムになると2万円を超えます。年々高品質のカシャッサが生産され、世界の著名な蒸留酒に並ぶ品質になっています!
カシャッサの多様性は、熟成に使われる樽によっても作り出されます。同じ蒸留酒でもバーボンなどがオークの木の樽を使うのに対し、カシャッサはオーク樽の他にブラジルの特産木を用いた40種類以上の樽が使われています。そのため、樽の違いによるバラエティに富んだ色や香りを楽しむことができます。
蒸留酒好きの日本人に合うカシャッサ
カシャッサは長期熟成しない、いわゆる「ホワイト」の状態で楽しめる他、熟成したまろやかな風味を、ゆったり味わうこともできます。「ブラジルで最もメジャーなお酒は、その幅広さから日本の食シーンとの相性も良い」と語るのは、カシャッサを約100種揃える「BAR Julep」のオーナーでもある佐藤裕紀さん。
「カシャッサは食中酒として楽しめます。ブラジル料理は肉、魚、豆、チーズ、フルーツなどの食材をふんだんに使い、日本人に馴染みやすい料理も多くあります。焼いた肉や魚料理はもちろんですが、天ぷらなどの油分を流すような飲み方もいけると思いますよ。」
ストレートで飲むのはもちろん、ソーダや氷、ライムを加えて飲むこともできます。また夏ならカシャッサを冷蔵庫で冷やして飲むのも良いそうです!
カシャッサのカクテルといえば「カイピリーニャ」
カシャッサの代表的なカクテルとして有名なのが「カイピリーニャ (caipirinha)」です。ブラジルのビーチサイドなどでもよく飲まれ、佐藤さんは「飲むと高揚感が感じられ気分が楽しくなる、前向きなカクテル」と表現してくれました。
作り方はいたって簡単!日本カシャッサ協会が推奨するレシピをご紹介します。
【カイピリーニャの作り方】
- ライム2分の1個をカットしグラス、又はシェーカーに入れる(形状は自由)
- 好みの砂糖を2tsp入れる(砂糖の量は好みで調整)
- ライムと砂糖をソカドール(潰し棒)で程よく潰す
- カシャッサを約45ml注ぎ、砂糖が溶ける程度に混ぜる
- 小さめの氷を入れる
- 全体を混ぜる、又はシェイクする
- マドラーを添えて完成
ライムの甘酸っぱさと、見た目の清涼感が夏にぴったり!お洒落な場面でワイン、ゆったりしたい場面にウイスキーやブランデーなど、それぞれお酒によってイメージするシーンがありますが、カシャッサはバーで楽しむ以外に、みんなでワイワイ楽しむ場面も楽しみの一つ。カイピリーニャはカシャッサとライム、お砂糖、氷を持っていけば作れてしまうので、BBQやビーチサイドなどのアウトドアにもおすすめです。
まずは定番の「51」から
ブラジルのバーには1,000種類のカシャッサが並んでいる店も珍しくないそうです。ブラジルに比べると飲める種類は限られますが、日本でもカシャッサを扱うバーが増えている他、量販店やインターネットでも購入することができるようになってきました。
どのカシャッサから飲むべきか、佐藤さんに代表的な3つの蒸留所の銘柄をあげていただきました。
■カシャーサ51(Cachaça 51)
現在では世界50カ国以上に輸出されている、最も有名なインダストゥリアル銘柄で蒸留酒の中では世界有数の販売量を誇る。蒸留所があるピラスヌンガはサンパウロ市内から車で約4時間。無菌状態で圧搾・発酵を行い、ステンレス製(一部銅)の連続式蒸留機で蒸留される。
アルコール度数:40度
■ウェーバーハウス(Weber Haus)
世界16カ国に輸出され、数々の賞を獲得している。100%有機栽培されるサトウキビを原料としアランビッケ(単式蒸留器)で蒸留される。熟成樽は7種類あり、違った材木同士を組み合わせるなど遊び心のある蒸留所。写真はアンブラーナ オーガニック(Amburana Orgânica)という商品でアンブラーナの樽で1年熟成させている。
アルコール度数:38度
■カシャーサ ダ キンタ(Cachaça da Quinta)
リオ市内から車で約6時間。原料となるサトウキビは標高200mのリオデジャネイロ州山岳地帯にある農場で厳しい品質管理の下栽培されている。2013年、ブリュッセル国際スピリッツコンクールにおいて「ブランカ」がグランドゴールドメダルを受賞。写真のカシャーサ・ダ・キンタ ブランカ(Cachaça da Quinta Branca)は、ステンレスバレルで貯蔵・熟成。
アルコール度数:40度
今後人気がますます高まりそうなカシャッサ
日本カシャッサ協会では、日本でもカシャッサを楽しんでもらうための水先案内人となる「カシャッサ・コンシェルジュ」という資格が取得できる講座を開催。バー業界を中心に参加者が増加し、東京、福島で開催され、2020年には主要都市数カ所で開催される予定です。
1500年代、サンパウロ州サントス港近郊のサトウキビプランテーションで働いていた奴隷が偶然発見したのが始まりと言われているカシャッサは、現在世界の国々で飲まれるようになっています。種類の豊富さと、バラエティに富んだ飲み方、そして明るいラテンのイメージで、スピリッツの代表として日本の飲食シーンにも入ってきそうですね。
<参考情報>
<取材協力>
店舗名 | BAR Julep |
住所 | 東京都世田谷区池尻2-34-16 |
電話 | 03-3422-7650 |
営業時間 | 7:00 PM~3:00 AM |
URL | https://www.julep.tokyo/ |