
今回は「飲食業界、外食企業への転職を考えているけど、やっぱりブラック企業しかないんですか?」とよく耳にする疑問やお悩みに答えます。
「ブラックかどうかを判断したいなら“店長の待遇”に注目してみるとよい」とクックビズの飲食専門キャリアアドバイザーである上村さんは語ります。
一体、どういうこと?
ということで、ライター峯林が上村さんを直撃インタビューしました!
インタビューの対象者

上村 昌三
目次
そもそもブラック企業とは何か。
峯林:今回は、「飲食業界=ブラックじゃないのか!?」という、よくいわれる疑問・お悩みです。
そもそもブラック企業の定義って、なんでしょうか?wikipediaによれば…
ブラック企業(ブラックきぎょう)またはブラック会社(ブラックがいしゃ)とは、広義としては暴力団などの反社会的団体との繋がりを持つなど違法行為を常態化させた会社を指し、狭義には新興産業において若者を大量に採用し、過重労働・違法労働によって使い潰し、次々と離職に追い込む成長大企業を指す。
引用:wikipedia>ブラック企業
とあります。
今回のお悩みの場合だと、違法なほど低賃金で長時間労働などの過労を強い、若者を過労死や自殺へ追い込むような環境を生み出している企業というイメージでしょうか。
上村:確かに飲食業界に限らず、そういった事件が報道されることはありますし、報道されるべき社会問題でもあります。
ですが、外食企業はどこもそのようなブラック企業ばかりというのは、結論から言いますと、勝手なイメージにしか過ぎないと私は思います。
峯林:そうでしょうか。
上村:そもそも、公の場で活動しているパブリックカンパニーにおいて、会社は株主のものであり、ニュースで報道されているような詐欺まがいの行為は、許されていませんよね。
そんな詐欺まがいが飲食業界の多くの企業でまかり通っているなんて、ありえないじゃないですか。
また、企業では、予算を決めて店舗運営を行っています。
ですから、給与も、行政の定めた最低賃金のルールを守って支給されていなければおかしい。
最初からそれを破って予算を組まないですよね。
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低額を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度です。・・・中略・・・最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。
引用:厚生労働省>最低賃金制度
そうしなければ罰せられるというのもありますが、多くは社会的存在として企業の当然の姿だからです。
なぜ飲食業界は「ブラック」のやり玉にあげられる?
峯林:他の業界以上に飲食業界って、やり玉に挙げられやすいですよね?
他の業界に比べて企業名や店名などが一般によく知られているからですかね?
上村:外食企業では、特に店長の裁量権が大きく、店長の能力によって、店舗の売上から従業員のシフトまでもが変わってきます。
なかには、店長の責任者としての能力が低く、従業員にしわ寄せが来る場合があります。
休みが取りにくいとか、残業が多いとか、そういった差異は店長の能力によって生じる場合があるとは思います。
そういう意味で、働く人間への待遇や労働環境などが、外から見えやすい、白か黒か分かりやすい側面はあるとは思いますね。
峯林:ということは、ウラを返せば、他の業界は単に見えにくいだけと。
上村:という側面はあるかと思います。
ブラック企業・ホワイト企業の見分け方ってあるの?
峯林:飲食業界でのブラック企業とそうでない企業の見分け方ってありますか?
上村:あくまでも、判断基準の「モノサシ」のひとつとしてですが、入社したい企業の業績は知っておいた方がよいですね。
たとえば業績のよくないA社があるとします。
このA社は、業績が悪いからといって店舗の予算を減らし、同時に店長に売上アップを指示した。
そうすると、店長は削られた予算内で店舗運営をしなければならず、アルバイトの時給を上げることができなかった。
しかも売上を上げなければならないので、組まれたシフト以外の残業も発生した。
それでも、スタッフと日頃からきちんとコミュニケーションをとっていて、信頼関係を築けている店長にはみんなついてきてくれるものですが、そうでない店長もいます。
その場合、スタッフに不平や不満が募ってくる。
不平不満が多くモチベーションが低下している店舗では、スタッフが急に辞めたり、仕事自体が怠惰になったりということが慢性化していきます。
そうすると、売上にひびき、そんな店舗が複数出てくると、A社の業績はどんどん悪くなっていく。
峯林:なるほど。“負のスパイラル”ですね。
お客様へのサービスも業績も待遇も労務環境もどんどん悪化していくという…。
上村:逆に業績のよいB社があります。
B社は、CS(顧客満足度)が高く、売上が伸びている。
利益をスタッフにきちんと還元し、雇用も増えて、ES(従業員満足)が非常に高まる。
そうするとスタッフのモチベーションが高まり、お客様へのサービスや業務の流れが活性化されます。
これを“勝利のサイクル”と言っています。
峯林:勝利のサイクル!初めてききました!
