
店長職として実績を重ね、いざマネジメント職へ。
しかし、いざ統轄店長やエリアマネージャーの立場になってみると、「店長職」の時のようにスムーズにいかない。そんな壁に直面していませんか?
今回、株式会社パッションギークスで、名古屋エリアの飲食店7店舗を統轄する菅 崇弘さん(40歳)にインタビュー。
株式会社パッションギークスは、鰻専門店「うなぎ四代目菊川」を中心に、和牛業態「しゃぶしゃぶと焼肉わにく」ほか、居酒屋業態などFC含め40拠点を展開しています。
そんな成長真っただ中の企業で、店長から統轄店長という新たなステージで人材をマネジメントする菅さん。社員、アルバイト合わせて約70~80名の人材を遠隔で統轄し、重責を担いながら結果を出し続けています。ご自身を振り返っていただきながら、マネジメントの難しさ、大切にしていることを伺いました。
統轄店長という新たな役割~難しさは遠隔で人を介して人を動かすこと
──現在、名古屋エリアで統轄店長としてご活躍だそうですね。どんな業務を行っているのですか?
現在、名古屋エリアで和牛、酒場業態などの統轄店長を務めています。2024年12月より、しゃぶしゃぶや焼肉など厳選した和牛を使用した肉業態ブランド「わにく」の4店舗をはじめ、「板バ酒バ魚」「天ぷら酒場NAKASHO」、
中部国際空港の鰻専門店「天鰻 セントレア店」を含む計7店舗のマネジメントを担当しています。
日々、各店舗を巡回して運営状況を確認する「臨店(りんてん)」業務に加え、販促施策の企画提案や各種申請などの事務業務、QSC(品質・サービス・クレンリネス)のチェック、さらに社員・アルバイトの労務管理や教育、目標達成に向けたフィードバックまで幅広く担当しています。
会社と現場をつなぐ“パイプ役”として、店舗が持つポテンシャルを最大限に引き出しながら、全体の品質と成果向上に貢献しています。
──店長時代と比べて、統轄店長になって最も変わった点は?難しいと感じることはありますか。
これまでいくつかの飲食店で勤務してきましたが、この会社で初めて統轄店長というポジションに就かせていただきました。難しさはやはりありますね。
現場に自分がいないなかで、店舗が良い状態で運営できているかを、人を介して遠隔で把握・運営することの難しさを感じています。
指摘より対話を。信頼関係を基盤とした「人間性マネジメント」の実践
──遠隔でのマネジメントをスムーズに行うために何を心がけていますか。
自分の目が届かない部分を、いかにスタッフに任せられるかが重要だと感じます。
だから、まず店長やリーダーとなる適切な人材を、適切な店舗に配属することを心がけています。加えて店長を含めて、店舗の中心となるスタッフとしっかりコミュニケーションをとり、互いに信頼し合えるブレーンをつくっていくことでしょうか。
その方に上手に店舗をリードいただけるように支援し、自分なりに努力する。そのために臨店はどの店も均等に回っています。
──臨店では具体的にどのような点に注力しているのでしょうか。
人とコミュニケーションをとる時間を大事にしています。店をまわっていると、気づいた点をその場で指摘したい気持ちになることもありますが、概ね、それはグループラインなどで文書にして、「次の臨店までに改善してください」と指示しています。人によっては、その場で直接指導したり、言葉かけをする方が良い場合もあるので、ケースバイケースで対応しています。
しかし極力、臨店中は、スタッフからの相談やヒアリングに注力しています。特に、みんなのコンディションには留意し、確認するための時間に割くことが多いです。
それでも7店舗・総勢70~80名のスタッフ全員をフォローするのは難しいですね。店長からの指示の方が良いケースももちろんありますし、そこは協力しながらフォローしていく感じでしょうか。
──では逆に、統轄店長の楽しさや、やりがいはどういったところにありますか。
スタッフが仕事に満足感をもって働いてくれているなと感じるときですね。
例えば、接客時の良かったエピソードなどを、私に嬉しそうに話をしてくれたり、前回、店舗を訪れたときにアドバイスしたことが、しっかり現場で体現できていて、お客様にもその対応が響いて笑顔でいらっしゃる様子を見たときなどでしょうか。やはりスタッフの生き生き働いてる姿を見るときが、私が凄くいいなと思う瞬間ですね。
離職が続いた危機。大胆な「人材シャッフル」で乗り越える
──多くのスタッフをマネジメントするからこそ喜びも大きいですね。では、これまでで一番困ったことは何でしょうか?
