
現場に立ち返り、社員といっしょに成長していくと決めてV字回復
──では1人のスタッフの大阪流のおもてなしを、お手本にしたんですね。
いや、ほかの店長からは大きな反発がありました。「手がかかりすぎて現場が混乱する」「オペレーションが崩れる」「インバウンドはブームですよ。ブームが去ったら、社長どうするんですか!」と。
──英語が苦手なスタッフにはストレスになりそうです。
まぁ大変ですけど。片言でも心を通わせようと思えば通じるもんです。「人:人」で向き合うことでスタッフもサービスマンとしての大切なものを身につけるようになっていきました。
そこで私も大きな借金を目の前に覚悟を決めました。
──どんな覚悟を?
私は、商売の答えは「現場」にあると痛感しました。だから現場主義に方針転換。
経営者目線の考えより、スタッフと共に成長していこうと決めました。
効率よく店をまわすなら、スタッフの意思よりマニュアルが優先になりますが、当社は一切なしです。
──会社の理念をイチから考え直したんですね。
企業理念をもう一度見直すことから再構築です。
「人と共に」という言葉を柱に、
「人に勇気を 企業を元気に 社会に豊かさを」という企業理念を掲げました。
企業は利益を残すことも大切ですが、「人に信頼される関係」を積み重ねていく姿勢が大切だと気づいたんです。
──スタッフは変わりましたか?
自分で考えて行動してくれるようになりました。結果が出たら自信になり、その積み重ねが成長につながります。
──なるほど。
トップが一番心がけるべきことは、スタッフとしっかり向き合うこと。話をすること。それを実行し始めてから、経営はV字回復しました。
約50人と面談。社員の話にじっくり耳を傾けることがトップの仕事
──スタッフと向き合うとは具体的には?
ふだんから日常的に現場をまわりますが、年に2回・1回1時間、社員約50人とじっくり個人面談をします。2時間以上になったら、夜の部へ。「サシ呑み」です(笑)。
──50人とですか?
売上の話は一切しません。「俺に聞きたいことない?」と問いかける。
最初は「会社の方針は?」などまじめな話をすることもありますが、次第に「社長に相談したいことが…」となり、「家を買おうと思うのですが」「子育てで悩んでて」と相談事になります。
──プライベートな悩みですね。
そうです。それを社長がサポートし、解決に導いてあげる。そうするとスタッフは目の前の仕事に集中できるようになります。現場で多忙な店長クラスが、スタッフの悩みを抱え込むと、店がまわらなくなるものです。
あとスタッフの「得意なこと」「苦手なこと」の話も心にとめています。
──苦手なことを克服させるという上司は多いかもしれません。
それも大事だけど、私は得意なことで成長する方が断然いいと思っています。だからそういう機会を会社で積極的につくります。
現在、社内で語学の得意なスタッフによる外国語講座を行っているんですよ。大好評です。役割を与えると、本人のモチベーションもさらに高まります。
──でも今後、社員が増えたら対応できますか?
今後は、役員クラスにも僕と同じように面談してもらいます。役職者はそうして一人ひとりと向き合っていくためにあるので、それが機能しなければ役職や階級を設けないフラットな組織でいいと思っているんですよ。
大阪のGDPを世界一にする
──今後も大阪にこだわった店舗展開を?
そうですね。「大阪のGDPを世界一にする」と本気で思っています。スローガンは「世界から大阪へ、大阪から世界へ」です。
──大きな夢ですね。
これをね、大学の先輩でもある某大手飲料メーカーの役員に言ったら、「お前、感動的なこと言うなぁ」と言ってくれました(照笑)。
──具体的な計画はありますか?
大阪に観光にきたら、24時間楽しめるコンテンツを当社ですべてそろえたい。食事を楽しむ店、そのあと飲みにいける店、観光で疲れたら体を休めるマッサージ店があってもいいですよね、そんな具合です。
──大阪の経済はこれからですね。
大阪をプラットフォームに、全てそろうような仕掛けを考えたいです。時代に合わせて人の求めるものを我々が大阪の中で提供していきます。
──元マーケッターの巽さんらしいお言葉ですね。
私の夢は、世界一の人気店をつくること。そして世界一働きたい会社をつくりたいです。そのために必要なら、株式上場をめざしたり、ファンドを組成することも考えますよ。
──2019年は大阪初の世界遺産「百舌鳥・古市古墳群」の登録、2025年には大阪万博もあります。大阪をさらに盛り立ててくださいね。今日はありがとうございました。
編集後記
お話をうかがっていて感じたのは、巽さんは「人が好き」な方だということ。たくさんの人に囲まれて育ち、今は多くのスタッフとともに邁進中!目下、外国人スタッフのためのコミュニティの場を作っているところだそう。「日本に来て困ったことや相談したいことは、国籍に関係なく同じなんじゃないかな」。ゆくゆくは一般の人も巻き込みながら輪を広げていくそうですよ。人と人が繋いでいく輪、国際色豊かな大きな輪がまた生まれそうです。
<インタビュー・記事作成:杉谷 淳子、撮影:Banri>


