令和6年8月8日、外務省飯倉公館にて【令和6年度外務大臣表彰式】が行われました。この表彰式は、国際関係の様々な分野で活躍する団体および個人の功績を称えるもので、公邸料理人は17名が選出。表彰された17名の公邸料理人は、優秀かつ貢献度が高いことから「優秀公邸料理長」の称号が認定されました。
世界各国で活躍する公邸料理人は『食の外交官』と呼ばれ、その国の習慣や文化などを重んじながら、”日本食”の魅力を伝える重要な役割を担っています。
クックビズ総研では、優秀公邸料理長に選ばれた方々から届いた”喜びの声”とともに、公邸料理人を志したきっかけや、これから公邸料理人をめざす方に向けたメッセージを、vol.1・vol.2に分けてご紹介します。
支えがあるからこそ料理人として仕事の引き出しが増える:公邸料理人/優秀公邸料理長・天津 敏也さん
<プロフィール>
天津 敏也(あまつ としや)さん/1987年生まれ 千葉県出身都内の複数のイタリアンや、スウェーデン、イタリアのレストランで経験を積み、公邸料理人の道へ。
現在は、アルバニアで新たにお店をオープンするため準備中。
表彰対象在外公館名(勤務期間):在アルバニア大使館(令和2年11月~令和5年11月)
──公邸料理人を志したきっかけを教えてください
ずっと海外の飲食店で働いていたので、知り合いから”海外が好きならこういう仕事もあるよ”と紹介していただいたのがきっかけです。
公邸料理人について詳しくは知らなかったですが、海外で働けるならと登録だけしていました。
その後、コロナ禍のタイミングにお電話をいただき、当時勤めていたお店から「給料を全額保証できるか分からない」という話もあったので、そこで挑戦することを決めました。
──公邸料理人として心掛けてきたことは何ですか?
私はアルバニア大使館の初代公邸料理人として赴任するという貴重な経験をしましたので、後任の方も仕事がしやすいよう、アルバニアの方々の好みを把握するために現地の人やシェフとの交流、買い出しルートの開発、毎回メニューを変更しブラッシュアップすることを心掛けていました。
アルバニアの方々は初めて和食を召し上がられることが多かったので、コースの中で一つでも気に入った料理を見つけてもらえるよう、または楽しんでもらえるように考えて提供していました。
──公邸料理人でしか得られない経験や体験を教えてください
著名な方にお料理を作る機会があること、海外の文化に触れながら、感じ取った感覚を形にして日本の文化を知ってもらうことは、公邸料理人ならではかと思います。
──令和6年度外務大臣表彰、優秀公邸料理長に選ばれた際のお気持ちを教えてください
大使ご夫妻をはじめ大使館の職員の皆様、現地スタッフの皆様の支えがあってのことだと実感しており、とても感謝しております。
──公邸料理人をめざす方にメッセージをお願いします
海外ではもちろん文化も違いますし、手に入るものも違います。和洋料理のジャンルを問わず、柔軟に物事を考え、いろいろな方々の支えで仕事の引き出しを増やせるのが公邸料理人の魅力かなと思います。
その国の文化を学び、公館長と二人三脚でつくる新たな献立:公邸料理人/優秀公邸料理長・大川 悠太さん
<プロフィール>
大川 悠太(おおかわ ゆうた)さん/1987年生まれ 茨城県出身株式会社帝国ホテルにて10年勤務し、出向という形で公邸料理人として3年3ヶ月勤務。
表彰対象在外公館名(勤務期間):在イスタンブール総領事館(平成30年10月~令和4年1月)
──公邸料理人を志したきっかけを教えてください
若い頃から海外に行ってみたいという思いがあったためです。
身近な先輩も海外に出向し、そういった経験を経て現在も頑張っていらっしゃるので、私も追いつきたいと思い海外出向を希望しました。
──公邸料理人として心掛けてきたことは何ですか?
