自らが経営するお店の中で笑顔で腕組をするクラマ計画の佐竹さん

多様性を活かす“非中央集権型”組織

──逆に組織であることの魅力は?
3つあると思います。
まず「資金面」。店舗を増やしていくことで資金力がついてきます。
次に、皆で働く=共働の喜び。すなわち、「チームワーク」ですね。
そして「多様性」。いろんな人材が社内にいればいるほど、いい面を取り入れて組織全体がよくなっていくという考え方です。

──なるほど。多様性は、どういう場面で活かせるんでしょう?
個人店では、店に所属している数人であらゆることを決めていきます。でもそれだけだと、各自の実力以上のものは出てきません。

これが組織だと、周りにいろんな経験やアイデアを持っている人がいるんです。そういう人たちの力をプラスアルファできたら、より良い店が作れます。でも多様性が一番難しいですね。
多様性を活かして、やりたいことをより面白くやるために、いろんな問題にぶつかりながら改善を繰り返してできたのが、今の“非中央集権型”と呼んでいる形ですね。

佐竹さんが手に写真をもっているバストアップ写真

──役職も上下関係もないという。では、どのようなつながり方なのでしょう?
みんなが社員としてそれぞれに決裁権を持っているんです。そして、全員が見られるグループチャットを活用して、相談したいことがあるときに、いろんなアドバイスが受けられる仕組みにしています。
たとえば、ある店舗でメニューを変えようとなったときに、そこに意見を挙げれば、全員がチャットを見ることができます。

「こういうメニューにしようと思っているんだけど、どう思いますか?」という相談に、「こんなメニューがあったよ」とか「このソースは変えた方がいいんじゃない」とか、いろんなアドバイスをするんです。
決裁権は相談者にあるので、そのアドバイスを受けたうえで、相談者が自分で判断します。

──なるほど。多様性がアドバイスという形で活かされていると。
ここで大事なのは、このアドバイスが査定に直結している点です。
うちの会社では、社員全員で査定に参加します。

「あ、このヒトすごい発想だな」「いつもいいこと言うな」「このヒトの言うことを参考にしたらうまくいくな」というアドバイスは、査定でプラスに評価されます。よいアドバイスが多い人ほど評価され、発言力も給料も上がっていく仕組みなんです。

robata279の外観の写真

テクノロジーの恩恵と“シェア”という価値観

── “非中央集権型”組織の仕組みは、これまでにない新しさを感じます。
社員同士のつながりのインフラである「グループチャット」というテクノロジーの恩恵は確実にあると思います。僕たちの組織の仕組みも、誰でも使えるレベルに普及しているチャットというツールがなかったら実現できていなかったかもしれません。なんといっても無料ですし(笑)。

──社員全員をつなぐツールが組織作りを可能にしたと。
技術の面ではそうですし、メンタルの部分も変化があると思います。
いまってモノからコトに消費が変わり、シェアリングエコノミー(※2)という発想も生まれてきています。僕の考え方もそこに近いというか、「やりたいことがあって、それをするためにみんなが集まっているのが会社」という認識です。

僕がたまたま必要な資産、お店や会社を持っているんで、それを提供して、みんなでシェアして、利益を上げて、それを分配するっていうイメージですね。
※2:シェアリングエコノミー/個人が保有する遊休資産の共有・交換を、SNSなどのインターネット上でサービス展開する仕組みのこと。飲食業界でも、空間シェア、宅配シェア、人材シェア、食品ロス改善といったサービスで参入している。

──面白いですね。でも、いわゆるピラミッド型の組織も、合理的ではありますよね。
ピラミッド型組織も、情報を流通させ、運営する仕組みのひとつだと思うんですよ。
これまでの基本的な起業の考え方は、自分が何かやりたいことがあって、そのために会社を作るというもの。ただ一人ではそれができないから、手伝ってもらうために人を雇って給料を払います。給料を払っているのに言うことを聞いてくれないと僕だって「腹立つなあ」と思うはずです。

ピラミッド型の組織を表した図

ただ僕らの会社はそうじゃなくて、みんながそれぞれに持っているやりたいことのために、それぞれのスキルや資産を活かせるからシェアしていこう、という発想です(非中央集権型)。そうすることで、よりアウトプットを強いものにできるとも思っています。
だから別に「社員にはこうしてほしい」というのは全然なくって、僕の言うことを聞いてもらう必要もないんです。

