「ベジテジや」を運営する株式会社ゴリップで5年間修業を積み、社内の独立支援制度を利用し、夢の独立から6ヶ月経った森 慎太郎(もり しんたろう)さん。そんな森さんに、今回はクックビズ総研編集部の杉谷がお話をうかがいました!

ベジデジや福島店の森慎太郎さん

「ベジテジや」の店長や統括マネージャーとして活躍!

森さんの経歴 大分県出身

23歳 京都へ出てくる

ブライダル企業入社

ベジテジやに転職

京都本店へ配属

四条烏丸店店長にバッテキ!

東心斎橋店立ち上げ、店長へ

東心斎橋店が全店NO.1の売上に

27歳 統括マネージャーに昇格!

28歳 独立開業

───飲食業界に携わったきっかけは何だったんでしょうか?

森さん:高校卒業後、地元スーパーの精肉コーナーや、生花店で葬儀用の祭壇作りをしていました。とはいえなかなか仕事はうまくいかず、次第に、大分から出たら何かわかるんじゃないかなと思ったんです。あと、すごく単純なんですけど、歴史が好きだったんで、いろんな名所がある京都に行こかと。

京都に出てきて、たまたまブライダル系の企業に入社。でも、何か違うなと思って転職しようかと思いました。そこからしばらくは手当たり次第、業種や職種かかわらず、面接を受けては落ちるの繰り返しで・・・。挙句の果てには、面接恐怖症みたいになっちゃって。そんなときに家の近くにある「ベジテジや」も受けてみようか、といった軽いノリでしたね。

───それが結果的に大きな転機となったわけですが、面接のときのことは覚えていますか?

森さん:また落ちるんじゃないかって決めこんで、ビクビクしながら事務所に入ったんです。社長の勝山さんとの面接だったんですが、勝山さんの一言目が、『今日はええ天気やなぁ』だったんですよ。

そう言いながら事務所のカーテンをバッと開けられたのですが、なぜか急に、僕の心にも日差しが降り注いだような気持ちになりました。そして、履歴書も見ずに『お前と話がしたいんや』って。そのときに『この人のもとで、この会社で働きたい』って強く思いましたね。

ゴリップ勝山社長株式会社ゴリップ 代表取締役 勝山昭氏

───なるほど。勝山社長は経歴などよりも、森さん自身を知りたいと思われたのですね。入社してからの仕事についてはどうでしたか?

森さん:まずは京都の深草本店で、肉の切り方や焼き方、包み方まで全て基礎から叩き込んでもらいました。「サムギョプサル」というものをまったく知らなかったので、毎日が勉強で社長をはじめ、先輩に鍛え上げてもらった時期ですね。がむしゃらにやっていたら、入社から1年半経ったときに四条烏丸店の店長に抜擢されたんです。

───店長となると一般職とは違った苦労もあったかと思います。いかがでしたか?

森さん:そうですね、“店長”という肩書きのもとの責任感は大きかったです。特にスタッフをまとめていくことは難しかった。悩んでいた時期に、他の飲食企業から四条烏丸店へ研修に来られた人と一緒に働いたのですが、本当に素晴らしい方で、見習う部分がたくさんありました。と同時に、店をまとめるのはどう頑張っても、ひとりじゃできないということを痛感しました。

───なるほど、その頃は社長の勝山氏も現場に出て働いていたのですか?

森さん:はい。当時はまだ店舗数が少なかったこともあり、社長が現場に出られて一緒に仕事をすることもありました。勝山さんはアイデアがすごく独創的で面白いんですよ。でも、仕事のこととなるととても厳しかった。その絶妙なバランスがほかの人には出せないもので、個人的には、そこが勝山さんの一番の魅力だと感じていました。

あと、社長がよく店に来ることで従業員との距離感がとても近かったと思います。このいい距離感が「ベジテジや」で働く魅力のひとつでした。

───近い距離感だから分かる、勝山氏からの期待などは感じられましたか?

森さん:勝山さんは基本的に、立候補制で物事を決める人だったんです。年齢や社歴、実績にかかわらず、自分から『やります!やりたいです!』という気持ちのある者に任せるようにされていました。

なのに、大阪の東心斎橋に新店舗がオープンする時、社長から直々に店長に任命された時は嬉しかった。勝山さんからの期待に応えることが、自分の中で自信になっていましたね。

ゴリップから独立した森慎太郎さん

───やはり新店舗のオープン、立ち上げというのは単純な引き継ぎと違って誇らしい反面、苦労も多かったと思うのですがいかがでしたか?

森さん:お店のコンセプトやメニューといったところに自分だけでは手が回らず、副社長の洪(ホン)さんに決めていただくことになって・・・。なんとかオープンはできましたが、うまくオペレーションができていないということが、目に見えて売上に出てくるんですよ。

だから、閉店後にスタッフを集めてミーティングをして、そのまま寝ずに仕込みをし、営業時間を迎えるといったことを毎日していました。

───ミーティングなどでスタッフに叱咤する場面もあったと思いますが、そのあたりでの苦労はありましたか?

