
店長になって、マネジメント業務がメインになってくると悩むのが人材育成。
「思ったように動いてくれないな」
「何度も伝えているのになぁ」
そう思ったことはありませんか。
今回、外食企業・エー・ピーホールディングスが運営する「炭火焼鳥 塚田農場」横浜南幸店・店長の山田 拓哉さんにインタビュー。店長としてのやりがいや、働く環境などをお聞きする中で、アルバイトの指導について独自のポイントを教えていただきました。
エー・ピーホールディングスといえば、人気の居酒屋「塚田農場」を筆頭に、国内だけでなく海外にも進出する大手外食企業です。食品の生産(一次産業)から流通(二次産業)、販売(三次産業)に至るまでの全てを一貫して手がける独自の「生販直結モデル」を展開。飲食店が産地と深く繋がり、食べる人(顧客)とつなぐなど、地域を活性化する好循環を生み出してきました。
今回は、アルバイトの人材育成についてレポート!ぜひ参考にしてみてくださいね。
アルバイトにも、経営・運営の根本を説明。「腑に落ちる」ことで行動が変わる
──飲食業界をメインにご勤務されてきたそうですね
18歳からずっと飲食業界です。個人経営の居酒屋でアルバイトからスタートし、そのまま社員に。一時離れたこともありますが、やっぱり飲食業界に…と思い、今の会社に入社しました。
──店長として店舗運営するために、どのような工夫を心がけていますか
スタッフの「意識改革」というのを心がけています。特に居酒屋で大きな力となってくれるのがアルバイトです。デキル社員や店長が力強くリードしたり、ワンマンプレイヤーにならなくても、アルバイトが意識的に行動できるようになれば、お店として無理なくまわるようになるので、そこは丁寧に行っています。
──具体的にはどのように指導しているのですか
アルバイトさんに「何をしてほしいのか」の業務説明をするだけではなく、「なぜそれをするのか」を仕組みから伝えます。
例えば、給料(時給)をアップしてあげたいけれど、そのためには売り上げを上げる必要がありますよね。そのためには少ない人数でどう運営するか、そのうえで無理なく運営を図るための適正な人数は? 反対に多すぎると、どんな弊害が起きるかなど、1つの店を安定して運営する仕組みから説明します。
──忙しいと、つい指示だけになりがちです
ただ単に業務をしてもらってもいいのですが、収入を得るだけでなく、「働く楽しみ」のようなものを感じてほしいと思っています。学生のアルバイトさんがここを巣立って社会人になったときに、店や会社の仕組みを少しでも知っておけば、そこへの理解や成長も早いと思いますし。
──社会人になった時に「あの店でバイトしていて良かった」と思うでしょうね。先まで想定して、指導なさっているのですね
社会に出てからの意見の通しやすさも変わってくるのではないでしょうか。
「今の業務指示は、こういう仕組みだから、この方法なんですよね」など、仕事の芯をつかんで上司に確認できれば、提案しやすい環境を自ら作っていけると思います。だから、私としてはアルバイトとの会話では、自分で考えてもらいやすいように、指示ではなく質問形式が多いです。
アルバイトとの何気ない会話を大事にしたい
──スタッフも人それぞれです。個性や強みをどう引き出していますか
会話は結構しますね。何がしたいのか、率直に聞いてしまいます。
例えば「稼ぎたいのか」とか。もしそうなら「この業務をできるようにしようか。そうすれば時給も上がるよ」と伝えます。どんなふうに働きたいかは人それぞれなので、ヒアリングは大事にしています。マイペースに働きたいという方もいますしね。
──苦労している点はなんでしょうか
シフト作成が苦手ですね。今2店舗を管理していますが「稼ぎたい」という希望を出しているアルバイトさんが多く、でも全員をシフトに入れるわけにもいかずで。学生が多いので、希望スケジュールも同じようになってきてしまいます。そんな時は他店にヘルプとして入ってもらうなど調整を図ることもあります。
う~ん、シフト作成は苦手です。そこは難しいですね。
難しいといえば、スタッフは18歳~22歳までの学生アルバイトが多く、僕は36歳なので、その年齢のギャップ間は埋められないです。
こちらの意向をどれだけくみ取ってもらえるかは、課題としてあります。
──年齢間ギャップの埋め方に苦労している人は多そうです
そこは埋まらないものなので(笑)。
だからこそ先ほどお話したように、店舗の運営の仕組み、人件費などの経費も含めて、かみ砕いて説明しながら、ぶっちゃけたトークをします。
私の思いや考えを伝えているのではなく、実際の状況を説明しているので、そこに年齢的なギャップは起きないですし、だったらどう行動するのがいいのか自分で考えてくれるようにもなります。
指導する側は、ついついニュアンスや自分の感覚、センスで話してしまいがちなのですが、そこは世代が違えば伝わらなかったりもしますから。面倒でも、仕組み・事実・状況を話すことで「腑に落ちやすい」というのはあると思います。
──一番のやりがいは?
