神楽坂の料亭

焼き場・揚げ場

このポジションあたりから「下積み」を抜けたという認識になります。
修業を重ね、焼き台や炭火を使った焼き物、てんぷらなどの揚げ物など、いよいよ加熱調理を担当できるようになります。

かつて何十人も調理場にスタッフがいたときは、焼き物・揚げ物の持場が分かれていたこともあったようです。
現在はよっぽど大きな調理場でない限り、「加熱調理担当」の総称として「焼き場」と一括りにされていることが多いようです。

四角いお皿の上に鰆の西京焼きが盛り付けられている。

焼き場、揚げ場の大切な心得

料理の美味しさは、味だけではなく火の通り具合でも左右されます。
冷菜よりも、その場で加熱する料理は技術とスピードが求められるため、追い回しで得た手際や段取りが試されます。

また、捌いた魚を焼き物用に切りつける作業も行います。
将来的に「板場」では刺身全般をうけもつことになりますが、魚を扱うという意味では、その予行演習にもなるポジションとなります。

煮方・蒸し場

「味つけ」を担う重要なポジション。
すべての料理の味付けを担当し、チェックするのが役目です。
店の味を守るのは煮方ですから、店によっては煮方さんの方が板前さんよりも重要な位置づけをされている場合もあります。

出汁をとったり、茶碗蒸しを蒸したり、煮物やお吸い物の味を決めたり、先付け・八寸場お突き出しのためのお浸しなどの料理を用意して、盛り付けにまわしたりします。

お鍋に美しく透き通った出汁が入っており、金色のお玉ですくっている様子

煮方の大切な心得

お店全体を見る立場なので、調理場の業務進行の采配をふるうのはもちろん、下積みの若手育成なども重要な仕事になってきます。
毎日、一定のクオリティを守りながら味付けをしなければならないので、味覚を大切にしなければいけません。

体調管理はもちろん、

  • 味の濃いものやスパイスがたくさん入った料理は普段から食べない
  • 調理前にコーヒー、ジュースは飲まない
  • チョコや飴などの舌に味がまとわりつくものは食べない

というように、高いプロ意識を持って仕事をしています。

板場

お刺身を担当する「板場」は、和食料理の現場では最も重要なポジションです。

カウンター割烹のお店では、客前に出て刺身を切りつけることも多いので、接客なども大切な役目になります。
主な担当はもちろんお刺身の切りつけですが、先付け・八寸・お吸い物などに使うの鮮魚の切り付けも担当することもあります。

まな板の上で魚のブロックを包丁で切り付けている

板場の大切な心得

お刺身を切るというシンプルな仕事こそ、実力の違いがハッキリ分かれます。
生のまま食材を口に入れる刺身の場合は、切ることがそのまま味に直結するので、高い集中力が必要です。

客前で刺身を切りつけることは、エンターテイメントとしても喜ばれますが、所作の美しさ、お客様を喜ばせる会話など、柔軟で繊細なサービスも求められます。
技術だけではなく、人間力も必要になります。

一切れ一切れのサイズが違えば見た目としても悪い上に、美味しい一口の大きさは食材に寄って変わります。

また毎日包丁を研いで、常に最高の状態の包丁でお刺身を切れるようにしておかなくてはなりません。

まとめ

右手に魚を持った笑顔の寿司職人の男性。

いかがでしたか?
日本料理の世界では、下積みに始まって、ある程度決まった修業ステップがあることがおわかりいただけたでしょうか?
修業の段階を追うごとに、技術力を高め、より店舗運営全体に目配りできるようになります。

また、旅館やホテルなどの大きいお店になれば、全てのポジションに「脇(わき)」と呼ばれる補佐がつくこともあります。
「脇鍋」「脇板」といったポジションは、先輩の仕事をサポートしながら技術を引き継ぎ、習得していくのです。

逆に小規模のお店になれば、下積みと盛り付けを兼務したり、焼き物・揚げ物・蒸し物・煮物を一人がまとめて担当することもあります。

  • 美味しい料理ができる
  • 美しい盛り付けができる

これができていれば板前として認められる訳ではなく

  • 段取り
  • 客席・調理場を含めた現場全体への気配り

を身につけることで、一人前の日本料理人に近づくことができます。

また、一通りのポジションを経験しても、奥深い日本料理の世界では探究心を持って技を磨き続けていくのが料理人の道であること、修業に終わりはなく、苦心しながらも向上し続けることを楽しめるのが料理人です。

さて、今回は日本料理の修業の流れについて、ステップを追いながらご紹介しました。
ひとりでも多くの方に「日本料理」の仕事に興味を持っていただければ幸いです。


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