こんにちは!クックビズ総研編集部の杉谷です。
飲食業界で働くみなさんの中には、将来、地元や田舎に帰って、飲食店を開業したいと考えている人もいるのでは?
しかし、残念ながら田舎暮らしに失敗するケースも多々あるようです…。
高知県で移住者支援を行う NPO法人 れいほく田舎暮らしネットワーク事務局 川村幸司さんに話を聞きながら、私が仕事を通し、移住者の方とお話してきた中で見えてきた、失敗しない田舎暮らしについて探ってみました。
目次
田舎で飲食店をやってみたい!移住フェア、就農セミナーの人気が上昇。地方へ行けば憧れのスローライフが手に入る?
最近は東京、大阪など都市圏を中心に、移住フェア、就農セミナーが花盛り。
一時はシニア世代のセカンドライフとしてブームだった田舎暮らしが、最近では20~30代を中心とした世代へと移り変わってきています。
雇用環境が悪化して、「都会での豊かな生活」を手に入れにくくなった今、時間に追われがちな都会を離れ、豊かな自然の中でゆったりとした生活をしたいと考える人が増えているようです。
交通網やネットインフラが整備され、働き方も多様になり、都会に住まなくても仕事ができるようになってきたのも一因。
有名人が田舎暮らしを始めたり、最近では、人気ブロガーであり、ITジャーナリスト、コンサルタントといくつもの顔を持つ、イケダハヤトさんが高知に移住し、ネット界で注目を集めています。
しかし、地方で行けば憧れのスローライフが手に入るのでしょうか!?
失敗ケース、成功ケース、それぞれ見ていきましょう。
失敗ケース1~田舎の常識 VS 都会の常識
田舎では、自動車は必需品。買い物も病院も歩ける範囲にないので、どこに行くにも自動車で出かけます。
ある時、移住して間もないAさんと、代々そこで暮らすBさんが接触事故に。
お互い怪我もなく、車の損傷も少なかったのは良かったのですが…。
Bさんは、「保険会社を介するまでもない」と双方のみで示談で話をすすめようとするのに対し、あくまでも保険会社をはさんで解決したいAさん。
田舎では“お互い様”の気持ちで、持ちつ持たれつで成り立っていることが多いので、都会で一般的とされる保険会社を通した事故処理=“円満解決”が理解されなかったよう。
溝が深まり、Aさんは田舎での暮らしに頭を抱えることになりました。
こんな時、「相談にのってもらえる頼れる人を見つけておくとスムーズな解決ができたはず」と川村さん。
自立心旺盛な人にはありがちかもしれませんが、自分一人で解決しようと思わずに、地元の人に相談することがポイント。
相談するのが上手な人になりましょう。
自分のプライバシーを出せる人の方が、相談にものってもらいやすいですよ。
同じ移住者仲間の先輩も見つけておくのもおすすめです。
★アドバイスPOINT★
「相談できる頼れる人を作っておこう」
失敗ケース2~柔軟性+バランス感覚のある人になろう
田舎でも都会でも柔軟性のある人は、人間関係をスムーズに築けるものです。
特に田舎では、都会と違って住人が少ない分、自分の考え方が正しいと主張しすぎると、あっという間に浮いてしまうことも。
都会から農業をしたいとやってくる人の中には、有機栽培で野菜作りをしたいと希望に胸をふくらませて移住してくる人も多いのだとか。
栽培方法について、既存の農家さんに意見したり、否定するような言動があると、折り合いが悪くなり、一人で悩みを抱えるケースも少なくないそう。
周囲の人からアドバイスがあれば、自分が思う方法と異なっても、まずは素直にお礼を述べましょう。
相手は良かれと思って助言しています。
自分のこだわりを大切にしながらも、感謝の心をもって、柔軟に対応しましょう。
また反対に、何もかも周囲に合わせようとしすぎると、自分のやりたいことを見失ってしまい悩む羽目にも。
価値観は人によって違うと考えて、意見を闘わせずに、耳を傾ける気持ちの余裕を持てるといいですね。
アドバイスPOINT
価値観は人それぞれ。考え方・思想で闘おうとしないこと
成功ケース~田舎の人が就かない仕事から始めてみよう
田舎での安定した就職先といえば公務員かJA。
ただでさえ、受け皿が少ない田舎での仕事探しは、移住者にとって悩みの種です。
収入源を得るポイントは、単純明快。
ズバリ、田舎の人が就かない仕事から始めること。
例えば臨時職員、アルバイトといった待遇からスタート。
田舎では家賃や駐車場代が安く、比較的、低収入でも暮らしていくことはできます(※1)。
「都会でしっかり仕事をしてきた人は、田舎でも十分やっていける」と川村さん。
スピードと効率を要求されながら働いてきた経験が田舎で大いに役立ちますよ。
特に、デザイン、プログラマーなどの専門職は人材が少なく需要があるのだそう。
あなたの働きぶりは、仕事仲間はもちろん、たくさんの人が見ています。
テキパキと仕事をこなし、まじめにコツコツ取り組む姿が信頼につながり、正社員に引き上げられたり、次の仕事の依頼が舞い込むことも少なくないようです
★アドバイスPOINT★
「周囲に協力的で、まじめに仕事に取り組めば、信頼も高まり、収入もステップアップ!」
