
「やきとり大吉 八尾青山店」をオープンさせたオーナーの芝原 健太さん(42歳)。開業前は、学校の教材を扱うメーカーに約17年間勤務していた全くの飲食業界未経験者でした。そんな芝原さんが安定したサラリーマン生活を捨て、長年抱いていた「家族で経営できる店を持ちたい」という夢を、リブランディングした「白い大吉」で実現させました。
なぜ、未経験の業界で新しい挑戦を決意したのか。奥様と二人三脚で挑む奮闘の日々、そして店づくりを通して深まった家族の絆を紹介します。
サラリーマンから焼き鳥店主へ、家族経営の夢を追って
──まず、これまでのご経歴と、開業されたきっかけを教えていただけますか?
前職は、教材関係のメーカーで図画工作の教材を扱うサラリーマンでした。サラリーマン生活は安定していましたし、仕事自体も嫌いではなかったんですが、心の中にはずっと「将来は家族で経営したい」という夢があったんです。これは学生時代、アルバイトでお世話になっていたお好み焼き屋さんが家族で切り盛りされているのを見て、すごく憧れていたのが原点です。いつか、妻や子供と一緒に働けたら、というイメージがずっとありました。でも、子供が大きくなるとお金もかかりますし、未知な飲食業界への不安もあったので、妻ともそういう話はずっと封印していました。
その夢が現実味を帯びてきたのは、家族で常連だった大吉の店主から、開業のお話を聞いたことが独立への大きな一歩となりました。その時点ではすぐに開業するつもりはなかったものの、ちょうど自宅の近くで店舗候補地が見つかるという好条件が重なり、「今しかない」と感じ、まさに縁に背中を押されるような形で、開業を決意しました。
もともと焼き鳥が好きで、大吉のメニューにも馴染みがあったこと、そしてお店を通じて出会った方々からの言葉に「ここでやりたい」と自然に思えたことも大きな決め手でしたね。
赤色ではない「白い大吉」へ。挑戦を決めた妻の後押し
──挑戦を決めた理由はなんですか?
開業を決めるうえで特に心を動かされたのが、従来の“赤い大吉”ではなく、リブランディングした「白い大吉」と出会えたことでした。まだ全国でもわずか11店舗しかなかった頃で、「この新しい白大吉に挑戦してみたい」という強い気持ちが自然と湧いてきたんです。
白い大吉は、白と木を基調にした明るくてモダンなデザインで、外観も内装もすごく洗練されていて、女性でも入りやすい雰囲気です。実は妻も「白い大吉なら女性のお客さんも増えそうで面白そうだね」と言ってくれて、背中を押されました。
実際にオープンしてからも、「入りやすいね」「雰囲気いいね」と言っていただくことが多くて、女性のお客さんが来てくれることも多いです。そして、食べてもらうと最後には「あぁ、大吉の味やな」と言ってもらえる。その瞬間が一番嬉しいですね。
──初めての飲食業界で、一番のギャップはありますか?
開業して最初の1ヶ月の頃に一番ギャップを感じたのは、仕込みの時間の長さでした。僕のイメージでは、営業をメインに頑張るんだと思っていたんですけど、全く違いました。その逆で、仕込みの方がめちゃくちゃ重要で大変でした。研修で教わってはいたものの、いざ自分ひとりでやってみると、研修時の3倍くらい時間がかかってしまって…。仕込みが遅れないように、当時は朝7時に起きて息子を送り、そのまま店に向かう流れを必死で作っていました。
仕込みは確かに大変でしたが、それでも「仕事」という感覚より、どこか楽しく取り組めていました。というのも、開業わずか1ヶ月のタイミングですでに4回、5回と通ってくださるリピーターのお客様がいて、「美味しかったからまた来るね」と言っていただけることが何よりも嬉しかったので、「この仕込みはそのためのものなんだ」と思えるようになりました。
家族との絆が深まる、仕事と生活の一体感
──店舗の運営は奥様と二人三脚で?
お店の運営は基本、妻と2人がメインです。忙しいときはアルバイトさんにも入ってもらっています。うちの息子は今、中学3年生ですけど、やきとり大吉が大好きです。学校の帰りにここでご飯を食べて帰るのがほぼ日課になってます。
妻は以前別の仕事をしていたんですが、それも辞めて店を一緒に手伝ってくれていて、本当に助かっています。
──お店が家族の中心になっているんですね。前職と比べて、家庭環境に変化はありますか?
サラリーマンの時と一番違うのは、やはり家族との関係ですね。サラリーマンのときは帰って愚痴を言っても、息子や妻に仕事のことがなかなか伝わりにくかったんです。でも、今は一緒に仕事をしているので、同じミスや悩みも一緒に分かち合える。それが一番いいと思っています。最初は妻と仕込みの段取りでケンカもしましたけど(笑)、今はもう阿吽の呼吸でできるようになっているのでそれが嬉しいです。
──家族全員で店に関わる喜びが伝わってきますね
息子も高校生になったら、バイト代を払ってでも包丁の握り方とか、社会経験を積ませたいと思っています。うちのアルバイトの子たちは息子と同世代の子たちなので、彼らと「高校・大学ってこんなんだよ」みたいな話をするのも、一人っ子の息子にとってはすごく良い影響があると思っています。開業してからは、家族と常に一緒にいられるし、息子の成長もそばで見ることができるので、本当にやってよかったと感じています。
多くの「出会い」に支えられて今がある
──今後の目標はありますか?
やはり目標は長く続けたいということです。60歳、70歳になっても働くなら妻と一緒に働いたほうがいいかなと。このお店をずっと守って、やっていきたいという強い思いがあります。
だからこそ、サラリーマンの時以上に体には気をつけようと思っています。まずは僕と妻、そしてアルバイトさんを含めて、みんなでこの店を盛り上げていきたいです。
──人とのご縁についても何度か触れられていましたね
本当に多くの人との出会いに支えられていると感じます。改めて、研修先の店主さんとか、本部の方とか、多くの方々に支えられて今があると、心から感謝しています。僕が通っていた店主さんもそうですし、大吉で出会った皆さんに支えられて、今の僕がいる。それが一人でも欠けると、多分今の自分はいなかったと思います。本当にありがたい出会いの連続です。これから「白い大吉」の仲間がもっと増えていくことが楽しみで、心強いと感じています。
──最後に、誰に一番感謝を伝えたいですか?
そうですね、一番は妻への感謝が大きいです。開業前、不安や迷いがあったときも、そっと背中を押してくれたのは妻でしたし、実際にお店を始めてからも、そばで支えてくれているおかげで店を続けられています。
妻への感謝の気持ちを忘れずに、これからも一歩ずつ前に進んでいきたいと思っています。
編集後記
終始、穏やかでハッピーなオーラに包まれていた芝原さん。インタビューを通じて、長年の「家族経営」という夢を叶えた喜びと、初めての挑戦に対する真摯な姿勢が強く伝わってきました。
クックビズでは、「やきとり大吉」が半世紀近くに渡って叶え続けてきた「自分のお店を持ちたい」という夢の実現を、新たに導入された「地元でリース方式」などの仕組みを通じてサポートしています。
芝原さんのように飲食業界未経験者でも、地元で家族と共に働くという「開業」の夢を追求する姿勢は、まさに飲食業界の可能性を広げる「人」の力そのものです。
また、やきとり大吉での独立開業を目指す方々からの相談も随時受け付けています。