アルバイトスタッフが「メンバー同士で、問題や課題を話し合って答えを導きました」と報告が来たときでしょうか。「その対応、いいじゃん!」ってなったら、「良かったなぁ。成長したなぁ」と。ピンポイントはそこですね。
居酒屋なので、基本的な業務そのものは決まっています。美味しいものを提供して、お客様に喜んでいただく。その内容をどう濃くするか、充実したものにしていくかを自分たちで考えて行動してくれるとうれしいです。
目標は、自分の店を持つこと。今すぐにでもしたいぐらい!
──株式会社エー・ピーホールディングスで働く魅力は?
自分の意見を発信しやすいです。
例えば
「お昼の営業からやりたい」「食堂をやりたい」
と提案したとします。そうすると、
「今はこういった状況で、マーケットとして、その地区は需要がありそうだ」
「だったらこういった顧客層に提供していきたい」
「じゃあ周囲の他店と比較して、今の業態の商材でできることは何か」
「それが無理だったら、こういうメニューに変更すべきだろうか」
など、そういう話し合いのしやすさがあります。
もちろん、今は実行するには厳しい状況だけれど…という時もあるのですが、誰でも意見を発信しやすい社風が魅力です。
──自分の描いたものが形になっていくのは面白いでしょうね
そうですね。あとキャリア形成も。私は入社3ヶ月で副店長になりました。自分のやりたいことや目標があれば声に出しやすく、実績が伴えば、キャリアアップも叶うので、それなりに働きがいがめちゃくちゃ大きく感じられると思います。
私は早く自分の店を持ちたいと考えています。ここを卒業してもしなくても、独立
だったりFCだったりで、自分のお店を自分で全部管理してやりたいというのが第1の目標というか、今すぐにでもしたいぐらいです。
──最後にこれから入社する若手に向けてメッセージをお願いします
誰にも通じることなんですが、自分次第で未来は変わります。この会社は特に、やる気次第で給料も上がるし、自分のやってみたいことも発信しやすい会社です。
あと、あるお笑い芸人さんが「優れるな、異なれ」って言っていたのが印象に残っていて、優れていても勿論いいんですけど、頭1つ抜けたい場合は「異なったもの」があった方がいいそうですよ。私は「優れて、異なれ」を目指したいと思います(笑)。
編集後記
終始、明るい話しぶりに引き込まれました。
「世代間ギャップは埋まらないもの」と言い切る山田さん。だからこそニュアンスや感覚、センスで話さずに、面倒でも、仕組み・事実・状況を話して「腑に落ちてもらうこと」=納得感を大事にしているという考え方が新鮮でした。
学生アルバイトの方々が、将来、社会人になった時のことまで考えて、指導されているとのことで、きっとその心遣いが「やる気」をさらに引き出すのだと感じた取材でした。アルバイトの指導の参考にしてみてはいかがでしょうか。