「つば九郎ベーカリー」


仙台の食文化「牛たん」料理を全国区へと広め、国内各地で80店舗以上を展開している株式会社利久は、レストラン運営事業のほか、イベントや催事などへの出店、さらにはプロ野球やJリーグの試合が開催されるスタジアムの売店でも販売をおこなっており、幅広く広範囲にわたる販売展開をしています。
今回はそのなかのひとつ、プロ野球の試合が開催される明治神宮野球場(通称:神宮球場)で「つば九郎ベーカリー」の運営に立上げから携わり、常に人だかりができるようなお店づくりをされている伊藤さんに、職業観などを伺いながら、繁盛店をつくるまでを聞いてみました。

対人スキルが一番の武器

──伊藤さんはアパレル、IT、不動産、そして飲食業界という異色の職歴の持ち主とお聞きしました
はい。これまで高級ブランドを扱うアパレルの大手企業や、IT関連、不動産業界で勤務させていただいたこともありましたが、決められたことが多くて。自分が見出したものが世に出ていったらきっと楽しいだろうな…と思い、これまでとは全く畑違いでしたけど、飲食業界に入りました。

もともと大学時代に、『衣・食・住』の何かしらに就きたいと思っていたこともあり、最初が『衣』で、次がちょっとですけど『住』で、そして今が『食』なので、結局全部に携わることになりました(笑)

──飲食のなかでも「利久」を選ばれたのはなぜですか?
人材会社に勤めている友人の薦めが「利久」で、すごくいい会社だから!って推されました(笑)

ただ、私もお店に行ったことがありますので名前は知っていましたし、何か自分のこれまでの経験を活かせるところがあればとも思いました。
しかし、これまで外資系企業で、売上があがれば、売った分がインセンティブとして収入になっていましたので、給与が固定で毎月同じになるということで、ちょっと迷いがありました。

でもそれ以上に、私は40歳になって全く違う職種に挑戦するよりは、30代のうちにチャレンジしておいた方がいいかなという想いがあったのも、入社を決めた理由の一つです。

何より最初に話を伺った際に、自分を必要としてくれる会社だと感じられたことも大きかったです。
複数のブランド、複数の事業、そして何千といるスタッフのなかで、私だからできる仕事がある、そう感じました。

「つば九郎ベーカリー」にて接客中の女性スタッフ

どんどん挑戦。やれる人がやる。

──入社してどのようなお仕事をされていますか?
今はSNSなどを手がけ、広報的な仕事も担い、レストラン事業の新店などがあったときは必ず現地に出向いています。
そのほか、顧客に向けたグルメサイトやコミュニケーションツールなどの対応も私がしています。

入社時から外商部という部署に所属していて、その部署内でも私だけの仕事というのをたくさん持たせてもらっています。

コミュニケーションツールの導入は、入社して2日目に私が提案をしました。
組織の中では年功序列があったり、技術のスキルが高くないとやらせてもらえないといった会社も多いと思いますが、どんどん挑戦して、やれる人がやればよいという風土があり、いろいろチャンスを与えてくれるのが「利久」です。
なので、やろうと思えば何でもやらせてもらえる。そのかわり結果をきちんと出していけるように頑張る。という感じです。

──外商部でほかにどのようなお仕事がありますか?
外商で私のチームは、百貨店での催事出店ですとか、神宮球場などプロ野球の試合が開催されるスタジアムやJリーグの試合がおこなわれるサッカー場、そのほかポップアップとして様々な場所で、牛たん料理の提供などをしています。

ほかにも、弊社のレストラン事業がテナントで入店している施設の1階で、レストランでは販売対応がしきれないお弁当を、私たち外商がチームで販売していくということもしています。

あとは主に夏。
5月ごろから始まる日本最大級の野外ロック・フェスティバルなどへの出店があります。
夏場は、野外フェスの熱気で暑さは最高潮ですが、その代わり売上がとてつもないので、達成感も最高潮です。

──出店は大変さがある分やりがいも大きそうですね
百貨店などでの催事では通常、社員2名とアルバイト数名を配置し、1日4~5時間で100万円の売上を作ります。
商品は残ったら破棄になってしまうので、売り切るということが大事です。
ただ待っていてお客さまが来てくれるとは限りませんので、みんなでお声がけするなど協力的になり、チームとして楽しく販売しています。
そして、要領よく動く、自分で判断する、気づいたことを指示する、といったことをみんな言わずとやれるようにもなるので、各自のスキルもどんどん上がっていきます。