スタッフの離職が続いた時がありまして。
「その人が辞めるから私も辞める」という連鎖が起きまして、組織でチームを作っていくことの難しさを痛感しました。
打開策としては、幸い、私の管轄が名古屋圏という限られたエリアだったので、ヘルプなどの応援を上手く行いながら、思い切って「人材シャッフル」の実施を担当部門へ提案。スタッフの配置をガラリと変えました。適材適所の人材配置の重要性を再認識しましたね。
──適材適所に人材を配置することは、言葉以上に難しそうですね
そうですね。結局は、単にスキルがあるというだけでなく、人間関係をしっかり構築できるように変えました。
「あぁ、これだと動きやすいな」「安心できるな」「この人の指示だったらわかりやすい、やってみよう」と思ってもらえるようにしたといいますか。
──統轄店長に就いても「なかなか後進がついてきてくれない」という悩みは尽きないと思います。多くの人をマネジメントする上で最も必要な資質は何だと感じますか。
統轄するというのは、人が人を介してする仕事です。だから、私はやっぱり「人間性」かなと感じています。とりわけ「信頼を得ることができているか」が大事なのではないでしょうか。
数値管理や指示は、ある程度、画一的に会社から落とされてくるものです。だから情報の伝達に長けている事よりは、もっとソフト面が大事といいますか。
簡単に言えば、先ほどもお話したように、スタッフに「その仕事をしてあげてもいいよ」と思ってもらえるか、ということが最も大事だと感じます。
──「人間性」は人としての根っこの部分なので、一朝一夕で変えるのは難しそうですね。
そうですね。ただ信頼を得るために、私は「一貫性」を大事にしようと決めています。「言動不一致」はしないよう、自分が言ったことと行動が違わないということは気をつけています。
これまでに自分が伝えたことで、後々スタッフが「前に教えてもらったことを実践したらスムーズにいきました」などと言ってくれたりすることがあります。そういう時は「伝わったかな」と嬉しく思います。仕事の経験も、コミュニケーションも、そうした一つひとつの積み重ねが大事だと感じます。
入社約2年半で、一般社員から店長、そして統轄店長へ
まずは自分の強みを活かしてより高みをめざす
──飲食店での経験も豊富でいらっしゃるので目覚ましいスピードでキャリアアップを実現されていますね。
いろんな飲食店で勤務してきた経験がありますが、ただ私は、新しいものを生み出すのは得意じゃなくて、どちらかというとトレース業務の方が向いているのかなと思います。
例えば、前職で、回転寿司やファストフード店での勤務経験があるのですが、ファストフード店で「頼んで10秒で商品が出てくる」のは普通のことですよね。
これが今の「しゃぶしゃぶと焼肉 わにく ミッドランドスクエア店」などの高単価の大箱店でできたら付加価値になります。
「ファストフード店並みのスピード感でご提供できないかな」
「それができるぐらい動けるオペレーションにできれば、何か不慮のアクシデントが起こっても速やかに対応できそうだ」
と考え、
では、どうしたらそれができるか実践をしていく。キャリアアップという点では、自分の持ち味を出してきた結果…ということになるのかもしれません。
──非効率な部分を見抜き、改善策を生み出せるというのは強みです。でもそれをわかりやすく伝えることは難しいです。
作業の効率化を図ることはよく行いますが、例えば繁忙期の大箱店で運営する場合は、決められたポジションをみんながしっかりこなすことが大前提です。
その中で、デシャップなど中核のポジションが、料理が順調に進んでるのを確認はしていますが、“作業的に漫然とこなしている”場合、
「ホールの人員の、【誰が・どこで・何をしているのか】を見えるように意識してみて」と視野の広げ方を具体的に伝えます。