※1 高知県れいほく地域なら、一戸建て&駐車場付きで2万円代という物件も。夫婦共働き、シェアハウスという手を使えば尚暮らしはラクに♪
田舎暮らし10ケ条
移住は人生の大きなターニングポイント。
せっかく時間も費用もかけて引っ越したのに、そそくさと都会に逆戻りなんてことにならないように、田舎暮らしのポイントを心得ておきませんか。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
参考出展/れいほく田舎暮らしネットワーク
1.家族とよく話し合って決めよ
自分だけの思いや都合で移住を決めないで、家族とよく話し合おう。
周囲の理解を得ていれば、移住後の暮らしもスムーズにスタートしやすい。
2.助走期間を十分にとろう
思いつきや勢いで移住を決めない。
勇んで来る人は田舎暮らしに対して夢見がち。
移住は、人生の大きな決断。就活をするのと同じで、候補地探しはできるだけ数多く見てまわろう。
移住に対する自分の価値観が定まり、判断基準が見えてくる。
3.季節のいい時期だけを見て移住先を決めない
移住先を決めるなら、最も過ごしにくい時期に訪れてみるのもおすすめ。
冬の寒さ、夏の暑さ、雨が多いなど、厳しい時期を試してみてからでも遅くはない。
4.移住の形はいろいろ。週末移住や季節移住もひとつの形
最近では2拠点居住も増えている。
少子高齢化もあり、親や家族が都会に住んでいる場合、将来、都会に戻る可能性も。
フレキシブルに移住を考えよう。
5.不動産屋がない地域も。仮住まいをしながら情報収集すべし
田舎では不動産屋がない地域もあり、物件探しは、行政に頼るなど都会では考えられないほど情報源が少ないもの。
本当に気に入った物件に出合うためには、仮住まいをし、街の様子を理解した上で、情報収集するのが回り道のようで早道。
クチコミこそ大きな情報源。
6.農地付き物件はあるようでないと心得て
農地付きの家屋は人気物件。
農業をしたい人にとっては、家と農地が隣接しているのはメリットだが、物件数が少ないのも現実。
田舎では家と農地が離れているのは普通。
良い農地、良い物件は分けて考えた方が、満足するものに出合える。
7.体力、気力のあるうちに決断しよう
移住に勇み足は禁物だが、年月をかければいいというものでもない。
引越しはただでさえ、体力がいるもの。
ましてや慣れない田舎暮らしをするなら、フットワークの軽いうちに仕事や生活基盤を整えるのがおすすめ。
8.自動車、パソコンは必需品
田舎では、買い物、病院など、移動はとにかく自動車が基本。
運転免許証がない人はまず免許取得を。
また情報の少ない田舎こそ、インターネットがなくてはならないツールになる。
9.田舎の行事には積極的に参加しよう
田舎の行事や地域のイベントは、貴重な情報源。
地域の寄り合い、奉仕作業、祭りの協力などは惜しまずに。
狭いコミュニティなので、誰が来てないのかはすぐバレる。
10.田舎暮らしをスタートしたら、毎日を謙虚に頑張ろう
田舎は、コミュニティが狭いので、知らず知らずのうちに、あなたの行いが見られているもの。
見張られていると考えずに、見守られていると思って謙虚に頑張ろう。
いざという時にみんなが助けてくれるはず。
まとめ
「れいほく田舎暮らしネットワーク」事務局の川村さんは、田舎に移住するなら、第2のふるさとを探すような気持ちで探すのもおすすめだと話します。
気になる土地があれば、何度でも訪れてみましょう。
移住者のネットワークや活動が盛んなところも多いので、移り住む前に、そういったコミュニティとつながりをもっておくこともポイントだそうですよ。
これまで私は、農業インターンシップの仕事を通じて、様々な移住者の方に出会いました(下記インタビュー記事参照)。
その中で感じるのは、田舎暮らしをエンジョイしている人たちに共通しているのは、『謙虚な気持ちとたくましさ』だということ。
行動力のある積極的な人に限らず、控えめで穏やかな人でも、粛々と何かをやり続ける粘りのある人が多いとを感じます。
いかがでしたか。参考になりましたか。
昔ながらの生活様式や文化が、今もゆるやかに人の生活に結びついている田舎暮らしは、私にとっても憧れです。
皆さん、それぞれのスローライフの実現に向けてがんばってくださいね。
■ 私が出会った移住者の方々(インタビュー記事のみ、一部抜粋です)
パン&カフェ REIHOKU FARMER´S CAFE
農業生産法人 株式会社れいほく未来
おおとよ塩かえる農園
菓子工房&カフェ ぽっちり堂
【れいほく田舎暮らしネットワークから、イベントのおしらせ】
日本の原点と未来を訪ねる旅~「ふるさとという最前線in高知れいほく地方」
日時/9月20日(土)、21日(日)
場所/高知県れいほく地域(講義+フィールドワーク)
共催/NPO法人れいほく田舎暮らしネットワーク、東京芸術学舎の共催
■ 取材・協力/NPO法人 れいほく田舎暮らしネットワーク
高知県土佐郡土佐町田井1450
TEL:0887-72-9303
FAX:0887-72-9304
E-mail:reihoku.in@gmail.com
■ 取材・文/杉谷淳子