森さん:ただ単に注意すればいいというわけでもないですし、注意する側もされる側も嫌なことなんですよ。また、人によって受け取り方も違うので、この子にはこんな注意の仕方、あの子にはまた違った言い方を、と。もともと人に注意するのが得意ではなかったですが、自分自身が鍛えられましたし、成長できました。

その甲斐あって、スタッフの意識が高まり、店が回るようになった結果、東心斎橋店が全店一の売上に。これは大きな自信となりましたよ!

東心斎橋店で1年3ヶ月間店長を務めた後、統括マネージャーに昇格し、その後、独立することになりました!

───ゴリップを退職される心境はどうでしたか?またゴリップから、独立支援制度を利用しての独立第1号者ですが、そのあたりの不安はありましたか?

森さん:僕はゴリップで過ごした約5年間に自信を持っていたので、不安はあまりなかったです。それに、多少のことは持ち前のポジティブさでどうにかなると思っていたので。社長の勝山さんも『こいつなら特に問題ないだろう』というような目線で見てくださっていたんだと思います。

僕は自分から積極的に動くタイプではないんですけど、言われたことは完璧にやりきるようにしていました。それが社長や、周りの人間からの信頼につながったんじゃないかと思います。

サムギョプサルを知り、楽しんでもらうために

森さん:お客様との関わりを大切にしています。まだ、サムギョプサルという料理自体を知らない方も多いですし、焼き方や包み方からより多くのお客様に知っていただきたいです。サムギョプサルを知ってもらえるイコール「ベジテジや」の認知度も上がると思うんです。なので、お客様と接する時間は、できる限りサムギョプサルを楽しんでいただこうという気持ちでやっていますね。

人材育成に関しては、何度も従業員に注意せずとも、自分の背中をみせて次の行動を促すという姿勢にこだわっています。自分でお客様の立場になって考えられる人になってほしい、サービス面でももっと顧客満足度を上げていきたいと考えています。

お客様目線でよりよい店に!

森さん:店長やマネージャーの頃よりも、仕事の幅がグッと広がりましたね。自分の手を加えられる部分が確実に増えました。これは苦労も多く大変ですが、独立することの醍醐味でもあるので、自分ではやりがいだと捉えるようにしています。あと、コースの設定なども自由に変化をつけられるようになりました。お客様目線で色々試せるようになったのは大きいなと思いますね。

サムギョプサル

感謝の気持ちをもつように

森さん:今までは“働かせてもらっていた”のだと改めて実感しました。金銭の管理や仕入れなどもそうですが、経営という部分で全く知らない面に触れなければいけなかったので、単に働けるお店そのものがあるということに感謝するようになりましたね。

「ベジテジや」のトップをめざす!

森さん:お客様の層を広げていきたいです。今よりもっと多くの方に「ベジテジや」を知ってもらいたいです。また、直営店に負けるつもりもありません。「ベジテジや」のコンセプトを守りつつ、自分の手で作り上げていく中で、たくさんのお客様にサムギョプサルを知ってほしい、楽しんでほしいと思います。

ベジデジや福島店の内観

やりたい!という気持ち、耐え抜く気持ちが大切

森さん:リアルな話になるのですがスタッフを雇用する上で、待遇や福利厚生をどういった内容にするのかや、その手続きの仕方などはしっかりと勉強しておくことをおすすめします。

あと、僕みたいに社内の独立支援制度を利用しての独立をするのであれば、独立する前に、企業の中でトップをめざすべきです。どんな企業であっても、独立してからのほうが大変だと思うんですよ。なのでしっかりと経験を積んで、吸収できるものは全部吸収しておくべきだと。周りの人たちから学べるものはすべて学んでおきましょう!

最後はやっぱり『やりたい!やってみたい!』っていう気持ち、もし壁にぶつかってもとりあえず続けてみることが大切だと思います。いくらやりたいことでも、流れたり、逃げたくなる時ってあると思うんですよ。僕はそういう時、耐える派だったんで。目標設定や計画性も大事だと思いますが、まずやりたいことがあれば、外へ出て飛び込んでほしいなと思いますね。

ベジデジや福島店の外観

独立がゴールではない!

大阪市福島区。JR大阪駅や梅田駅といった、関西の主要ターミナル駅からひと駅向こう、下町風情がまだまだあり、隠れた名店が軒を連ねています。そんな街の一角に「ベジテジや 福島店」は店を構えています。シンプルなきっかけ、勝山社長との出会いから夢を見つけ、つかんだ森さん。しかし、ここが決してゴールではないときっぱり。お話の中から更なる高みに向けて、着実に向ってらっしゃるんではないかと感じました。
(取材編集:松尾、記事作成:杉谷)

<店舗情報>
「ベジテジや 福島店」
大阪市福島区福島2-10-22
06-6345-8178
営業時間/17:00~24:00
定休日/不定休

株式会社ゴリップ
設立/2005年5月
代表取締役/勝山 昭
本社所在地/京都市下京区中堂寺坊城町28-5 革命ビル
サムギョプサル専門店「ベジテジや」などの飲食店舗を展開。飲食ベンチャーとして、業界各紙に取り上げられることも。


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