非中央集権型の組織を表した図

行動指針は「誰のためになっているかを考える」

あと僕らの会社には、ビジョンやミッションはないんですが、行動指針があるんです。

──そうなんですか?
ビジョン、ミッションは、やりたいことが日常の仕事のなかで、実現できているから必要ないと思っています。ただ、決裁権が個々にある組織で、「僕はこう思う!」と一人で全部決めてしまったら、回らないじゃないですか。

そこで生まれたのが「あらゆる判断を、周りの人に相談してください」という行動指針です。相談の内容の大小はあるとは思うんですが、ちっちゃい話だと店舗内で相談してもらう。ほとんどのことはこれで済みます。
店舗のなかで「これは外にも相談したほうがいいんじゃない?」ということになったら、店舗を超えて僕も含め、他の人に必ず相談してもらいます。

──なんでも相談ありきと。
要は「判断軸を自分の外側においてください」ということです。

店内の2階席を見上げた写真

うちの仕組みでいうと、現場に決裁権があるので極端な話をすると、焼鳥屋さんで魚料理を出したいと思ったら出すこともできるんです。でもそれって、自分がたまたま魚料理がしたいからやるのか、お客さまが喜ぶからやるのか。自分がやりたいだけなら、組織でやる意味はありません。

顧客満足度が上がるとか、社員全員が魚料理の勉強がしたいという意見が店舗でまとまったというのなら「そういうやり方もあるよね」、で全然いいんですけどね。
個人の欲求だけで物事を判断してはダメです、という最低限のルールですね。

飲食業界は、固定観念をくずせる人が多い

笑顔で語る佐竹さんのバストアップ写真
──決裁権が自分にあるというのは、自分で判断しないといけないということ。慣れない人には難しいかもしれません。
自分で判断ができない人も多いです。固定観念にとらわれていて。うちの会社に入ったからってマインドがすぐに変わるわけでもないですし、みんなが当たり前に信じている常識を溶かしていくのは簡単ではないですね。
でも飲食をやりたい若い人というのは割とあっけらかんとした人が多いです。
そういう人は柔軟ですね。

──確かに!飲食業界の若者は合っているかもしれませんね。
合っていると思いますね。飲食業界が好きな人は、料理が好き、人が好きという人が大半です。でも、やりたい仕事と、やらされている仕事が違うことが世の中には本当に多い。それが高い離職率の原因のひとつにあるのかなと思います。
逆にやりたいことができる環境さえ作れば喜んで来てくれるし、楽しく働いてもらえますよね。僕はそれもあって、やりたいことができる環境を維持していきたい。そうすれば、おのずと人は集まってきますから。

店頭に立っている佐竹さんの写真

──クラマ計画さんは、創業から足掛け10年で2人から100人の組織になっています。10年後には200人になっているかもしれませんが、将来的な組織のイメージは、また今とは違いますか?
基本的には、いまの仕組みは人が増えれば増えるほど、いいことがあるんじゃないかと僕は思っています。できる限りは維持してやっていければと。ただ、未来がどっちに方向付けされているかは僕も分かりません(笑)。

──佐竹さんの「人生の折れ線グラフ」(下部)を見る限りは、未来もずっと好調ピークが続いていますよ(笑)。
人生はずっとピークに楽しいしかないなあ、と思うんです。考え方次第じゃないですか。「良いことばっかりやなあ」と思っていれば、そうなるんじゃないかと。よく未来は変えられると言いますが、過去も変えられるんじゃないかと思うくらいです。

──自分の中の記憶の問題だという。
脳の仕組みは、たいがい楽しいことのほうを覚えているらしいんです。嫌なことは消去されていくらしいんですけど、そうなったら過去も変えられると思いませんか(笑)。

佐竹さんの右肩上がりの人生グラフの画像

編集後記

40歳。「若く見られる」といわれるのも納得の、ほんわかした雰囲気の佐竹さん。話す内容は論理的かつユニークです。佐竹さんのいう「非中央集権型」は、もともと仮想通貨の流通の概念。今後、ポスト・ピラミッド型ビジネス組織として広がっていくのではないか、といわれています。組織作りを楽しそうに話す佐竹さんの姿に、目の前にもう新しい時代が来ているんだなあ、としみじみ感じました。

<インタビュー・記事作成:峯林 晶子、撮影:Banri>