『ワクワクで満たされる世界を』というビジョンを持つANAグループのなかで、インハウスケータリング会社として『食』を通じてワクワクを体現していく「株式会社ANAケータリングサービス」(通称:ANAC)。ANA航空機のファーストクラス・ビジネスクラスで提供する機内食の製造や、羽田・成田の各空港内にあるラウンジの運営などをおこなっている企業です。
今回、同社の羽田ラウンジ課で活躍されている片桐 翔さんと、和食調理課で機内食を手がけている押領司 恵実さんに、ANACという会社のことや空港内での仕事についてお話を伺いしました。
インタビュー動画
「ANA」グループの労務環境にも福利厚生にも驚きがたくさん/片桐 翔さん
▼プロフィール
片桐 翔さん(大阪府出身・28歳)
大阪にある有名リストランテでサービスを1年、キッチンを4年経験。2019年にANACに中途入社し、現在は羽田ラウンジ課で、羽田空港内の北・南両ウイングのANAラウンジで調理業務をおこなっている。
──ANACには、どういうきっかけで入社されましたか?
前の職場は「5年経験したら辞めよう」と始めから考えていて、4年目に入ったころから、漠然と「自分のキャリアを活かせる大きな会社に入社してみたい」という憧れを抱くようになり、転職活動を開始しました。
いくつか探した結果、キャリアが活かせつつ、オープンキッチンでお客様の前に立つこと。料理人として最前線で活躍ができるということもあり、自分に合っていると感じたためANACへの入社を決めました。
前職ではクローズキッチンでの調理でしたので、お客様からの言葉はフロアスタッフを通して伺っていました。それでも嬉しかったんですが、やはり直接「美味しい」「ありがとう」と言っていただきたいという想いがありました。
──現在のお仕事の内容について教えてください
料飲部 羽田ラウンジ課に所属し、羽田空港内のANAラウンジで、調理・発注をメインに業務をしています。業務は日によってアサインが異なり、調理業務の日、発注業務の日というように完全に分かれているのが特徴です。
たとえば発注業務の場合は、食材の在庫がどれくらいあるのかを確認し、それらが何日分にあたるかといった計算をします。空港内という場所柄もあり、発注から納品まで1週間~10日ほどかかることもあるんです。逆算して発注をすることになりますので、これは結構頭を使いますね。
手がける料理の種類は、フレンチ・イタリアン・和食・お寿司の本格料理。ラーメン・そば・うどんといった麺類。グラタンやパスタ、アペタイザーなど小料理もあります。厨房では手料理が基本となっています。
本来は『T2I(T2インター)』というラウンジのオープンキッチン要員で入社したのですが、2020年からコロナ禍に入ったためクローズキッチンでの業務になりました。しかし、ようやく今年の7月からオープンすることが決まったので、お客様の前で料理ができるようになります!
お客様の目の前でオムレツをまいたり、天ぷらを揚げたり、お寿司を握ったり、鉄板でハンバーグを焼いたり。今からとても楽しみです。
──前職が活かせているところ、また新しく覚えたことがあれば教えてください
前職ではイタリアンを経験しましたが、今はフレンチのソースを作ったり、魚を使った和食や、お寿司を握ったりなど、新しいことも手がけています。
初めての分野もありますが、さまざまなジャンルのプロフェッショナルにマンツーマンで教えてもらえる環境ですので、幅広いスキルを磨くことができています。
いままで携わったことがなかった和食や洋食はもちろん、お客様のバースデーを祝うデザートプレートを書くこともできるようになりました。
──自分のチカラが活かせているなと感じられるのはどんな時ですか?
空港内ですので制約が厳しく、包丁は小さいものしか使えないですし、火も使えないためIHで調理しています。食材も工場でカットされたものが運ばれてきますので、難しい技術や調理法は使いません。そういった環境でも、培ってきた経験は十分に活きていると思います。
料飲企画課という部署から、プロレベルの新メニューのレシピが送られてくるので、自分の経験値から読み解き、内容を把握するところから始めます。そして上長と相談しながら、誰が見ても作れるように内容をまとめてシンプルに書き換えていくんです。それをもとにパートスタッフや新人さんが作れるようになって、スムーズに運用されたときに経験が活かされているなと思えます。
入社してから、“料理の経験がない人に調理を教える”ということを心がけるようになり、同時に難しさも実感しています。
でも、一人で背負うということはなく、私よりキャリアも人生経験も長い先輩から助言をいただいたり、相談にのってもらいながら乗り越えています。
──ANACで働く人たちはどんな人が多く、どんな社風だと感じますか?
