
風通しの良さが質を上げる!
──面談を通してどういった成果が見えてきたんでしょうか。
店長がやり方を変える、あるいは代替わりして、いろいろな風通しがよくなりました。大事なことをみんなで協力して、できるようになっていったんです。
一番変わったのは、料理です。珉珉はランチタイムがすごく忙しいんです。多くて300人をさばかないといけない日もある。60席が5~6回転します。それはもう目のまわる忙しさです。
その忙しいときに、注文分だけのチャーハンを作っていられない。でも一度にたくさん作ったチャーハンは味にばらつきが出ます。味にばらつきのあるチャーハンを食べて、お客さんがまた店に来るかといったら、来ないですよね。
とにかく「待たせてもいいから、きちんと作ろうよ」と伝えていきました。なぜそれが必要かも説明して、どんなに忙しい状況でも、できる限り良いものを出すことを徹底しようと。
餃子の「焼き置き」もやめて、注文が入ってから焼くことを徹底しました。
もともと「珉珉」では国産の野菜と肉、新潟産コシヒカリの米、上質な油、食材にとことんこだわってきました。料理人の腕も高い水準を維持してきた。
ちゃんとダシを取って、前日に仕込まずその日に仕込む。食材は冷凍せず、注文が入るたびに冷蔵庫から出す。
これを各店長の裁量の元で、出来る範囲で徹底する。それだけで変わると思いました。
あれこれ意見を出して、またその店に食べに行って。当時は1日2食をお店で食べていましたね(笑)。一つひとつスタッフにきちんと話を聞いて、どこまでならできるのかを相談していきます。3年くらい、ずっと続けました。
そうしたら見事に「おいしくなった」と口コミが広がったんです。
──料理人ではない古田さんがそこまで?
中華料理は職人仕事ですから、料理の腕や知識については僕は彼らを全面的に信頼しています。
そうではなくて、これはどんな職業にも通じる部分だと思いますが、当たり前のことを当たり前にする。つまり手抜きをしないという部分が重要だと思ったんです。それは素人の僕でも理解できることでした。
新規出店は自分の目と足で
──では、ある程度、東京は落ち着いたと。
最終的には売上をあげることが僕の仕事です。6店舗に減った東京の“人”や“料理”が安定すると同時に、“出店”の計画を立てました。ボロボロな経営状況だった東京では、いい場所の出店オファーは期待できません。そこで、自分で目星をつけ調査しました。
──調査とは?
目をつけた場所にある飲食店に入って、来店者数を数えたんです。ランチタイムは12時から2時まで、夜は6時から9時半くらいまでです。計数器を片手に「この店は席数70席でランチタイムに150人くらい入っているから、うちなら席数45席でも170人は来るはずだな」とか。
ビジネスマンがターゲット層なので、周りにどういう企業がどれくらいあるのかも調べました。だいたい1店舗の出店で2週間は続けました。結局、飯田橋、浜松町、虎ノ門に出店しましたが、そのすべてで実施しました。
──すごいですね。3店舗の出店を調査して。
はい、東京は9店舗になり、2015年には大阪の売上を抜きました。
「収益増」への転換
──本拠地の関西はどうだったんでしょう。
大阪は頑張っていましたね。実は東京の改革も、大阪の営業部長と一緒におこなっていました。部長は改革の時に3年間、東京に来てくれていたんです。本当にありがたかった。今では彼が営業本部長で全店を管理しています。
問題は京都でした。東京が落ち着いた後、京都の店をつぶさに見て、改革の必要性を感じました。というのも京都の4店舗は老舗であることに依存して、新しい試みが何もされていなかった。売上もシビアな状況でした。
2015~16年にかけて、京都の改革に乗り出しました。まずは店の改装。そして東京の改革と同じことを持ち込みました。すると意外なほどスピーディに売上が伸びました。京都4店舗の月の総売上が約2,000万円から2年で4,000万円を超えるまでに倍増しました。
店のみんなも「すごい」と思ってくれて、僕自身もかなり自信がつきましたね。
2018年には、全エリア合わせて、目標だった総売上20億円を達成しました。
辞めた人が「戻りたい」と思える会社へ
──今の「珉珉」で働く魅力ってなんでしょうか?
自分たちで決めて、店を運営していけること。その手応えがあることだと思います。メニューも引き継がれているレシピ以外は自由に考えてもらっています。
1店舗あたりに正社員の料理人を4人~6人置いて、勤務時間を短縮し、一人の負担を減らしています。ルールとして決めた5連休の有給休暇も、今年は全員に取ってもらえました。
この連休も、当初は2週間の設定でしたが、従業員から「長すぎてすることがない」と反対意見が出て、結局5連休になりました(笑)。シフトを本部が一括管理し、他店からヘルプを入れることで上手く回っています。
飲食業界は定着率の低さが課題といわれます。実は「珉珉」でも若い料理人が「もっと中華料理を追求したい。新しいことに挑戦したい」と辞めることがあります。前向きな理由なので、僕は止めたりはしません。
ところがみんな戻ってくることが多いんです。「珉珉」の良さを実感してくれてのことでしょうね。今度も二人、戻ってくるんで嬉しいですね!大歓迎で迎えます。
空は飛べない でも背伸びはできる
──古田さんの地道さは、どこから来るのでしょう?
もともと性格が細かいんですよ。経費もかなり細かく、しかも全部を見ます(笑)。
学生起業したときに、ビジネスの手法をコンサルタントの方に教わったことがありました。その時に言われたのが「空は飛べない。でも背伸びはできる」ということ。
「いきなりすごいプログラムを考えても誰も使えない。でも、今の課題を改善するものならすぐに使ってくれるから、そういうものを作らないといけないよ」と。なるほど、そうだなと思いました。そのことが今も心に残ってますね。
──これから「珉珉」でめざすことは?
僕には“理想の「珉珉」”というのがあって、まだそこには辿りつけていないですが、今できることを細かく目標を立てて、一つずつやっていくことが大事だと思っています。新規出店は料理人が育たないとできないので年間1店舗のペース。本当に今の現場を大切に一緒に少しずつ成長していきたいと思っています。
あと、大阪市淀川区にある工場に、初代が買った“冷えにくい冷蔵庫”があるので、それをまずは買い換えたいです(笑)。
編集後記
「珉珉」改革のモチベーションを「自分しかやる人がいなかった」と古田さんは語ります。本人にとっては受け継いだものの重みを背負っていくということなのかもしれません。
ただそこにあるのは、常なる冷静さ、本質を見抜く細やかさを武器にした徹底的な「現場主義」。
現在も古田さんは毎月、店のスタッフたちと面談しています。彼らが未来に大きな希望が持てるように、古田さんはさらなる改革へ情熱的に取り組んでいます。
<インタビュー・記事作成:峯林 晶子、撮影:Banri>
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