一人で出店をしにいくこともありますが、その分すべて自分の売上になるので、それはそれでやっぱり評価は高いですね。
私もそういったところでの評価もしていただきましたし、役職にも早くに就くことができました。
金銭面に関しても役職が上がれば収入も上がっていくので、そういう意味では入社にあたってインセンティブというところで引っかかっていましたが、別に問題ない部分だったなって思っています。
実力次第で給与を上げていけるのであれば頑張ろうって、その時思えましたしね。

お客さんでにぎわう「つば九郎ベーカリー」

自分の武器を最大限活かす

──仕事をしていくうえで伊藤さんの強みを教えてください
私は前職で、百貨店のなかでも結構厳しいといわれるような百貨店に勤務していましたので、接客の仕方やクレーム含め、いろんな人への対応、作法といったところは一通りやってきた自負はあります。そしてそれは活かせると思っています。

一番活かせたと思えたのは、2024年の神宮球場でのプロ野球チームのファン感謝祭のときだったかもしれません。

──明治神宮野球場の売店でのお仕事ですね?
神宮球場には以前から「利久」の売店があり、そこで神宮球場を本拠地としているプロ野球チーム、「東京ヤクルトスワローズ」のマスコットキャラクター「つば九郎」の焼き印をしたカレーパンを販売し始めたのが最初です。

そこから、それを『おみやげ用に販売できないか』と球場側から提案をいただきまして、ちょうど球場内で小さなブースが空いたので、そこで単独で私が「つば九郎ベーカリー」と称してパンを販売することになりました。

2023年3月からスタートして、その時は仙台にある弊社の工場から送り込みして販売していましたが、現在はもっともっと美味しいパンを提供したいという思いから、羽付きのカマンベールチーズパンやソーセージにパンをくるくる巻いたソーセージドッグ、またはチョコメロンパンなど、イベントに合わせて販売していくようになりました。

球場のイベントは豊富で、プロ野球選手が引退する時には、その選手の背番号をプリントしたメロンパンをつくったり、2024年の神宮球場のファン感謝祭ではスワローズメロンパンというのをつくって販売するなど、イベントごとに商品の考案をしています。

そしてそのファン感謝祭のときは、昨年と比べて4倍ぐらいの売上を出すことができました。

──売上4倍!それはパンの魅力のほかにも要因があったのでは?
それはやっぱり、、、
「利久」というブランド力はあるけど、お客さまからは「あ、利久なんだ?」といった感じで追々気づくような程度しかブランドには頼っていなく…、
お店は「つば九郎ベーカリー」という名前ということもあり、つば九郎の絶大な影響力もありますが…、
弊社が手がけるクラフトビールを場内で販売させていただくという、他に例のない許可を得るなど挑戦もしましたし、何度もリピートをいただくことが多いたくさんのお客さまたちから、今季ありがとう!っていろんなものをいただいたりもして…

そういう意味では、ブランド力もさることながら、やっぱり顧客力を高めていって、いろんなお店があるなかで『自分に付いてもらえるお店づくり』というのが大切なのかな、という風に感じました。

──伊藤さんのファンになっていただくという感じですね
アパレルで働いていた時も、基本的には顧客商売。初めてのお客さまもたくさんいらっしゃって、その方をリピーターにつなげていく。
2回目の来店に繋げるというのが一番初めにやるミッションでしたし、あとは何かプラスアルファで買っていただいたりして客単価を上げる。
そういったチカラはその時に培いました。

それは今も変わらないです。
スーツ1着も牛たん1枚も接客は変わらないなって思っています。

スーツは1着30万円ぐらいしていましたので値段は違いますけど、顧客のつくり方も、接客の熱量も、あまり変わりません。
お客さまに入り込むチカラというのが、百貨店で働いていたアパレル時代に身につけられていて、今回のファン感謝祭ではそれらが集大成となって、ベーカリーで活かせたと思います。

