白衣を着た寿司職人の男性が、カウンター越しにお客様にお寿司を提供している

クックビズ株式会社は、富山県庁が実施する「寿司職人お試し就職支援事業」を2024年10月から採用支援しています。この事業は、求職者が富山県での暮らしを体験しながら、後継者を求める県内寿司店で短期就業(最短30日間、最長3ヶ月)を体験できるものです。
2025年11月末時点で、9名のお試し就職を実施し、うち5名が正社員採用に至りました。
今回は、2025年4月からこの支援事業を利用し、同年5月末から正式に寿司職人として富山県で働かれている山科 享士さん(38)に、富山県での挑戦と寿司職人としての成長についてお話を伺いました。

寿司職人を目指したきっかけと富山県での挑戦

──寿司職人を目指されたきっかけは?
両親が寿司屋を営んでおり、小さい頃から「食」が身近にあったことです。将来は実家を継ぎたいという思いを心のどこかに持ちながらも、まずは社会経験を積みたいと考え、大学卒業後は食品会社に約10年間勤務しました。
その後、「やはり本格的に寿司の道に進みたい」という気持ちが強くなり、調理師専門学校へ入学。卒業後は京都のそば店で修業を積み、改めて実家に戻って寿司の勉強を始めました。
ただ、実家で働く中で、どこか「甘え」があったとも感じています。実家では魚をさばく機会があまりなく、届いた切り身を扱うため、魚の全体像や食材の知識、寿司の全体的な勉強ができていないと思いました。
「このままではダメだ」という思いから、本格的な技術を身につけられる場所を求めて情報を探す中で、「富山県の寿司職人お試し就職支援事業」を知りました。これが、富山県で挑戦することを決意した大きなきっかけです。

寿司店の外観、ボードにはメニューが掲示されている

富山市桜木町の歴史ある寿司店

──数ある選択肢の中で、初めての移住先として富山県を選んだ決め手は?
今まで関西圏内から出たことがなかったので、富山県への移住に不安を持ちつつも、最終的な決め手は、この事業が民間のお店だけでなく富山県庁が一体となって支援しているという点に「安心感」を覚えたことです。また、テレビ番組『ウェークアップ』でこの事業が特集されているのを見て、自分の働くイメージを持てたことも大きかったです。

富山県の第一印象と富山湾の魅力

──初めての北陸、富山県はどんなイメージですか?
富山県は訪れたこともなかったので、最初はどんな場所か想像もつきませんでした。実際に来てみてまず感じたのは、「水が美味しい」こと。そして都会すぎず田舎すぎず、大阪と比べても人が多すぎないため「ちょうどいい住みやすさ」がありました。
雪が降る地域での生活は初めてですが、観光で来られるお客様から雪について質問をされることもあり、まだ実体験がないため、今は店長から聞いた話をそのままお伝えしています。そんなやりとりもあり、今年初めて迎える冬が今からとても楽しみです。
また、お客様はとても温かい方が多く、関西から来たとお伝えすると応援の言葉をかけてくださいます。そうした「人との距離感の近さ」は、関西とどこか似ているなと感じています。

──富山湾の魅力を教えてください
富山湾の食材は「美味しくて新鮮」なのが特徴です。関西にいた時よりも知らない魚の種類が多く、その豊富さに驚きました。富山湾は日本海に生息する約800種のうち500種もの魚が見られる“水産資源の宝庫”であり、「天然のいけす」とも称されるほどです。特に初めてカワハギと肝を一緒に食べた時は、その美味しさに驚かされました。新鮮だからこその味わいを日々感じています。

