インタビューにこたえる濵﨑さん


都心にありながら、どこか温かく落ち着いた雰囲気を醸し出す、株式会社オーイズミフーズ運営のアメリカンレストラン「バターミルクチャネル」。今回お話を伺ったのは、柔らかな物腰の中に料理への確固たる信念をのぞかせる、同ブランド原宿店の料理人である濵﨑さん。NYスタイルのカフェで10年、その後は和食の世界へ。異色の経歴を持つ彼が、なぜ今、アメリカ料理の厨房に立つのか。その半生と、料理を通じて見据える未来について、じっくりとお話を伺いました。

NYスタイルのカフェ、和食、そしてアメリカ料理へ。異色の経歴が拓いた新たな道

──まず、これまでのご経歴と、オーイズミフーズに入社されたきっかけについてお聞かせください。
前職は、中野にあった古民家風の和食店で働いていました。個人経営の小さなお店で、良くも悪くも料理長や店長が自分のお店のように腕を振るう、個性が光る職場でしたね。ただ、正直なところかなりの激務でして…体を壊してしまい、しばらく休職することになったんです。
実は、和食の世界に進む前は、NYスタイルのカフェで10年ほど働いていました。アルバイトから始めたのですが、気づけばすっかり長く続けていて、業務のほとんどは調理。今もそうですが、当時から全部手仕込みでソースから何から作っていました。その経験があったので、体を休ませた後、『もう一度、洋食の世界で挑戦してみよう』という気持ちが芽生えてきたんです。そんな時、たまたま登録した転職サイトを通じて紹介されたのが、このオーイズミフーズでした。

──そもそも、料理人になったきっかけは何だったのでしょうか?
お恥ずかしい話ですが、大学に8年くらい通って、結局卒業できなかった時期がありまして(笑)。将来何をしようか、本当に途方に暮れていたんです。そんな私を見かねたのか、祖母が『あんたは昔から、家族が風邪をひいた時なんかに、よくお粥とかを作ってくれたじゃないか。板さんになりなさい』と言ってくれたんです。自分ではすっかり忘れていたのですが、その一言が妙に心に響いて。ちょうどその頃、NYスタイルのカフェでアルバイトを始めたのが、この道に進む直接のきっかけになりましたね。洋食も和食も経験しましたが、根本にある『料理が好き』という気持ちは、ずっと変わりません。

「大雑把」は大きな誤解。多民族国家が育んだ、素朴で奥深い“コンフォートフード”

──「バターミルクチャネル」のコンセプトと、そのコンセプトを日々の調理でどのように表現されているか教えてください。
正直に言うと、入社当初は『アメリカ料理』と言われても、フライドチキンくらいしかパッと浮かばなかったんです。でも、いざ働き始めて深く調べてみると、今では日本でも定番のシフォンケーキやチョコレートブラウニー、あるいはエッグベネディクトといった食のスタイルまで、その多くがアメリカ発祥だとも言われているということを知りました。
調理法も非常に興味深い。例えば、「バターミルクチャネル」のNYにある本店のオーナーは、有名な調理学校でフレンチを専攻していたそうで、料理のテクニックにはフレンチのベースが色濃く反映されています。出汁の取り方一つとっても、アメリカでもチキンの出汁は基本ですが、そのアプローチにフレンチの技法が活かされているんです。
何よりアメリカは多民族国家。イタリア、フランス、イギリスといったさまざまな国の移民が、母国の料理と現地の食材を融合させてきた歴史があります。特にニューヨークの『ソウルフード』は、アメリカに渡ることになったアフリカ系アメリカンの人々が、故郷にはない現地の食材で自分たちの魂の料理(ソウルフード)を作り上げたのがルーツ。安くて栄養がつく、フランスの郷土料理や田舎料理に通じるような、生活に根差した知恵の結晶なんです。
店名にもなっている『バターミルク』もその一つ。バターを作る過程で分離してできる液体なのですが、高タンパクで低カロリー。これをフライドチキンの衣に使ったり、パンケーキに添えたりする。実はとてもヘルシーなんです。最初はもっと大雑把な料理をイメージしていましたが、実際はとても素朴で、塩味なども自分で調整できるような優しい味わい。これこそが、心と体を満たすアメリカのコンフォートフード、心安らぐ料理なのだと、日々実感しながら厨房に立っています。

──お客様には、どのような食体験を提供したいとお考えですか?
やはり、多くの方がまだアメリカ料理に対して漠然としたイメージしかお持ちでないと思うんです。だからこそ、『え、これもアメリカ料理だったんだ!』という新しい発見と驚きを提供したい。フライドチキンだけじゃない、奥深く、多様性に満ちたアメリカの食文化の扉を開く、そんなきっかけになれれば嬉しいですね。

