インタビューにこたえる安冨総料理長


日々の食卓を彩り、時には人生を豊かにする「食」。その奥深さに魅せられ、長年にわたり料理の道を究めてきた一人の料理人がいます。今回は、日本を代表する外食・レジャー企業の一つ、カトープレジャーグループの一角を担う株式会社ケー・エキスプレスの取締役兼総料理長の安冨敬三さんにインタビュー。次の新作メニューの試食会の中、お邪魔をさせていただき、お話を伺いました。

学生時代に芽生えた「ものづくり」への興味から、厳しい修業時代を経て、数々のヒット業態を牽引する現在のポジションに至るまで、料理、そして「食」への想いをお聞きしました。

つるとんたん_おうどん_料理写真

変わり種のおうどんメニューが豊富にあり、選ぶ楽しさがあるのが「つるとんたん」流。

料理人としての原点と揺るぎない探究心

──「料理」の世界に入ろうと思ったきっかけを教えてください
学生時代から、なにか形になるものを作っていくことが好きで、その中でも「料理」を選んだのは、やはりそれが日々、身近にあるものだからです。

人間が生きていく上で、料理を口にすることは必要不可欠なことですよね。小さい頃から料理を作っていたわけではないのですが、「どうすれば美味しいものが作れるんだろう」といった興味が大きく、進路を決める段階で、思い切って料理の世界に飛び込みました。

──当時は厳しい修業もあったのではないでしょうか。
そうですね。ただ、できなかったことができるようになる、その階段をひたすら上っていくのが、私にとっては快感で、新しいことをクリアしていく楽しさが常にありました。
日本料理に携わって40年近くこの道にいても、まだまだ分からないこと、知らないことがたくさんあるんです。教わって覚えても、まだまだ尽きない。今でも修業の途中だと感じています。

料理の正解は1つではない。セオリーより食べる人の笑顔が真実

──料理の道、一筋に40年。料理への向き合い方で変化してきたことはありますか?
変化はものすごくありますね。最初は先輩の言われた通りに行っていたんですが、この会社に入ってから、お客様との距離が近く、お客様の反応がリアルに伝わってくるようになったんですよ。
それで「もっとこうしてみようか」と自分で考える立場にもなったところでガラッと変わりましたね。「絶対こうしなきゃいけない」と思っていたものが、「お客様が喜ぶなら変えていくべきだ」という考えに変わりました。
これは今でも感じることですが、たとえ料理のセオリーがあっても、多くのお客様が望んていることが「こっちだ」となれば、それが正解だったりもします。20年前にこの会社に入る前は、自分が美味しいと思うものが正しいと信じていましたが、「いや、そうじゃないよ」ということに気づかされました。
飲食業において、お客様に食べてもらって喜んでいただき、また来ていただくことが一番大切。これはビジネスの上でも非常に重要なことです。

──おうどん専門店「つるとんたん」は日本だけでなく、海外でも好評ですね。「つるとんたん」の成功の要因はなんでしょうか。
ビジネスとしては、やはりマーケティングがしっかりできていて、ブランディングによって認知がかなり広まったことが大きいと思います。
調理に限っていえば、やはり自社製麺にあるのではないでしょうか。これだけの店舗数と麺の量ですから、これまでに外注を考えなければならないタイミングもありました。
しかしグループ代表の加藤からは「お店で麺を打っていかなければならない」という話があり、それを守り続けてきたんです。
「つるとんたん」は、内装や器の大きさ、従来のうどんの概念にとらわれない斬新なメニューが注目されがちですが、しっかりとした美味しい麺とお出汁があること。これこそが強みであり、お客様に受け入れられている要因だと考えています。

試食会中の安冨総料理長

挑戦と成長を続けるリーダーシップ

──一般職から、料理長、さらに総料理長へとキャリアアップする過程で、大切にしていることはなんでしょうか
料理長、課長、部長とキャリアアップするにつれて、管轄するエリアが変わり、責任の重さも増していきます。部下の数も増えるため、いかにしっかりと伝えるか、という「発信量」が非常に重要だと痛感しています。

