
上村さんいわく「最近の傾向としてアルバイトと正社員の差がなくなってきているが、ぜひ正社員をめざしてほしい」とのこと。
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アルバイトと正社員の大きな違いって?
───アルバイトと正社員では、仕事内容の違いがあるとは思うのですが、実際にどこがどう違うのか、と言われると「う~ん」という感じですね。
上村:そうですね。アルバイトと正社員って、業界や企業によっても受け止め方も実情もさまざまだとは思いますが、アルバイトは基本的には、雇用期間が定められていて、パートなどの時短勤務が多いということから、これまでは、将来的な会社の重要なポジションを担っていくのは正社員であり、先々のキャリアを見込んで雇用するのは、正社員ということでした。
自分の業務や社内外、企業全体に対する責務、またそれに付随するキャリアや教育支援、保障という点で、アルバイトはそれが少ないケースが多いという受け止め方だったんです。
───将来的なキャリアを見込んで正社員雇用というのはあったんですね。
上村:最近は、事情が少し違ってきている。多くの業界でアルバイトが戦力として活かされてきているんです。
企業の実情にもよりますが、正社員とアルバイトがさほど差がないケースも増えてきています。
飲食業界ではそもそもアルバイトが大きな戦力とされてきました。
さらに今、指示された仕事だけを勤務時間内にすればいい、という時代ではない。
職務の責任が大きく社会保険だけでなく、有給休暇や賞与もきっちり保障する企業も増えてきているんですよ。
───そうなんですね。長い不況で正社員になれずアルバイトなどの非正規雇用で働く人が多くなってきたので、そういった現状の打開策としての社会的傾向なのでしょうか。
上村:確かに、非正規雇用の立場で働く人が増えたからそういう方向へ向かった背景もあるでしょうね。
ただ、今回の相談のように、「正社員をめざせ」という声があるのは、アルバイトじゃなく、キャリアアップやスキルアップといった将来的に確かな人生設計が実現できるだろう正社員をめざせ、という意味もあるんじゃないでしょうかね。
現在の社会的な雇用状況では正社員になるのが難しいという方も多いと思います。
ですが、正社員募集がほとんどのcook+bizの求人を見ていただけば分かると思いますが、飲食業界では中途入社で正社員を求めている企業も多数あるんですよ。
むしろ人手不足が叫ばれているなか、売り手市場だったりして、私の実感としては、正社員になるのがきわめて困難な状況ではない気がします。
飲食業界で、アルバイトから正社員を狙うには?
───飲食業界は、アルバイトから正社員として登用する企業やお店も多いですよね。割と簡単に正社員になれそうなイメージがありますが。
上村:そうですね。アルバイトから正社員登用の実績のある企業も多数ありますよ。
私たちキャリア・アドバイザーは、正社員登用の制度や実績などの企業情報だけでなく、社風や離職率など企業サイドの情報をきちんと把握しているので、ぜひおたずねください。
今はアルバイトだけど、正社員としての就職先をお探しの方も、もちろん、ぜひご相談いただきたいです。
ただ、正社員になれるかどうかの大切なポイントがあって、私たちがご紹介すれば、何も努力せず「じゃあ正社員として入社できる」とは、簡単にはならないんです。
───そうなんですか?こんなに沢山の正社員求人があるのに。
上村:確かにcook+bizには正社員求人は多数あるし、飲食業界では、今までアルバイトだったか正社員だったかを問わない場合も多々あるんですが、同時に学校を卒業して何年も経つのにアルバイト経験しかないというのをマイナス要素として捉える企業もあるんです。
でもね、大事なのは、アルバイト時代にどのように仕事に取り組んできたか、なんですよ。
ずばり!上村流「アルバイトから正社員になる方法」
───というと?
上村:たとえば、あなたが調理のアルバイトスタッフなら、
- 今まで1時間かかっていた作業を30分に短縮する
- 自分たちアルバイトの現場オペレーションを改善して、効率化を図る
- より美味しく、より原価率を抑えた新食材を開発する
など、生産性をあげたり、効率化を図った取り組みをしてください。
ホールスタッフのアルバイトの場合なら、
- お客様からのサービスの評価を得る
- ムードメーカーとしてチームワークを作り、スタッフの定着を促す
- スタッフとのコミュニケーションに尽力し、効率の良いシフト体制を図る
- 率先して顧客へのダイレクトメール送付に取り組み、リピーター獲得につなげる
など、できることは、さまざまにあるんです。
アルバイトだからといって、「言われたことだけやっていればいい」としていれば、これらはできません。
でも、今はアルバイトに権限委譲が進む現場が多い。
アルバイトの積極的な姿勢が、歓迎されているんです。
企業からしてみれば、アルバイトスタッフを正社員にするメリットが、必要です。
それを満たしているアルバイトスタッフなら、ぜひ正社員に!となるんですよ。
───なるほど!正社員並に働けるアルバイトなら、「ぜひ社員に!」となりますよね。
上村:飲食店の基本である「QSC」をご存知でしょうか。クオリティ=質の高さ、サービス=サービス力、クリンリネス=清潔さ、の3つです。
それらが揃う店舗がよい店舗といわれています。
たとえば、アルバイトのAさんは、「誰もが気がつかない(あるいは手をつけない)掃除を毎日していた」「効率の良い清掃作業を生み出した」。Aさんのそれらの成果は、立派な評価対象なんですよ。
また、Bさんはリーダーとして、能力の高いアルバイトスタッフを育てている。
実は各店でも取り組みたいと思われる、すごいトレーニングを実践していた。
Bさんは、すでに正社員としての適性があるわけです。
───そうですね!ほんと、その通りです!納得!アルバイトの今の働きこそ、大きな強みとして活かしたいですよね。そうすれば、正社員登用の面接でも、正社員入社の面接でも、「自分はこれに取り組んで、こういう成果がありました」とアピールできます。
上村:まずは、さきほど出した具体例のように、自分の仕事内容と取り組みを書き出してみるのがよいですね。
───それによって得た成果だけでなく、「正社員になれば、もっとこうしたい」ということも提案できれば志望動機もアピールできますよね。大事なのはアルバイトだろうと正社員だろうと『自分がどんな成果を出したか』!健闘を祈っています。