調理中の濵﨑さん

フレンチの技法と和食の心。一切の妥協なき「手仕込み」こそが最大の強み

──競合する他のお店と比べて、ご自身のお店の強みはどこにあるとお考えですか?
「どこまでやっているかは分かりませんが、うちは牛も鶏も、基本となる出汁、フォンを店で引いています。例えば、名物のフライドチキンに使う鶏は、丸鶏の状態で仕入れて自分たちでさばきます。そうすると、必ず背骨などの鶏ガラが出ますよね。それを一度オーブンで香ばしく焼き、香味野菜と一緒にじっくり煮込んで出汁を取る。これはアメリカ料理の基本であり、フレンチの技法にも通じるものです。
牛ステーキも同様で、大きな塊肉で仕入れて自分たちで筋や余分な脂を取り除くのですが、そのスジ肉も捨てず、焼き付けて旨味を凝縮させ、ステーキソースのベースにするんです。『鶏料理には鶏のソースを、牛料理には牛のソースを』という、素材を余すことなく使い切るこの一貫した姿勢、この手間を惜しまない『手仕込み』こそが、私たちの最大の強みだと自負しています。
また、素材に向き合う姿勢は、和食の世界とも通じるものがあると感じています。本店のシェフは、毎朝近くのマルシェに足を運び、その日の最高の食材を自らの目で見極めてオススメメニューを決めるそうです。私も和食店での勤務時代、毎日のように中野の市場へ買い出しに行っていました。料理を作るだけでなく、仕入れからお客様の口に届くまで、全ての工程に責任を持つ。その感覚は、国や料理のジャンルが違えど、料理人として共通のものなのだと思います。

──日々の仕事の中で、特に意識されていることは何ですか?
入社以来、ここ「バターミルクチャネル」原宿店の料理長からは本当に多くのことを学ばせてもらっています。特に『常に先々のことを考えながら動く』という視点は徹底していますね。私たちの強みである『手仕込み』は、一つ工程がズレ込むと、すべてが間に合わなくなってしまう諸刃の剣でもあります。だからこそ、日々の予約状況を正確に把握し、スタッフのスキルに合わせて的確に役割を割り振る。食材の納品された状態によっては、業者さんとしっかり交渉する。常に自分が料理長だったらどう判断し、どう動くかを考えながら、店全体を俯瞰するように心がけています。

料理写真_フライドチキン&チェダーチーズワッフル

仲間と描く未来。この場所から、本物のアメリカ料理を広めていく

──仕事をしていて、最もやりがいを感じるのはどんな瞬間ですか?
それはもう、お客様からいただく『美味しかったよ』の一言に尽きますね。普段の営業時はもちろんですが、当店では結婚式の二次会などで貸切パーティーを承ることもあります。お客様の人生における大切な一日に関わらせていただき、私たちの料理で少しでもお力添えができたと感じる瞬間は、何物にも代えがたい喜びがあります。

──オーイズミフーズという会社で働くことの魅力は何でしょう?
これほど大きな店舗で働くのは初めての経験です。貸切で一度に100名近いお客様をお迎えし、限られたメンバーで最高の料理とサービスを提供する。このダイナミックな経験は、大きな店舗でしか得られないと思います。仕込みから発注、スタッフのマネジメントまで、店舗運営の全てを考えながら実践できる環境は、今はまだ勉強の毎日ですが、確実に自分自身の成長と強みになっていると実感していますね。

──最後に、今後の目標と、どんな方と一緒に働きたいかをお聞かせください。
上司である料理長からは、『早くシェフになれ』と常に発破をかけられています(笑)。その期待に応えることが、まず一番の目標です。そして将来的には、この『バターミルクチャネル』が2店舗、3店舗と増えていき、私たちが信じる本物のアメリカ料理の魅力を、もっと多くの人に広めていくことができれば、それ以上に嬉しいことはありません。
一緒に働く仲間としては、経験は一切問いません。とにかく『料理が好き』な人。自分で作るのが好き、作って誰かに食べてもらうのが好き、その根っこの部分さえあれば、どんな方でも大歓迎です。その気持ちさえあれば、必ず続けていけるはずですから。

調理中の濵﨑さん

編集後記

インタビューを通して、濵﨑さんの言葉の端々から「探求心」と「誠実さ」が感じられました。アメリカ料理という、ともすれば大味で画一的なイメージを持たれがちなジャンルに対し、その歴史的背景や多文化が融合した調理法を深く学び、敬意を払う。そして、その魅力を最大限に引き出すために、フレンチの技法や和食の心にも通じる「手仕込み」という地道な作業を、一切惜しまない。濵﨑さんが作る一皿には、単なるレシピを超えた、料理への愛と物語が詰まっていることでしょう。多くの日本人がまだ知らない、本当のアメリカンコンフォートフードの世界が、ここに広がっていました。

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