上治 真弓さん/うえじ まゆみさん(へっつい・料理人・35歳)
学校卒業後、一般企業に就職。OLを経て、アルバイトスタッフとして小料理屋に6年間、勤務。「もっと技術を身につけたい」と調理学校に入学。調理学校の先生と食事に行った昭和町のそば屋「十割蕎麦やまなか」で、和食料理人としてスタートを切る。「やまなか」は関西で最も名を馳せる酒店のひとつ「山中酒の店」の直営店。同店直営の長堀橋「まゆのあな」、大国町「へっつい」にて経験を積む。現在、「へっつい」の顔として活躍中。
目次
30歳がスタート。「山中酒の店」に出会いました!
—–シゴトについたキッカケは?
私が料理の世界に飛び込んだのは、遅いんですよ、30歳のとき。それまでも小料理屋のお手伝いなどで調理はしていたんですが、調理師免許をとりたくて、調理学校に通いだしたんです。そのときに、調理学校の先生と食べに行った店が「十割蕎麦やまなか」というおそば屋さんで、「山中酒の店」の直営店だったんです。
たまたまなんですが、数日前に「山中酒の店」直営の「まゆのあな」という別のお店に面接に行ってたんですね。その話をそば屋でしたら「じゃあうちにおいでよ」ということですぐに入社することになったんです。これは、本当にすごいタイミングでしたね。
「山中酒の店」は飲食業界では有名な地酒専門の酒屋なんですが、日本酒のよさを伝えるには日本酒に合う料理が不可欠ということで、直営で和食店を経営しています。私は、そば屋「やまなか」、「まゆのあな」で修行を積んだ後、今いる「へっつい」がオープンするということで2012年に立ち上げから参加しました。
イチジクにそば粉!?
—–シゴトのやりがいは?
うちは、とにかく発想が自由なんですね。特に、「この日本酒に合う、旬の食材を使った料理」というのを、とっても自由に考えるんです。
たとえば、今の季節なら、イチジクをそば粉であげて出したりします。炭火を使って、とか、中華にして、とか、枠組みがないので、すごく面白いんです。ただ、和食の基本は足すんじゃなくて引き算だから、ゴテゴテ飾り付けたりはしません。「日本酒に合う一品」というルールのもと、ああでもない、こうでもない、と皆で考えてお客様に出します。
お客さんの顔が、どうしたって見えすぎなんです!
「山中酒の店」の調理場はカウンターとほんとに近いんです。オープン前は「近すぎやろ!」って、びっくりしたんですが(笑)、そのまま料理を「どうぞ」と出して、「ありがとう」と返ってくるんですね。食べて笑顔になるかどうか、喜んでもらってるかどうか、すぐに分かる。そんなお店って、飲食店以外ないじゃないですか。その打てば響くような感覚には、感動がたくさんあって、手紙をもらったこともあります。全然知らないお客さんから「ありがとう」って手紙をもらうなんて、ものすごく嬉しいですよね。
日本酒の美味さに今、大学生たちが気づきだしている!
—–シゴトの目標って?
「山中酒の店」に入るまでは、ほとんど日本酒を飲んだこともなくて、全く知らない世界だったんです。和食を手がけるうえで、とにかく日本酒のことを知らないと話にならない。それで先輩に教わったり、自分でも飲み歩いたり、酒蔵に行ったりしました。「日本酒」って知れば知るほど、すごく面白ろかったんですね。
こないだ、ある酒蔵の蔵元さんを「山中酒の店」に呼んで、大学生と一緒に日本酒と料理を楽しめる勉強会を開いたんですが、20代前半の若い人たちがみんな「日本酒ってこんなにおいしかったんだ」とおどろいていました。日本酒には、本当にそういう力があるんですよ。もっともっと若い人たちに伝えていきたいです。
※編集部余談:実は大学生の間では、最近、日本酒サークルが盛り上がりを見せています。全国きき酒大会に大学生の部が誕生したほか、東京大学主催の学生日本酒協会、関西7大学による関西学生日本酒連合が発足するなど、2014年は特にネットワークが着々と構築されつつあります!その背景には、和食が無形文化遺産に指定されたこと、またヒット漫画「もやしもん」などに見られるように、日本酒作りの科学的研究が大学を舞台に行われていることなどがあるとされています。
ぶっちゃけ飲食女子は家庭と仕事が両立できるのか
—–女子としての苦労&成果はある?
朝早くから晩遅くまで仕事ばかりしているので、体力的にしんどいときもありますよ。朝五時から料理長である社長と2人で木津市場に仕入れに行っています。今は独身で、いつかは仕事しながら、結婚して子供を生んで育てて…というのも理想としてはあるけど、周りをみても簡単じゃないですよね(笑)。ただ、女性って、そのときの状況に合った「やり方」を受け入れやすいと思うんです。
「日本酒うさぎ」の起久代さんみたいに、周りの人たちのサポートを受けながら子育てしつつ、仕事もしつつ、という道なら自分もできるかもしれない。「絶対にこうでなければならない!」というのではなく、「じゃあ、こういうやり方ならできるかな」って。
—–プライベートを教えてください。
普段は、美味しい日本酒が飲めるお店とか酒蔵に行ったりしています。今は、酒米の勉強がすごく楽しいです(笑)。
酒米って、いろんな種類があるんですが、人間の家系図みたいに、それぞれの母と父がいて辿っていくとルーツがあるんですよ。とっても奥が深いです。山田錦という有名な酒造好適米も、江戸時代にさかのぼって交配されてきています。
—–シゴトモダチはいますか?
「へっつい」には今、女性の料理人が5人います。雲の上のような大先輩含め、みんな仲がよくて励みになる存在です。日本酒を縁にいろんなお店の方とも知り合いになります。それでイベントしたり。そういうのもこの世界の面白いところですね。
上治 真弓さんに会える!『山中酒の店』は、こんなお店♪
路地裏の一軒家。まさに「隠れ家」な空間で、日本酒と料理のマリアージュをコースでやっているのが『へっつい』です。6品と料理と5種の日本酒を楽しめるコースメニューは、上治さんと社長の2人であれこれ考え創作されているそう。最近は、日本酒を知らない若いお客さんからも人気を獲得。新しい日本酒の魅力に出会いたいなら、「へっつい」のマリアージュをたっぷり堪能してみては。
店名 | 山中酒の店 |
所在地 | 大阪市浪速区敷津西1-11-10 |
最寄駅 | 地下鉄御堂筋線「大国町駅」、JR「今宮駅」よりそれぞれ徒歩10分 |
営業時間 | 17:00~22:30(21:30 L.O.) |
定休日 | 日・祝 |
TEL | 06-6631-6238 |