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飲食業界での働き方には、大きく2パターンがあります、多店舗展開している企業に入って組織の一員としてキャリアアップしていく方法と、いわゆる「職人」として専門技術やノウハウを習得して将来の独立を目指すという方法です。

後者の「職人」であれば、やはり厳しい世界ですし、相当の決意がないと続けるのはむずかしい。
今回は、そんな職人を採用する際の面接方法、さらには育成術までを、関西屈指のうどん人気店、「三ツ島 真打」の店主、山本さんに教えていただきました。

面接から本音で語る「お金が欲しい、休みが欲しいだけなら、飲食業は辞めておけ」

三ツ島真打

───最近で2名を採用されたそうですが、三ツ島真打流、職人の採用ポイントは何ですか?

山本氏:ウチ(三ツ島 真打)では、なんといっても情熱・熱意が第一。やはり結局は「うどん」「お客様」が好きで、覚えたいという意欲の高さにたどりつきます。

飲食業界というのは独特な業界で「好き」じゃないとやっていけないんですよ。
これまでウチに修行させてくださいって何人も来たけど、全員に必ず伝えるのが「お金が欲しい、休みが欲しい」だったら飲食店はやめとけ、と必ず言っています。

面接で、いいところだけでなく、きついところもしっかり伝える

───面接から、厳しいことを伝えて、「覚悟」があるかどうかを確認されているんですね。

山本氏:厳しい・きつい・しんどい、でも覚えたい!美味しいうどんをお客さんに出したい!それだけの想いがあるのならウチで教えるよ、と。ただ、面接ではみんな必ず「熱意はあります!」って言うんです(笑) 。だから試用期間を1週間なり1ヶ月なり期間を設けています。その期間はしんどいと思っても何とか続けてもらうようにお互いに約束をし、その期間で自分で無理だと思ったら辞めても全然OKですと伝えています。そして再度試用期間後にお互いの意思を確認し、本格的に修行に入るという流れをくんでいます。

有名料理店出身のスタッフを、破門にしたこともある

───採用においては、これまでの経験は重視されるのでしょうか?

三ツ島真打メニュー
山本氏:当然経験や技術・知識があれば活かせるけれど、一番大切なのは、「うどん」「お客様」が好きで、覚えたいという意欲の高さですから。これまでの経験は重要ではありません。過去に「将来、うどん屋出したいんです!」といってものすごい経験・キャリアを持った子が修行しに来ていたことがありました。超有名な老舗日本料理店で長年和食の料理人を勤め、さらにイタリアに行って現地でイタリアンの勉強もしていたという子だったんですが、修行中に「破門」にしたことがあります。

その子は技術は確かに持ってました。ただ、「うどんをナメてた」んです。キャリアやプライドもあったのでしょうが、お客さんが見てないからといって食材や道具を大切に扱わない、それが俺としては絶対に許せないことなんです。
「見えない所だからこそ手を抜くな」って俺は弟子に常々言っているんですよ。しんどい時は楽をしたくなる、手を抜きたくなるのは当たり前。ただそれは全部お客さんを裏切る行為につながる。お前の目の前にいるのは店主である俺じゃなく、お客さんなんだと。お前が雑に食材や道具を扱う行為はお客さんを裏切っていることになるんだぞ、と。

言ってしまえば、挨拶がちゃんとできる、話しかけた時にしっかり返事ができる、食材・道具を大切にできる…子供の時から親に言われてきたことや当たり前のことができれば、たとえ不器用でもこちらも根気強く、しっかりと教えますよ。また、そういう子は他の店に行っても必ず可愛がってもらえるんですよね。

食べログベストレストラン2012を受賞

師匠の真似では、成功できない時代。独自性、新しいものを生み出せる人材を育てたい

───今、「三ツ島真打」で修行されている方に、「こんな風に育っていってほしい」などありますか?

山本氏:まずはウチの店の味や基本をしっかり覚えてもらわないといけないけど、そこからはどんどん「自分のオリジナル」を作り出せるようになって欲しいです。今の時代、飲食店てどこにでもあるし、色んなお店があるじゃないですか。そんな中で生き残っていくにはどんどん新しいことを発信できる、オリジナルを持っているお店じゃないと生き残っていくのは難しいですよ。

ひと昔前ならば、有名店なんかで修行したら「その師匠の味をしっかり再現していかないといけない」みたいなものがありましたけど、それだと生き残っていけないと思うんです。実際、俺が知ってる古いお店や歴史あるお店でも、独自のメニュー、新しい料理を作っていけずに厳しい状態に・・・なんて話も聞きます。
例えば、ウチであれば「熟成麺」というものを取り入れて独自のメニューを作ったりと「自分のうどん」を作り出してお店出してなんとか10年以上やってきました。時代の流れにあわせてどんどん新しいものを生み出していけるようになってほしいですね。

編集後記

三ツ島真打店主の山本さんと採用した2名ノスタッフ

非常に熱く「飲食店経営者」として、そして「職人」としての想いを語ってくださった店主の山本さん(右画像中央、両脇は最近採用した2名のスタッフさんです)。
お話を聞かせていただく中の随所に「うどん」や「お客様」そして「飲食業」への愛情の深さを感じました。また、その想いが実際に形となり、毎日行列の絶えない名店「三ツ島 真打」となって表れているのでしょう。

山本さんは、毎週月曜日に「マンデー会」といって、うどん店の同業者やメディア関係者などが集まって交流・情報交換をする会を行っているそうです。たとえば、お弟子さんが店を出した時にはこの「マンデー会」で宣伝し、実際、大阪・阿波座にあるうどん屋「あぶく」はオープン4日目でメディア取材を受けたんだとか。
飲食店が厳しいと言われる昨今、自分の店で修行をした人材が成功するよう、独立開業後もバックアップ体制を整えていることは、働くスタッフさんにとっても心強いと思います。
(取材・記事作成:世古)

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