
個人店から大手外食企業まで幅広い運営形態を有する飲食業界。
着実な成長を遂げている多店舗展開する外食企業なら、浮き沈みの少ない安定した収入が本当に得られるもの?
外食企業の利益は一体どうやって生み出されるの?
クックビズ総研編集部が調べてみました。
平均年収947万円の企業も!!
まず、飲食サービス業界における平均年収ランキングのデータをご覧ください。
飲食サービス業界の平均年収ランキング
- WDI 947万円
- ダスキン 782万円
- BRサーティワンアイスクリーム 750万円
- リンガーハット 679万円
- モスフードサービス 667万円
- ゼンショーホールディングス 667万円
引用:業界動向サーチ.com ※平成25年3月決算(他時期決算企業あり)における飲食業界各社有価証券報告書による統計
社員の平均年収が1000万円近くあるWDIは、半世紀にわたる歴史ある企業。
イタリアンブームのさきがけとなった「カプリチョーザ」はじめ「グランドセントラルオイスターバー」「アクアヴィット」などで専門店の新境地を開き、ここ最近ではハワイ発のパンケーキ専門店「エッグスンシングス」やニューヨーク発祥の朝食専門店「サラベス」を日本に上陸させています。
7位以下は、スターバックスコーヒージャパン、サトレストランシステムズ、ココスジャパン、トリドール、プレナス、ダイナック、木曽路、サンデーサン、あみやき亭、アスラポートダイニング、ペッパーフードサービス、サガミチェーン、松屋フーズなど、35位までが平均年収500万円以上で登場しています。
業界動向サーチ.comは統計を50位まで出していますが、最下位の50位の年収でも、468万円です。
“平均賃金”からみる外食産業の格差
ここにもうひとつ、提示したいデータがあります。
宿泊業、飲食サービス業につく男性30~34歳の平均賃金は249.4千円(2011年度)
引用:厚生労働省/平成 23 年賃金構造基本統計調査(全国)の概況
というものです。
上記の平均年収ランキングとのこの差はなに?
と思った方もいるでしょう。
国内67万店ある飲食店の規模や経営スタイルはものすごく多様です。
さらに店舗ごとの経営状態・業績の実情はさまざま。
ざっくり言ってしまえば、繁盛店か業績不振店かということで利益配分は大きく揺れ動きます。
ここでは触れませんが、現時点では業績が芳しくないけれど、将来性は見込める、あるいはその逆といった先を読む目も必要になってきます。
ただ、飲食業界は確固たる年収の格差がある、ということだけは言えそうです。
その中で、上記のランキングにあるような年収の高い企業は一体どうやって利益を上げているのか?
そこには多店舗展開の外食企業ならではの理由があります。
外食企業の利益の仕組みを知っておこう
飲食業界の中でも多店舗展開している外食企業が高年収を可能にしている理由は一体なんなのでしょうか。
一般に、多店舗展開やフランチャイズチェーンなどの外食企業の利益は、そのスケールメリットによるところが大きいとされています。
スケールメリットとは、「規模の経済性」すなわち「規模を大きくすることで得られる利益」のこと。
つまり、店舗数を増やし、食材を増やすことで、効率を上げ、より多くの利益につなげることです。
たとえば、キャベツ1個を仕入れるより、キャベツ1000個を仕入れると単価は下がります。
また、店舗ごとに調理するのではなく、セントラルキッチンでまとめて調理すれば、各店舗の設備、管理などの負担を軽減できます。
このように小規模よりも大規模な経営の方がコストダウンにつながり、それにより利益率が上がります。
外食企業においては、スケールメリットをいかにして得るかが、成長していく上での大きな使命とされています。
時代を読んだ多店舗展開戦略に注目!
店舗をたくさん出店すればその分利益率が上がるので、より大きな規模で展開するほうが有利となるわけですが、その店舗展開のあり方はさまざまです。
メディアでも露出が多く知名度の高いひとつのブランドで展開する企業だけでなく、最近では、地域や客層にきめ細かにマッチングさせた多業態経営で展開する企業も躍進しています。
多業態で出店することにより、エリア特性に柔軟に対応できる分、失敗のリスクを回避しやすいメリットがありますが、業態ごとに店舗オペレーションが異なるので、スケールメリットをどれだけ活かせるか効率化の知恵と工夫が運営を左右していくことになります。
いずれにしろ、外食企業では、スケールメリットありき、ということをふまえ、企業がそれぞれどんな戦略でどのようにスケールメリットを高めていくかが、社員の収入にも大きく影響してくるのです。
※参照1:総務省統計局「経済センサス・基礎調査」平成21年
※参照2:農林水産省>外食産業の現状
(記事作成:峯林)