上長との距離感も近いので、風通しが良い社風です。入社前は、料理人の世界なのでやはり上下関係がかなり厳しいのかなと思っていたのですが、みなさんとてもフランクですね。年齢層が幅広く、私が先輩方の娘さんや息子さんたちと同年代ということもあってか優しく接してくださいます。親しみやすく、全体的に明るい空気感があります。
一人ひとりでみますと、職人気質というか『食』に対して熱い想いを持った人が多いと感じています。
忙しい時には凛とした空気を感じますし、閑散時間は楽しい雰囲気を感じる時もあって、1日の中でしっかりとメリハリをつけてますね。日々切磋琢磨しながら業務に取り組んでいるということを体感しています。
また、何か気になることがあっても、1人で抱え込むことはありません。上長や管理者に面談を通じて話を聞いてもらえる機会はありますし、こちらから時間をとってもらうこともできますので、良い風土が根付いてると感じています。
──「ANA」というネームバリューやブランド力を感じることはありますか?
私は正直、ネームバリューではなく、お客様の前で料理ができるというところに魅力を感じて入社しましたが、国内外の人たちが多く行きかう空港という場所が職場なわけですから、搭乗前の方がたくさんいらっしゃるんですね。そのラウンジで調理をすることで、立ち振る舞いを意識するよう心がけていますし、国内外のさまざまな方に、私が作った料理を召し上がっていただけるということに誇りをもって働くことができています。
──ANACの良いところはどんなところですか?
残業代が支給されるとか、休みがきちんと取得できるとか、1日8時間労働だとか。当たり前なのかもしれませんが、その当たり前が、当たり前にあることが凄いなと思っています。
夏季休暇や冬季休暇、もちろん有給休暇もしっかり取得できています。
日曜日や祝日、夜間の勤務には手当が付きますし、福利厚生や待遇面も充実しています。
たとえば、自己啓発を目的とした学習費用やポイントを年間4万円分も会社が負担してくれます。学習を通じて「生産マイスター」や「調理師免許」、「簿記」や「英会話」といった勉強ができるんです。自分を磨いたり、成長させる環境がしっかり整っているのも良いですね。
私は、『調理師免許=料理ができる人』ではないと思っていたので、調理師免許を取得していませんでしたが、入社してから「調理師免許」を取得し、今は「TOEIC(R)テスト」の勉強もしています。
さらにANAグループで利用できる優待搭乗制度があり、優待運賃で飛行機に乗れるんです。年間での利用回数は決まっていますが、就業者本人だけでなく、配偶者・子ども・本人の両親・配偶者の両親まで利用できるんですよ!
旅行に行くことが好きですので、最近であれば長崎空港に行ってみたり、日帰りで北海道にごはんを食べに行ったり。沖縄にも行きました。休みの日もしっかりと飛行機旅行を満喫しています。
──仕事のやりがいや面白さはどんな時に感じられますか?
空港の制限区域内ですので、調理器具や食材の保存期間、解凍についてなど、細かい制約やルールが多く厳しい環境です。そのなかで、決まったメニューをいかに美味しく提供できるかと最善策を考え、組み上げていく過程は楽しさのひとつでもあります。
これから空港では、『サテライトエール』『T2インター』といった新しいラウンジがオープンしていきます。私はオープニングスタッフとして配属が決まっておりますので、フラットな状態から組み上げていくということが今から楽しみですね。
ゆくゆくは、メニューを考える部署にもチャレンジしてみたいと思っています。
──まとめ
片桐さんは、とにかく大きな会社で『オープンキッチンがあり、お客様の前で調理をしたい』という想いのもと転職活動をされていました。ライブキッチンがあることに惹かれて入社を決めたとのことで、「ANA」グループであることに意識を置かれていなかったようです。
入社直後にコロナ禍となり、ライブキッチンができない状況になりながらも勤務を続け、「ANA」グループの安定感を実感されたそうです。1日の労働時間、残業手当、休日など、そういった当たり前のことを当たり前のようにしっかりできているというところで、働きやすさを実感されたのですね。
職場の雰囲気もよく、特殊な環境での調理であっても楽しむこと。上長や周りのスタッフに支えられながら成長していく片桐さんの今後に注目です。
私の仕事を「すごいな」と言っていただけることがとても嬉しい/押領司 恵実さん
▼プロフィール
押領司 恵実さん(千葉県出身・38歳)
栄養士専門学校を卒業し、新卒で入社。就職活動をしているときに、周りの人から「株式会社ANAケータリングサービス」を紹介され就職。専門学校の仲間が『学校』や『保育所』に就職を決めるなか、自分だけが調理中心であること、機内食という特殊な仕事をすることに不安を感じるも入社を決意し、現在勤続18年目。
──現在のお仕事内容について教えてください
入社してから変わらず和食調理部に所属し、主に八寸作業をしています。機内食の前菜など、お客様がそのまま口にするような食材をカットしたり、お魚の下処理から始まって、お刺身にするため捌いたりしています。
栄養士学校で多少は調理技術も学びましたが、やっぱり現場に入ってみると全部一からの勉強でした。包丁の使い方や味の付け方、衛生面もそうですし、限られた時間の中でどう協力していくか、自分がどう仕事に向き合えるかなど、人として成長しているなと感じています。
──ANACならではで、新しく覚えたことがあれば教えてください
覚えることはたくさんありました。たとえば飛行機の便名や出発時刻を覚えないといけません。自分がその日どうやって動くかが決まってくるためです。そういった大変さもありました。
また、機内食の内容はファーストクラス、ビジネスクラス、さらに路線によっても違いますので、各メニューを覚えて、食材の必要量を感覚で覚えることも大切です。勉強して覚えこませるというよりも、日々の業務の中で、周りの会話を聞いたり、作業の中で自然と培っていったという感じですね。
──自分のチカラが活かせているなと感じられるのはどんな時ですか?