安心で安全な料理の提供はもちろんのこと、お客様に少しでも満足していただけるよう、国柄や食文化などを調べて嗜好にあった料理の提供を心掛けました。
実際、いろいろな国からゲストがいらっしゃるので、宗教の違いから使う食材に配慮することもあります。その都度公館長と相談しながら、ゲストの嗜好に歩み寄り、日本とその国の食文化を織り交ぜた献立を考えることが大きな学びに繋がっています。
──公邸料理人でしか得られない経験や体験を教えてください
日本では目にしない食材や文化などを身近に感じられ、常に新鮮な気持ちで仕事ができることです。
自分1人、異国で料理を作ることの大変さはありますが、頑張ったら頑張った分返ってくる仕事なので、とても良い経験になりました。
──令和6年度外務大臣表彰、優秀公邸料理長に選ばれた際のお気持ちを教えてください
とても光栄な事だと感じています。
こういった賞はなかなかいただけないと思うので、嬉しい気持ちでいっぱいです。
周りで支えてくださった皆様のおかげでやり遂げる事ができました。心より感謝いたします。
──公邸料理人をめざす方にメッセージをお願いします
日本とは違った文化に触れながら仕事が出来るので、新鮮であり自分を見直すきっかけにもなると思います。今まで勉強してきたこと、先輩から教えていただいた技術、さらに現地の文化との触れ合い、食材の見極めなど、できることややりたいことが最大限に活かせる仕事なのでやりがいは十分です。
大切なのは、謙虚さを常に持ち、親身になってくださるスタッフの方、現地の方に感謝の気持ちを忘れずに行動することです。海外に興味をもつことは素晴らしいことだと思うので、少しでも興味があればぜひ挑戦してほしいです。
大臣官房在外公館課
表彰対象者(17名/50音順/敬称略)
公邸料理人氏名 | 専門 | 表彰対象在外公館名 | 勤務期間 | 現勤務先 |
天津 敏也 | 洋食 | 在アルバニア大使館 | 令和2年11月~令和5年11月 | |
井口 啓裕 | 洋食 | 軍縮会議日本政府代表部 | 令和2年1月~令和5年12月 | WINSTUB 4416 |
石井 徹 | 和食 | 在タイ大使館 | 令和元年12月~令和6年3月 | 在タイ大使公邸料理人 |
石森 秀明 | 和食 | 在スロバキア大使館 | 令和2年7月~令和5年10月 | グランドプリンスホテル新高輪 和食 清水 |
井上 博幸 ※ | 洋食 | 在ベトナム大使館 | 平成20年2月~平成22年9月 平成26年3月~平成28年10月 平成28年11月~令和6年5月 |
在ベトナム大使公邸料理人 |
大川 悠太 | 洋食 | 在イスタンブール総領事館 | 平成30年10月~令和4年1月 | 株式会社帝国ホテル |
大津 尚也 | 和食 | 在メルボルン総領事館 | 令和3年1月~(在職中) | 在メルボルン総領事公邸料理人 |
岡本 純 | 洋食 | 在ベナン大使館 | 令和2年7月~令和5年9月 | LE CONCEPT Menu Super Chef |
川𠩤崎 幸一 | 和食 | 在ドイツ大使館 | 令和2年11月~(在職中) | 在ドイツ大使公邸料理人 |
佐々木 民惠 | 洋食 | 在モロッコ大使館 | 令和2年1月~令和4年1月 令和4年2月~(在職中) |
在モロッコ大使公邸料理人 |
ジャーラ ジェイド | 和食 | 在ザンビア大使館 在オーストリア大使館 |
令和3年1月~令和4年12月 令和4年12月~(在職中) |
在オーストリア大使公邸料理人 |
鎮目 和雄 | 洋食 | 在ロシア大使館 | 平成27年12月~令和5年12月 | 株式会社帝国ホテル |
篠﨑 泰之 ※ | 和食 | 在ウラジオストク総領事館 在ジンバブエ大使館 在モザンビーク大使館 在コンゴ民主共和国大使館 |
平成21年5月~平成23年5月 平成23年10月~平成26年5月 平成26年6月~平成29年3月 平成29年4月~令和2年2月 令和2年11月~令和5年12月 |
|
高野 直幸 | 和食 | 在ジッダ総領事館 | 令和3年4月~令和5年10月 | ホテルニッコーグアム |
中村 篤史 | 洋食 | 在モザンビーク大使館 | 令和2年2月~令和6年1月 | |
堀池 正治 | 和食 | 在ロシア大使館 | 平成27年12月~令和5年12月 | |
渡邉 聡志 | 和食 | 在中華人民共和国大使館 | 令和2年12月~令和5年12月 | 株式会社ワイズテーブルコーポレーション XEX atago 「An」 |
※長期間にわたり公邸料理人を務めたことに伴う再表彰者
クックビズ総研編集部より
表彰式直後に”喜びの声”を届けてくださった4名は、現在もご自身の夢に向かってご多忙な日々を送っておられます。さまざまな経験を積みながら食の外交官として活躍されている姿は、同じ日本人として誇りに思います。
優秀公邸料理長の称号は、外交活動への貢献を称えるとともに、優秀な公邸料理人の確保や育成といった大きな役割を担うこととなり、料理人としてのさらなる活躍が期待されています。
クックビズ総研編集部では、受賞された17名の料理人のますますの飛躍を願うとともに、飲食業界の明るい未来を応援していきます!
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