上村:これは、今私が思いついた言葉ですけどね。
峯林:…。つまり、業績のよい企業を選べと。
上村:判断するための「ものさし」のひとつとしてです。
業績だけでなく、企業の情報をきちんと知ることは大切です。
それこそきちんとした外食企業なら、店舗数から年間の出店スピード、企業の成長段階などを公開していますよ。
その上で、1社だけでなく、複数の会社を比較検討してみるとよいですね。
もっと深く企業の質を計りたいなら、「店長」を見よう!
峯林:さきほどの店長の能力によって働きやすさが変わるというお話ですが、外食企業では店長の存在意義は非常に大きいんですね。
「よい店長」と「ダメな店長」の見分け方ってあるんでしょうか?
上村:店長というのは、その企業の従業員への待遇や労働環境に対する姿勢を分析する上で、最も注目できる存在だと私は思います。
店長の能力・行動および店舗の業績には、明確な基準を設けルールにのっとり評価している企業がほとんどです。
たとえば…
- スタッフ育成力・・・部下の能力を上げるための指導ができているか。
- 顧客指向性・・・ニーズの把握やサービス力。お客様の期待に応えているか。
- リーダーシップ・・・チームを引っ張っていけているか。
- 達成指向性・・・目標達成に向けて徹底した取り組みができているか。
- 対人影響力・・・スタッフだけでなく、業者などを含め協力体制ができているか。
これらは大まかな評価の例ですが、基準がしっかりしている企業ほど、店長の能力も発揮されているし、意欲が高いのは当然です。
ですが、評価のルールは、おそらく入社前の求職者に公開する企業は少ないと思いますので、店長の待遇や裁量のスケール、キャリアを積む上での伸び代などに注目していただくとよいですね。
そうすると、企業の姿勢というのが、ある程度、見えてくるはずです。
あと、企業サイトや求人サイトで、実際に入社された店長やSVのインタビューがあれば、ぜひ参考にしていただきたいです。
ゴール(目標)をめざす人間にとっての「働く」とは
峯林:ところで、ブラックといわれてしまう状況は、個人店や中小零細の外食企業の場合が多い気がします。
上村:個人店や小さな外食企業の場合は、少人数のため、個々への負担が大きくなりやすいことは確かです。
労働時間も長くなりがちだし、大手企業のようなスケールメリットがないので、給与も大手の外食企業ほど出せないところもある。
峯林:待遇や労働環境を改善したくても、現実として、できないというお店も少なくはないですよね。
上村:ただ、飲食業界では多くの場合がそうなんですが、将来、自分のお店を立ち上げ独立したいという目標を持っている人間が、たとえば、プロの料理人をめざしていたり、ソムリエをめざしていたり、という人ですね。
そういった人が、たとえ労働時間が長い!給料が安い!
という事実があっても、それ以外で得るものがあると思っている人も多いのです。
峯林:業界は違いますが、私の場合は20代前半でコピーライターをめざして、小さな広告プロダクションに入ったんですが、初任給は手取り13万円でした。
毎日夜遅くまで仕事していたし、休みの日にも、風邪引いても、出勤していましたね。
社長と私の2人の会社だったので必然的に休めなかったんですが。
でも、プロになるためにスキルを身につけたいと思っていたので、圧倒的に学べたのも事実なんですよね。
上村:そうですね。個人店が非常に忙しく、働く環境が厳しいというのは、世界共通の課題かなと思います。
たとえば、先日、フランス帰りの料理人がお話されていたのですが、アラン・デュカスやポール・ボギューズといったミシュラン三ツ星で知られている名店ほど、しっかりスタッフが働いているそうです。
人数が少ないので人一倍働かなければならない、でもシェフと二人三脚で、これ以上ない密な経験でき、高い技術が身につくわけです。
みんないきいきと働いている。
名店で修業を積めば、独立しても高い技術を持つシェフの店として評価を得ることができますよね。
それを「良し」とするか「ブラック」とするかは、個々の主観が混じります。
だからといって、経営者が労働者に決して強制できない部分ですし、健康を損なうような働き方はさせてはいけませんが。
峯林:私は「最初の3年は!」と期限を決めていました。
結局4年目で13万円から10万円以上、手取り給料が上がり、それでも10年も20年もあの労働環境は無理ですね。
上村:私なんか、外食企業にいたときは、年間130日休んでいましたけどね。
峯林:すごいですね。じゃあ、今のほうが働いていますね。
上村:ほんとに…。ともかくも、これから就職活動をされるのであれば、「ブラックだ!」というイメージで判断せず、きちんと企業情報を入手してください。
そして、入社して自分が何をしたいのか、どんな企業がそれを実現させてくれそうか、そのお店で何を学べるか、将来どんな自分になっていたいか、具体的にしっかり見つめていただきたいです。
そうすれば、自分が働きたいと思える場所が必ず見つかると思いますよ。
峯林:上村さん、ありがとうございました。
今回のような「飲食業界はブラック?」はじめ就職や転職のお悩みに、また「企業情報を知りたい!」という方にも、上村さんはじめ、キャリアアドバイザーがお応えします!
ぜひ以下より、クックビズにご相談いただければと思います。