白衣を着た寿司職人の男性が、魚をさばいている

寿司職人としての仕事内容と成長の実感

──寿司職人としての仕事内容と、大切にしている信念はありますか?
現在働いているのは、富山市桜木町にある歴史ある寿司店です。仕事内容は、朝の仕込み(魚さばき・米炊き・シャリ合わせ)から、営業中は寿司を握るほか、一品料理やお造り、盛り付けまで、ほぼ一通りの調理業務を任されています。カウンターは店長と私の2人で担当しており、忙しい時は自ら考えて動くことが求められています。常に「お客様を第一に考える」姿勢を大切にしています。
寿司を握る上で最も大切にしている信念は、「新鮮な食材をいかに美味しく調理し、目の前のお客様に『美味しい』と言ってもらえるか」を考えること。お客様の笑顔や「美味しい」という言葉を直接感じられることが何よりの喜びです。そのために盛り付け(見た目の美しさ)も意識しており、SNSなどで綺麗な写真を参考にしながら、盛り付けのバリエーションを日々研究しています。

──富山県に来てから、職人としてどのような成長を実感していますか?
実家での経験はあったものの、魚をさばく機会が少なかったため、富山県に来た当初は「ほぼ未経験」の状態でした。修業が始まった頃は、魚の仕込みがうまくできず、時間内に終わらないことに苦労しました。そのため、魚のおろし方を一から丁寧に教えてもらい、できないことが多かった状態から、徐々にできることが増えてきました。富山県に来て約5ヶ月半が経過した現在も、「常に勉強」であり、成長を日々実感しています。今は一通りのことができるようになりつつありますが、まだまだ覚えることはたくさんあります。

苦労した点と乗り越えたエピソード

──一番苦労した、大変だったエピソードはありますか?
最も大変だったのは、お客様との距離が非常に近いカウンターに立つことによる緊張感でした。カウンター席のお客様は魚のさばき方や作法をよく見ているため、常に気が抜けません。当初は魚をうまくさばけず、仕込みに時間がかかることもありましたが、徐々に克服しました。富山弁など独特な方言(例:「ご飯が怖い=硬い」)を聞き取るのにも苦労しましたが、お客様に教えてもらいながらコミュニケーションを深めています。

寿司店の内観、カウンター席が7席

──印象に残っていることや、嬉しかったエピソードはありますか?
店長からの指導では、「美味しい料理や良い物を作るのも大事だが、お客様に笑顔で気持ちよく帰っていただくことがもっと大事」というメッセージが特に心に残っています。また、関西出身のため関西弁が抜けず、それがきっかけでお客様との会話が弾むこともあります。お客様の笑顔や「美味しい」という言葉を直接感じられることが何よりの喜びとなっています。

寿司職人としての夢とメッセージ

──山科さんの今後の目標は何ですか?
今後の目標は、仕込み、接客、魚だけでなくお酒の知識など、あらゆる面でレベルアップし、自分に自信を持てるようになりたいです。将来的には実家を継ぐことや自分のお店を持つことも漠然と描いていますが、まずは今の環境で技術を磨き、一人前の寿司職人になることに集中していきます。

──最後に、移住を検討している方へ。
富山県には移住しやすい制度があるので、ぜひ気軽に活用してみてください。迷っているなら、まずは一度試してみるのもいいと思います。私も同じ寿司職人として、新しく挑戦する方を応援したいです。地元の食材や文化に触れながら、腕を磨いたり、新しい経験を積んだりする毎日は、きっと貴重で楽しい時間になると思います。

白衣を着た寿司職人の男性が、魚をさばいている

編集後記

山科さんは、観光でさえ訪れたことのなかった富山県で「新天地」を見つけ、その恵まれた環境の中で日々、技術と知識を磨いています。努力と誠実さを重ね、富山県の地で確実に成長する姿は、多くの寿司職人を志す人にとって希望の光となるはずです。素敵な寿司職人が育つ富山県で、これからも新たな挑戦者の誕生が楽しみです。

■「寿司職人お試し就職支援事業」とは
富山県が実施する、寿司職人を目指す方に向けた体験型の就業支援です。
参加者は、富山県での暮らしを感じながら、県内の寿司店で最短30日〜最長3ヶ月の短期就業を体験できます。実際に働きながら就職先を検討できるため、遠方からでも安心して参加できます。

該当サイト:https://www.pref.toyama.jp/102104/zinzaiikusei.html

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