料理長であれば一つの店舗のキッチン内で完結しますが、課長、部長と昇進し、今の総料理長という立場になると、数十店舗、ひいてはエリア全体を束ねることになります。今日も試食会がありましたが、その中でどう伝えていくか、ということがキャリアを上るごとに重要になっています。

──後進を育てることは大事ですね。
はい。それには自発的に動ける環境を整えてあげることが一番だと考えています。決められたことをこなすだけでは、成長は望めませんから。
その人自身が何を望んでいるのかをしっかり把握した上で、裏で支え、コミュニケーションを取りながら自発的に動けるような環境を作ってあげること。これが人材育成における大きなポイントだと思っています。

それにどんなに役職が上がろうとも、私にとっても仲間はかけがえのないものです。今、私の下で料理部長を務めてくれている者がいます。部下というよりは、同世代なのですが、彼とは本当に10年以上一緒に仕事をしています。二人三脚ではないですが、助け合いながら、これからも共に成長していければと思っています。

役職上は部下と上司ですが、お互い刺激し合いながら進んでいく関係です。「こう思うんだけどどうかな」と相談もしますし、私が大阪で新業態を開発する際にも手伝ってくれたり、東京の管理を任せて安心して出張できたりと、本当に支えられているメンバーです。

試食会の様子

試食会の様子。一つひとつ丁寧に吟味し、アドバイスを行う。

料理人は「人」にとって最も身近な職業の一つ。だからなくならない誇れる仕事

──今後、新たに挑戦していきたいことはありますか?
私たちのグループは、高単価な業態からカジュアルな業態まで幅広く展開していますが、一貫して言えるのは、使う食材やジャンルが違っても「美味しい」という軸は変わらないということです。これは感性の話なので言葉にするのは難しいですが、その「美味しい」という一本の軸は、これからもずっと変わらないでしょう。

「つるとんたん」はおかげさまで多くの方に知っていただき、長年にわたり定評をいただいています。しかし、そこに甘んじることなく、今後は「つるとんたん」に続く新たなヒット業態を創出することが、私たちにとっての大きな課題であり目標です。

個人的に今、勉強したいと思っているのは、中華業態ですね。会社としてフレンチやイタリアンはいくつか展開していますが、和食が中心で、中華は沖縄エリアに一部ある程度で、あまり手掛けていません。私自身、20年前に「うどん」という未経験のジャンルに挑戦したように、また新たなことにチャレンジしたいという思いがありますね。

──これから料理人を目指す若い世代に向けてアドバイスがあればお願いします。
料理の世界は、途中で辞めていく人も非常に多いのが現状です。しかし、人間は食べなければ生きていけませんから、食に関わる仕事は基本的になくならないと考えています。
そして、誰もが楽しく食事をしたいという欲求を持っているはずです。その欲求に寄り添えるこの仕事は、本当に素晴らしい仕事だと思いますので、ぜひやりがいを持って続けていただきたいです。

世の中には数えきれないほどの仕事がありますが、料理人は「人」にとって最も身近な職業の一つではないでしょうか。東京だけでも何万、何百万という店舗があり、街中に飲食店が軒を連ねています。

だからこそ、「誰にでもできる仕事でありながら、誰よりも上手に」と私自身教わってきました。そんな目標を持てる人になってほしいと思います。

安冨総料理長

編集後記

安冨総料理長のお話から、料理への想いと、お客様への真摯な姿勢が伝わってきました。
料理人として社内トップの座に就いても、なお飽くなき探究心、そして次世代を育てる温かい眼差しを持ち続け、まさにトップランナーとしての矜持を感じさせます。

日本料理の常識を超えて、常に市場とお客様のニーズに応え、新たな「食」の体験を創造し続けるカトープレジャーグループの挑戦は、これからも私たちの五感を刺激し続けてくれることでしょう。

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