接客中の女性スタッフ

アイデアが現実になり人を動かす

──「つば九郎ベーカリー」の商品考案もされていたのですね
神宮球場で翌シーズンに販売する商品は前年の12月の時点で決まっていて、1月には撮影も始まるなど結構前倒して進んでいきます。
そんななか最初にパン販売を始めたのは3月だったので、イベント用の商品などを毎週のように全部私が考えて、球場側に提案して、試食してOKいただいて、POPをつくって販売するということをずっとやっていました。

私は、ベーカリーの知識は料理教室でちょっとかじったことがある程度でした。
でも社内には弊社の別ブランドで展開しているベーカリーの責任者がいまして、すぐに相談することができる環境でした。
こんなものをつくりたいとおもっているということを工場長と相談して、”よしじゃあこういうパンにして売ってみよう”とか、風通し良くやることができたのでよかったです。

──積極性や行動力がアイデアを形にした感じですね
自分で考えたものが、みんなに楽しんでもらえたり喜んでもらえたりする。そういったものをつくってみたいというのが入社するきっかけにもなっていたので、「つば九郎ベーカリー」を始めてそこに大きく近づけたと思うし、大きなやりがいを感じることができています。

評価されることがないと多分人ってだらだら働いてしまったり、言われたことだけやるっていう感じになってしまうと思います。でも私たちの仕事って、お客さまがいっぱい来てくれてすごく混んだとか、売上が上がったとか、評価の証拠が目に見えるので、頑張りやすいという部分はあります。

ファン感謝祭の時の営業は、本当に自分にとって集大成だなと思っていて、自分が神宮球場でパンを販売することになってから、試行錯誤していろんなことをやってきて、そして今季の最後にとてもたくさんの人がお店に来てくれてみなさんと賑わうことができ、年間で一番の売上をだすこともできた。

普段から1時間で300個売れたり、すぐに完売してしまうということもありましたので、売るものがなくなってしまうということがないよう、準備段階からしっかり周りと相談しながら進めてきて達成できたプロジェクトでしたし、入社した時に描いていた”こういう風になりたい”という想いが、まさに現実になったと思います。

──今後の目標をお聞かせください
今後は立ち上げたこの「つば九郎ベーカリー」を、しっかりやぐらがたっているテナントと肩を並べるぐらいに成長させたいですし、神宮球場のベーカリーとして認知してもらえるようにしていきたいです。

弊社では、チャンネルを増やすということを目標にもしていますので、店舗が増えれば大変なこともありますが、それぞれの業態で売るものをちょっと変えたり、工夫もしあえますし、パン、牛たん、そばなどいろんな業態をもった総合飲食店にしたいというのが代表の想いでもありますので、そのひとつとしてまず、ベーカリー事業を私の方で少しでも盛り上げていきたいと思っています。
せっかく立ち上げた部署ですから。

まとめ

アパレル業界で身につけた接客スキルを、現在飲食事業で存分に活かし、自分らしさを発揮して仕事を楽しんでいる伊藤さん。
明治神宮野球場でパンの販売を始め、社内ではもちろんのこと、取引先である球場や球団、そして多くのお客さまから、商品の実力を上回る『接客』で高い評価をうけて、人気店を創り上げてきたようです。

今回インタビューをさせていただき、伊藤さんとの会話のなかで、楽しそうにお話されていたり、言葉にあたたかさを感じるなど、短い時間でも伊藤さんの魅力がしっかり伝わってきたように思いました。

「東京ヤクルトスワローズ」のマスコットキャラクターであり、店名にもなっている「つば九郎」や、その妹「つばみ」にも伊藤さんの評判は届き、お手紙をいただくこともあるようです。

伊藤さんの今後の目標のひとつとして、「私がつば九郎とつばみちゃんのファンということもありますが、これからもご協力いただいて、手書きでお店のロゴなど書いてもらえるように頑張る」とのことでした。
それには売上をしっかりつくっていくことが第一条件でもあると思いますが、「お客さまたちが付いてくれているっていう自信はあります」という力強いお話もいただきました。

これからも球場に来て楽しんでもらえるように、工夫してお店づくりをしていきますとのことでしたので、来年も再来年もその先も、神宮球場のなかでひと際人だかりができ、盛り上がっているお店となっていかれるのが楽しみです。

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