真剣な表情で料理の仕上げをする

フードビジネスという世界に広がる、喜び、哀しみ。時には迷い、時にはぶつかり、時に決断を迫られる!
そんな飲食に関わるすべての人のお悩みを、編集部が、クックビズの飲食専門キャリアアドバイザーである上村さんに持ち寄り、直撃インタビュー!

自らもフードビジネスの荒波を経験し、現在、毎年500名を超える若者とフードビジネス業界をつなぐ上村さんが回答します。

今回は「30歳までに独立したい場合、20代の内にどんな飲食企業に入社すべき?」という悩み。上村さんは「成長企業で確かなマネジメントスキルを身につけ、店をつぶさない自信をもって独立を」と語ります。

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インタビューの対象者

上村 昌三
飲食専門キャリアアドバイザー
上村 昌三

5年後に生き残れる独立をめざそう!

───フードビジネスの世界では、多くの若者が「独立」をめざしているわけですが、何をすれば独立できるのか、という法則みたいなものってあるのでしょうか?

上村:まず、ひと口に独立といってもいろいろありますよね。
個々のしたいことがなんなのかによって、その内容も違ってくる。好きな料理の道を追求したいのか、稼ぎたいのか、新しいムーブメントを興したいのか。

まず、自分が何をしたいかによって、選ぶ道がまったく異なってきます。

料理人

───独立といっても、その目的はさまざまなんですね。

上村:そうです。たとえば、フレンチやイタリアンや和食といった専門分野の道を極めて「個人店を持ちたい!」という料理人がいます。
その場合は、やはり自分の腕をみがけるお店で働くのが勉強になるでしょうし、「儲けたい!」「大きなことをしたい!」という方は、それが可能な仕組みを持っている企業で働くのがいいですよね。

───単純に、腕があがればお店を持てる!わけじゃないのが、フードビジネスですね。

上村:ざっくりというと・・・

  • 自分のお店を持ちたい!⇒腕をみがける個人店で修行、もしくはフランチャイズチェーンを利用して一国一城の主になる
  • 儲けたい!大きなことをしたい!ムーブメントを巻き起こしたい!⇒実際に儲けていたり、ムーブメントを興した大手企業でその戦術を学ぶ

という感じでしょうか。ただ、フードビジネス総合研究所が記載している総務省のデータでは、開業して5年後に存在している飲食店や企業って、全体の65%ほどしかないのが現実なんですよ。

「全産業」では、5年間で新規開業した事業所の割合は23.7%、同期間で「廃業」した事業所の割合は28.4%であった。 これを「飲食業」(一般飲食店)でみると、前者(開業率)は28.1%、後者(廃業率)は32.2%である。居酒屋等の「酒場・ビヤホール」では同様に開業36.6%、廃業39.8%と、一層高くなっている。
引用:フードビジネス総合研究所

どんな独立にも欠かせない「マネジメント・スキル」

上村:そのことを踏まえて私が感じるのは、どんな独立をめざしていても、とにかく経営ノウハウをきちんと学び、身につける必要がある、ということです。

───個人店での独立もですか?

上村:極論をいえば、ある程度の資金があれば、誰でも独立できるんです。
ただ、失敗せずに続けられるかどうか、それが非常に難しいわけで。そこを大事にしてほしいと思うんです。

───じゃあ、「イタリア料理の技術を学んで、すばらしい技術が身についたから、お店をオープン♪」というのではなく、経営のための知識やノウハウを学ばないといけないですよね。

上村:私はそう思いますね。
自分が運営したい店舗スタイルのマネジメント・スキルを、必ずどこかで学ぶべきです。

そして5年後に潰れないくらいの「経営能力」を身につけてから独立するのがベストです。

小さな食堂から大企業へ!スタートはみんな1店舗から

───なるほど!そうなると、独立のために運営や経営のノウハウを学ばせてくれる飲食店や企業を就職先に選ぶことが必須ですね。そのような働き口はどうやって見つければいいですか?その上で30歳で独立って可能ですか?

独立看板

上村:なぜ“30歳”なのかが分からないですが、20代の今から何年後かに独立したいという意味ですかね?

いま、大手といわれるような企業の社長も、はじめは「起業家」として、1店舗のオープンからはじめていますよね。

たとえば、「すかいらーく」は創設者である横川4兄弟の長男が30歳、ほかの兄弟は20代のときに前身のことぶき食品を設立しています。

1962年、東京都北多摩郡保谷町(現在の西東京市)のひばりが丘団地に、横川端・茅野亮・横川竟(きわむ)・横川紀夫の横川家(「横川4兄弟」)が食料品を取り扱うスーパーとしてことぶき食品を創業。
引用:Wikipedia すかいらーく

全国700店舗近く展開する「フジオフードシステム」は、藤尾社長が24歳のときに大阪で独立したのがそもそもの始まりです。

昭和30年、大阪市天神橋に大衆食堂を営む両親の次男坊として生まれる・・・中略・・・昭和54年、個人事業として藤尾実業を創業
引用:株式会社フジオフードシステム公式サイト

またサイゼリヤの正垣社長(現会長)は大学生の時に店を譲り受け、その店が火事でつぶれたあと、23歳で再びイタリア料理店をオープンしています。
参照)正垣泰彦 著「おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ」(日経BP社発行)

クライアントでいうと、クックビズ総研の「食のメンター」にも登場していただいたゴリップの勝山社長は、29歳でゴリップを設立していますし、エーピーカンパニーの米山社長は31歳での起業ですね。

異業種から!年齢を重ねてから!独立スタイルはいろいろ

───みなさん、若くして起業しているんですねえ。

上村:でも私は、年齢は関係ないと思いますよ。

たとえば、ミシュランで星を獲得しているフレンチレストラン「HAJIME」の米田肇シェフは、大学で理工学を学び電子部品メーカーで働いていたので、料理の世界に入ったのは26歳。独立は36歳です。

独立した次の年にミシュラン史上世界最短で三ツ星を獲得しているんですけどね。
異業種からフードビジネスの世界に入ったり、年齢を重ねてから成功している方も結構いますよ。

米田肇は1972年10月大阪府枚方市で生まれ、・・・中略・・・大学に入学、理工学部において電子工学を学びます。1996年に電子部品メーカーに就職、電子部品の設計に携わりました。1998年、料理人に転身、その後、日本、フランスのレストランで仕事をし、2008年5月に“本当に素晴らしいレストラン”を造るというテーマを掲げ、Hajime RESTAURANT GASTRONOMIQUE OSAKA JAPONを誕生させました。
引用:HAJIME 公式サイト

───そうか・・・。大手企業ももとは個人店舗からスタートしている場合も多いですよね。

上村:いや、すべてそうですよ。マクドナルドでも、スターバックスでも、最初は創設者が1店舗から始めているじゃないですか。

そこから多店舗を展開して世界をまたいで大きく成長させているわけですね。
ですから、独立をめざす方は、成長段階にある企業で働けば、非常に勉強になると思います。

独立支援制度をとっているところだけでなく、実際に店長として店舗を任され、スーパーバイザーやエリアマネージャーという立場で売上の管理や人材の育成、出店や事業立ち上げなどにたずさわっていけば、自然とマネジメントスキルが身についていくし、企業が守ってくれているなかで、新しいチャレンジもできます。

───なるほど、成長企業でのキャリアを積むことで、独立ノウハウを身につけるわけですか!

上村:という側面はありますよ。実際にそういう方が多いですしね。とにかくいま、「独立のためにいろいろ学びたい!」とお考えの方は、ぜひ転クックビズの無料転職支援サービスにエントリーいただいて、私たちにご相談いただければと思います。

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