木下シェフコラムタイトル

こんにちは。イタリアン料理人の木下です。
「飲食業界で独立を考える料理人に送る10のメッセージ」、第9回のテーマは、「競合店比較でわかった!お客様がレストランを選ぶ基準は料理じゃない」です。

人気店を訪れたとき感じた、料理以外のお店の魅力

僕が料理の仕事に就いて5年目くらいの頃でしょうか。
勤務していたお店のメニューもすべて自分で考えて作れるようになり、他のお店に食べに行っても出された料理が大体どのように作られているのかが分かるようになったぐらいの時期です。

当時雑誌などにもよく掲載されていて、周りの人からも良い噂を聞く人気店に、ディナーを食べに行ったことがありました。

パーティの前

前もって予約をしていましたが、最寄駅に着いてからの道が分かりにくかったので、電話して行き方を聞いてからうかがいました。

お店に到着した時には、入口の外でシェフが待っていて店内へ案内してくれました。

店内は満席、カウンター越しに見えるキッチンスタッフは忙しそうに動いていましたが、とても楽しそうでした。
スタッフ同士で飛び交う言葉も元気で活気があり、カウンターに座っているだけでその雰囲気に酔いしれウキウキとした気分になりました。

料理以上に、お店を差別化する決め手とは?

料理に関しては驚くほど美味しいと感じるものはありませんでしたが、当時僕が感動したのは、忙しいのにもかかわらずシェフが自ら店先でお客様を迎え、最後は見送ってくれたこと。そして、店内の活気ある雰囲気でした。

それ以降も、それなりにいろんなレストランに食べに行く機会がありますが、どこも素敵なお店ばかりです。ほとんどどこへ行っても美味しい料理を食べることができます。同じ客単価ぐらいのお店を敢えて比較評価すると、やはりサービスやお店の雰囲気で差が出てくると思います。

アルバイトイメージ(女性)

お店の要素をサービスと料理の2つに分けるとすると、7:3ぐらいの割合でサービスのほうが大事だと、僕は考えています。

時にはサービススタッフの判断と指示で調理法や使う食材を変えることもありますし、何よりも、料理がお客様に届く最後まで手にしているのはサービススタッフだからです。
料理の向きやタイミング、説明の仕方、お皿の出し方によっても、味わいやお客様の気分が大きく変わってしまいます。

お店に対する印象は、スタッフの対応しだいで変わる

レストランで食事をしていて、こういう経験をしたことはないでしょうか。

サービススタッフが今、手にして運んでいる料理。おそらく自分のところへ持ってきてくれるだろうと察していたら、隣のテーブルに運ばれてしまいました。

案の定、隣のお客様は「これ頼んでないですよ」と言い、慌ててスタッフが「失礼しました」と料理を下げキッチンの方へ戻ります。
そしてもう一度伝票を見て提供先を確認した後に「お待たせしました」と、その料理がようやく自分のところへやってきます。

もうこの時点で、料理に対する気持ちは萎えてしまいます。

しかし、この後にでも「先ほどは失礼しました」と、デザートやコーヒーなどサービスを施すことで、お客様の気分を持ち上げることができます。
この辺りの部分は、ずっと厨房で料理をしているスタッフには分からない、サービスの機微とお客様の心情の変化だと思います。

雰囲気やサービスが、お店のファンをつくる

乾杯

僕がイタリアンバールで働いていた時は、ありがたいことに前の職場やそのもっと前の職場の時から続けて来ていただいていたお客様がおられました。週に1回以上来られる常連のお客様を含めても、来店時に料理をオーダーされない場合もたくさんありました。

まあレストランとは系統が違うので、そういうお客様がいて当然なのですが、その時僕が感じたのは、自分が毎回必ず料理を作って提供しなくても楽しい雰囲気やサービスを提供することでお客様は来ていただけるんだな、ということです。

素晴らしい料理を作る料理人はたくさんおられます。
また美味しい料理を作ろうと努力している料理人もたくさんおられると思いますが、美味しい料理を作ること以上に、美味しいと思わせる環境を作ることの方が大切なのではないかと思います。

次回は、いよいよ「飲食業界で独立を考える料理人に送る10のメッセージ」シリーズ最終の第10回です。3月28日(金曜)に更新です!またぜひご覧ください。

<コラム作者紹介>木下誠吾

香川県出身。調理師専門学校卒業後、船上料理人として就職。その後イタリア料理店で、23歳にして料理長を任せられる。レストラン新店立ち上げ、店長兼料理長としてレストラン経営を任せられるも、あえなく閉店。その後、ダイニングバーへ転職し、2010年から「オステリア エ バール インコントロ」の料理長としてオープンから関わり、お店は界隈の人気店として定着。2013年からはイタリアンワイン卸会社へ転職。3年後の独立目指し、今はワインの知識と自身の人間性を高めるべく、毎日仕事に取り組んでいる。家庭では、バリバリ働く妻と4歳の娘がいる。

【連載企画/飲食業界で、独立を考える料理人に送る、10のメッセージ】

転職支援サービス