荒井シェフ


東京・大手町でカトープレジャーグループが運営する「TRATTORIA CREATTA(トラットリア クレアッタ)」。旬の食材を活かした本格イタリアンが楽しめるこの店で、若き料理長として厨房を率いるシェフ・ド・キュイジーヌ、荒井さんに話を伺った。フランス料理の世界から転身し、入社わずか半年で副料理長、そしてその半年後には料理長に抜擢。その躍進の裏には、料理と仲間に対する揺るぎない哲学があった。お客様の「美味しい」のために、日々大切にしていることとは何か。その情熱の源泉と、荒井さんが描く未来に迫る。

行動で示し、背中で語る。若き料理長のチームビルディング論

──料理長に就任されるまでのスピードには驚きました。まずは、これまでの職務経歴を教えてください
カトープレジャーグループに入社して3年ほどになりますが、入社から半年で副料理長に、さらにその半年後には料理長に就任させていただきました。自分でも驚くほどのスピードでしたが、期待に応えたい一心でしたね。

現在は料理長として、調理業務全般はもちろんですが、スタッフの指導にも力を入れています。調理技術だけでなく、片付けや掃除といった細やかな部分まで、誰よりも目を光らせ、誰よりも率先して行動する。それが私の信条です。『言うだけ』では人はついてきてくれません。私自身、これまでさまざまな飲食店で働いてきましたが、口ばかりで行動が伴わない上司の下では、誰も納得して動けないものです。だからこそ、私は行動で見せることを何よりも大切にしています。

──チームワークやコミュニケーションで大切にしていることはありますか?
私が尊敬している上司がいるのですが、8年ほどその人の下で働いています。料理の腕はもちろん、仕事への意識が誰よりも高い方で、私はその背中を見て育ってきました。だから自分も、口先だけではない、行動で示せるシェフでありたいと常に思っています。

また、スタッフとのコミュニケーションは意識的に増やしていますね。特に用事がなくても、通りかかったアルバイトさんに声をかけたり。
笑顔を取り繕うだけの上辺の関係ではなく、本音で話せる関係を築きたいんです。忙しいときも大変なときも、職場に気の置けない仲間がいて、『楽しい』と思える時間があれば乗り越えられるはずだと思っています。一日中誰とも話さずに仕事をするのは私には辛いですから。キッチン内でもホールでも、積極的に話しかけるようにしているおかげで、厨房とホールの垣根がなく、休憩時間も一緒に過ごすほど仲が良いですよ。

お客様の声が、次の一皿への羅針盤。創造性の源泉とやりがい

──このお仕事のやりがいは、どんな瞬間に感じますか?
やはり、自分が考えた料理をお客様が喜んでくださった時、それに尽きますね。当店はオープンキッチンではないので、お客様の表情を直接見ることはできません。だから、サービススタッフに『どうでした?』『美味しかったって言ってた?』としつこいぐらい聞いています(笑)。彼らから『〇〇テーブルのお客様が、あの料理をすごく喜んでいましたよ』と伝え聞いた時は、メニュー開発の苦労も吹き飛ぶほど嬉しいです。

もちろん、良い反応ばかりではありません。お皿に残してしまわれた場合も、なぜそうなったのか、お客様がどう感じられたのかを可能な限り聞いてもらうようにしています。そうした声の一つひとつが、次のメニュー開発への貴重なヒントになる。だからこそ、ホールスタッフとの日々のコミュニケーションが不可欠なんです。

──これまでで特に印象に残っている、お客様から好評だったメニューはありますか?
『鮎』を使った料理には、特別な思い入れがあります。以前、尊敬する上司が作った鮎の料理を食べた時、その美味しさに衝撃を受けました。それ以来、毎年夏になると自分なりに鮎料理に挑戦しています。若手料理人のコンテスト「RED U-35」(主催:RED U-35実行委員会、株式会社ぐるなび)に出場する際も、鮎をテーマにすることが多いですね。2021年と2024年には、ありがたいことにブロンズエッグという賞もいただきました。

昨年、常連のお客様にゴーヤを使った鮎料理をお出しした時のことは忘れられません。その男性のお客様が大変喜んでくださり、ご自宅でご家族にその美味しさを熱心に話してくださったそうで、なんと翌日のお昼に、奥様と娘様が『その鮎料理が食べたい』とご来店くださったんです。料理を通じて、人の心を動かし、繋いでいくことができる。これ以上の喜びはありません。