また、調理場で肉をカットしている料理人には、部位によっての盛り付け方のバリエーションを広げ、パターンを考えておくことを指示しておき、いざ繁忙期には効率を考えて「このパターンでいこう」などスピードアップしてお出しできるようにしたり、まぁ細かいことを言えば色々あるんですけど。
マニュアルはありますが、それ以外のプラスアルファの部分を具体的に伝えていくことが多いですね。
当社の魅力はスピード感!変化を楽しむ人材にチャンスを与える社風
──株式会社パッションギークスの魅力は何だと思いますか。
「スピード感」ですね。会社の行動指針に、
「スピード|すぐやる。やると決めたらやり切ること」
という言葉があり、その通り、何事もスピーディーです。人事評価に関しても速度感があり、スキルや経験を積んできた人には大きなチャンスがある会社だと思います。
それにこの会社は、年齢は本当に関係がないです。現場で自分の魅力、特性を発揮すれば、それをみてくれる周りがいる。放っておかれることはない会社だと思います。きちんとした評価をもらえるので、自分次第でどこまでも進んでいける会社です。
だから、業務において安心・安定したいという方よりも、挑戦したり、自分を高めたり、自分が変化していきたいというタイプの方にすごく向いています。
和牛業態は、店舗数も含めて特にこれからなので、自由度も柔軟性もあります。ご自身が培ったものを活かしつつ、自分なりの変化、変革を試みる方なら、周りはしっかり評価してくれると思います。
──統轄店長としての業務がスタートして約1年ですが、次はどのようなことに挑戦していきたいですか
現場で自分一人が動いたところで、できることには限界があるので、マネジメントの仕事は業務を広げるうえで大事なポジションだと思っています。
現在、70~80人ほどの人材をマネジメントしていますが、100人、200人を統轄するという立ち位置に仮になったとしたら、自分のメッセージがどれぐらいまで伝わるのかという「可能性の上限」を見てみたいという気持ちはあります。
あとはマネジメントのジレンマとして、現場で動いていた自分との乖離があるのは正直なところです。ですが、そうならないように「自分だったらこう動くのに」というジレンマを、きちんと課題としてわかりやすく指示にして落とし込めるよう、早め早めの対策を心がけるようにしていきたいですね。
──どんな人が飲食業界で伸びると思いますか。
まず大前提として、食に対して興味がある方、食べることが好きな方でしょうか。飲食業界は労働集約型の業界なので「人」のパワーが肝になります。お客様から「美味しい」と言われたり、自分の知識が褒められたりすることでモチベーションアップややりがいになると思える方なら、長続きするでしょうね。後は飲食業界に限らずですが、何かにトライする際に、「やってやれないことはない」と考えられる方でしょうか。「無理だ」と決めるのは簡単ですが、そこを「1%の可能性からどうすればできるか」を考えようとする、自分で伸びしろを増やせるタイプの人が伸びると思いますよ。
編集後記
菅さんのお話で、マネジメントとは「人が人を介してする仕事だから」という言葉が印象的で、至極当たり前の言葉なのですが、だからこそ単なる「管理」ではなく、人としての「信頼」が大切なのだということが明確に伝わってくるお話でした。
厳しい局面での大胆な人材登用や、臨店での「指摘より対話」を重んじる姿勢は、スタッフ一人ひとりのモチベーションと成長を何よりも大切にされる、菅さんの信念の表れだと感じます。
次のステップ、100名、200名という新たなステージでのマネジメントにおいても、きっとさまざまな困難と、それを乗り越える大きな喜びがあることと存じます。その際には、ぜひまた、そのご経験を伺わせていただきたいと感じた取材でした。
本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。