繁忙時でみんながバタバタしている時でも、追加の業務が入ったり、優先すべき作業が新たにでてくることもあるんですね。そういった時にも、周りの動きを確認しながら、適格な指示が出せているのは自分の強みだと思っています。
──仕事を通じてのやりがいや面白さはどんな時に感じられますか?
季節によって扱う食材も違ってきますので、いろんなものに触れ、こういうものがあるんだと知ることですね。
業務面では技術向上です。包丁捌きに関しては日々上達していると実感できるんです。上司や先輩が見てくれる時も、「うまくなったね」とか、「これ誰がやったの、きれいだね」と言葉をかけていただくと嬉しいです。
技術も知識も、どんどん身についているなと自分で実感できることが何よりも面白いです!
──ANACで働く人たちはどんな人が多く、どんな社風だと感じますか?
みんな元気いっぱいです!他部署の方にも声をかけたり、話しかけられたりが結構ありますね。部署の垣根がなく普通に会話ができる、そんな気軽な感じです。
いろんな方と話をして感じるのは、会社のことをよく考えているなということです。20代のスタッフが休憩中も業務状況の話をしていたり、仕事に対して熱いメンバーが多いです。若いのにすごいな、考えながら責任をもってやっているんだなと感じています。
コロナ禍で不安なときも、“会社を存続させていくために何ができるか”という話をしていましたので、会社のことを大切に想っている方が多いのではないでしょうか。
部署関係なく、コミュニケーションを取る社風ですので、私も「お疲れさまです」と積極的に声をかけています。些細なことかも知れませんが、大事なことだなと思ってやっています。
──「ANA」というネームバリューやブランド力を感じることはありますか?
プライベートで「どんな仕事をしている?」という話題になったとき、『ANAの機内食でファーストクラスやビジネスクラスの食事をつくっているよ』と話すと、「食べてみたいな」とか「すごいね!」と言われることがあるんです。そんな時はちょっと嬉しくなりますね。
また、福利厚生や働きやすさも充実しています。福利厚生のひとつとしてANAの飛行機に優待価格で搭乗できるので、ちょくちょく旅行に出かけています。季節休暇を利用できますし、有給休暇も取得しやすいんです。自分の時間を自分でつくって、いろんなところに行っています。
たとえば福岡までラーメンを食べにいってそのまま帰ってきたりとか、2日休みを取って、大阪のテーマパークに行ったりとか。長い場合だと10日間休んで、半分旅行して半分ダラダラする…みたいなことも楽しんでいます。
職場では、当日体調不良などで欠勤がでた場合もフォローできる体制が整っています。お子さんの事情で急なお休みになったときも、周りでカバーしあう体制をとっていますので、みんなの協力があってこその働きやすさが自慢です。
──まとめ
押領司さんは栄養士の学校を卒業後、機内食調理のお仕事に就かれました。和食調理部に配属になり、職人ばかりの中で働けるか不安だな…と思われたこともあったようですが、仕事の面白さも見いだしながら、同期とコミュニケーションを取って話をするなど、少しずつ馴染んでいかれたようです。
他部署とも気軽に話ができる風土や、いろいろな想いに触れることが良いのかもしれません。
公休や優待搭乗制度を利用してお休みを充実させたていたり、「ANA」グループのメリットを十分に活用して、安定した働き方を実現されているようです。
今後は会社の自己啓発制度を使って、昇級・昇進試験に向けて勉強もしていきたいとのことでした。
クックビズ総研
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