盛り付けをしている荒井シェフ

「好き」を貫くための、丁寧な仕事と成長を支える環境

──調理をする上で、最も大切にしている『こだわり』を教えてください
『丁寧な仕事』、これに尽きます。例えば、野菜の切り物一つとっても、忙しいからと手を抜けば、形やサイズは不揃いになる。でも、忙しい中でも『丁寧に』と意識するだけで、仕上がりは全く違ってきます。私たちは毎日何十皿と同じ料理を作っていますが、お客様にとってはその一皿が『初めて』かもしれない。そのことを常に心に刻み、『たとえ100回作った料理でも、お客様にとっては1回目の大切な一皿だよ』と、スタッフにも口酸っぱく伝えています。

──「カトープレジャーグループ」で働くことの魅力は何でしょうか?
一言で言えば、『今まで働いてきた中で一番、楽しく仕事ができている』ということです。その理由の一つに、『ガンバレーション』という評価制度があります。これは、正社員やアルバイトといった立場に関係なく、日々の頑張りを年に2回、目に見える形で評価してくれる制度です。メニュー開発から手がけるなどすれば、お客様からの『美味しかった』という言葉だけでもやりがいを感じられますが、一般のスタッフ、特に若手はそうした機会が少ない。忙しく業務をおこなっている中で心が折れそうになる時もあるかもしれませんし、こうした明確な評価制度が大きな目標やモチベーションになる。これは本当に素晴らしい制度だと思います。

また、『キャリアチェンジ制度』も魅力です。例えばイタリアンの料理人がフレンチや和食を学びたいと思った時、普通は会社を辞めるしかありません。でも、当社や当社のグループではフレンチの店舗もあれば、うどんの『つるとんたん』、ホテルや和食店も運営しているので、会社を辞めずに全く違う業態に挑戦できる。安心して新しいスキルを学べるチャンスがあるのは、大きな強みですね。

荒井シェフと鈴木店長

料理人としての現在地。大きな夢より、目の前の一皿に情熱を

──今後の目標や、この仕事を通じて実現したいことはありますか?
ちょっと前でしたら、故郷の北海道に自分の店を持ちたい、といった独立の夢も漠然と抱いていました。もちろん、その気持ちが全くなくなったわけではありません。ですが今は、そうした遠い未来の大きな夢よりも、もっと目の前のことに意識が向いています。『今日の、そして明日の、お客様にどうすれば喜んでもらえるだろうか』『来月のメニューはどんな食材を使おうか』。そうやって日々の課題と向き合い、一皿一皿に全力を注ぐこと。今はそれが私のすべてであり、最大の目標です。小さなことの積み重ねかもしれませんが、これこそが料理人としての本質だと信じています。

──最後に、荒井さんの「料理」に対する情熱の源泉を教えてください
物心ついた頃から、なぜか料理人になりたいと思っていました。小学3年生の文集にも『コックさんになりたい』と書いてあったほどです。一度は美容の専門学校に進んだのですが、結局こうして料理の世界に戻ってきました。本当に『好き』なんでしょうね。

好きでやっていることだから、忙しさを言い訳に仕事を雑にしたくない。好きで選んだ道だからこそ、自分の料理を誠実に、最高の状態でお客様に届けたい。この『好き』という気持ちが、私の情熱のすべてです。そしてこの想いが、私だけでなく、共に働く仲間たちにも伝播して、チーム全体でお客様に更なる喜びを届けられるようになったら、これほど嬉しいことはありません。

インタビューにこたえる荒井シェフ

編集後記

インタビュー中、荒井シェフは何度も「好きだから」「楽しいから」という言葉を口にしていらっしゃいました。この言葉にブレることなく、料理長という重責を担いながらも常に笑顔で対応してくださり、料理と仲間への愛情に満ち溢れているようでした。

休日のリフレッシュ法は「近所の銭湯でのサウナ」と語る親しみやすい一面も。
荒井シェフの創り出す一皿には、確かな技術と経験に加え、「丁寧な仕事」という誠実さと、「好き」という純粋な情熱が溶け込んでいる。
そんなシェフが率いる「TRATTORIA CREATTA」の厨房から、これからどんな心躍る料理が生まれてくるのか、期待せずにはいられません。

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